もはや1つの作品として昇華? 進化する“再現VTR”にみるバラエティ番組の多様化

もはや1つの作品として昇華? 進化する“再現VTR”にみるバラエティ番組の多様化

 かつての再現VTRといえば、過去に起こったエピソードを視聴者にわかりやすくシンプルに表現するためのドラマとして、番組の本筋を支えるいわば“刺身のつま”的な存在だった。それが最近のバラエティ番組では、有名タレントが出演して熱演をみせるなど、再現だけにとどまらない見ごたえのある内容のものが増えている。中でもリアルな作り込みが注目を集めている『THE突破ファイル』(日本テレビ系)は、豪華な出演者だけでなく、カーチェイスや爆破シーンといった本格的な演出も目玉。さらにクイズを織り交ぜ、「再現ドラマ」を1つのコンテンツとして昇華させている。バラエティ番組の演出が多様化していくなか、お茶の間を飽きさせない工夫について、同番組のプロデューサーに話を聞いた。



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■“再現”では終わらせない、ドラマチームが手がける本格的演出



 実際に起きた驚きの突破劇を再現ドラマでみせる新感覚クイズバラエティ番組『THE突破ファイル』。大きな特徴は、その「再現ドラマ」のクオリティの高さにある。EXITやハナコ、ぺこぱなどのお笑い第七世代の芸人や、日向坂46をはじめとする人気アイドルたちが、スタジオだけでなくクイズの出題となる再現ドラマにも登場。コメディからシリアスまで、普段なかなか見ることのできない熱演も毎回の見どころだ。



「長尺の再現ドラマの制作は、各局の連続ドラマも手掛けるドラマチームにお願いしています。バラエティ班が撮影した映像に比べて、カット割りも緊迫感の出し方も全然違いますからね。のめり込ませる演出なら視聴者も飽きずに、かつ他のバラエティ番組と差別化できるのでは…という想定です」(番組統括プロデューサーの新井秀和さん、以下同)



 定番人気となった「突破交番」や「出動!アメリカンポリス」シリーズなどは、爆破やカーチェイスといったダイナミックな演出も見ごたえたっぷりだ。出演者の迫真の演技とともに、バラエティとは思えない感動を巻き起こすことも多い。



「再現ドラマではありますが、もはや“再現”という意識はなくてドラマを撮影している雰囲気です。一般的なドラマに比べると格段に予算が少ないなかで、いかに負けないクオリティを作れるか。裏で放送されている他局のドラマより視聴率が高かったときは、スタッフみんな喜びます(笑)」



 番組スタートから約2年が経ち、出演者も年々豪華さを増している。最近だと12月3日放送回で、乃木坂46の梅澤美波と女優の武田玲奈がCA役、日テレの岩田絵里奈アナウンサーが看護師役で登場して話題に。1月7日放送予定の回では、浜辺美波が「突破交番」で1日署長に扮し、福原遥が「突破レスキュー隊」で大火災から町を救う重要な役どころを演じる。



「映画やドラマの告知でスタジオに出てくださった方には、チャンスとばかりにお声がけしています。もちろん空気を読みながら(笑)。みなさん“本業”でお忙しいのでなかなか実現はしませんが、この番組はカメラが回っていないところでも、MCの内村(光良)さんやレギュラー解答者のサンドウィッチマンさんがとてもいい空気を作ってくれていて…、ポロっと『私、出てもいいですよ』と言わせてしまうみたいな(笑)。そのおかげでご快諾いただいたこともありました」



■マニアック要素もみせつつ「ながら観はさせない」、没入感の仕掛け



 自衛隊や海上保安庁などの協力で、実際の施設を使った撮影を行うこともあり、美術や小道具にも徹底的にこだわっている。再現ドラマの緊迫感そのものを楽しむ視聴者も増えたおかげか、番組には次第にマニアックなクレームも入るようになったという。



「たとえばサイレンサーの銃声が違うとか、消防団の車の横に書かれた文字が違うとか、階級章が違うとか、本当にみなさんよく観てくださっています。それでスタッフ側も勉強して、クオリティを上げるためにディティールをどんどん追求していくんです。Twitterの指摘で気づくこともあります。もちろん、登場キャラはチャラい警官などフィクション要素がありますが、視聴者のみなさんがリアルさを求める部分があれば、それに応えるために、しっかりと詰めていかなければなりません」



 このほか、没入感のある映像で“ながら観”をさせないことも意識しているという。再現ドラマの途中で出題されるクイズには、映像の所々にヒントがちりばめられており、集中して映像を観ていれば気づくことができるかもしれないという仕掛けだ。



「再現ドラマのクオリティや、注目の人をキャスティングするところにこだわるのも、視聴者が作業の手を止めて、思わずテレビ画面に没入してしまうようにするためです。もしワイプだけを観ている人がいても、それだけで楽しめるように、イケメンゲストや人気アイドルがリアクションしている瞬間は絶対に逃しません」



■テレビをメインにした空間づくりで「お茶の間を取り戻す」



 視聴者の趣味嗜好は多様化し、バラエティ番組も世代によってさまざまに楽しむようになってきた。そんななか同番組が目指しているのは、テレビをメインにした空間を作り、みんなが楽しめることだ。



「一人暮らしのお宅でも通勤電車の中のスマホでも、『テレビをメインで観る空間』であれば、それはある意味でお茶の間だと思っています。この番組は19時という放送時間帯もあって、とくに小・中・高校生、つまりファミリーを意識して制作しています。塾や部活で忙しい子どもたちも、『THE突破ファイル』の日は急いで帰ろう、みたいな気持ちになってくれるのが理想です」



 公式Instagramでは告知だけでなく、番組出演者が登場するオリジナルの“隠し球動画”も惜しみなく配信。番組に登場するキャラにまつわるこぼれ話や、クイズのヒントを配信することもあり、充実した内容で若い世代からの関心を集める工夫を絶やさない。



「放送日を思い出していただけるように、SNS担当スタッフがハッシュタグをこれでもかとばかりに付けています(笑)。視聴者の目線の先にあるものがテレビだけではなくなった今、僕たちテレビ制作者は『リアルタイムで番組を観てもらう時間』をどれだけ持っていただけるかを、心底から意識する必要があるんです」



 番組のコンセプトは、「最後まで諦めなかった人にスポットを当て、絶体絶命のピンチを突破した知恵と勇気にエールを送る」。困難や窮地に陥っても諦めずに乗り越えた数々のエピソードは、世代を問わず多くの視聴者を感動させるだろう。ハラハラドキドキの映像を観た後のスタジオは、どこかほっこりした雰囲気が漂っているところも安心できる。



 新型コロナウイルスの感染拡大でロケができなくなった6月には、EXIT・兼近大樹、ぺこぱ・松陰寺太勇、ハナコ・岡部大をアニメ化して「突破警察」の再現ドラマを制作したことも。その放送回は爆笑とともに神回と反響を呼び、さらに2次元キャラをグッズ化したところ瞬く間に売り切れるという現象まで起こした。ピンチを知恵と工夫でまさに突破してプラスに転じたのだ。



 個々がスマホを片手にテレビを“ながら見”するスタイルが定着した今の時代に、全世代に向けたアプローチで「お茶の間を取り戻す」という熱意を絶やさない同番組。間口は広く、観るとディープに楽しめる内容が、今後どんなかたちでお茶の間を盛り上げていくのか。挑戦はまだまだ続く。
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