“寄せ集め”だけど強力武器を持って戦うザク試作機に馳せた想い「自国のために尽くし、守る人がいる」

“寄せ集め”だけど強力武器を持って戦うザク試作機に馳せた想い「自国のために尽くし、守る人がいる」

 ガンダム本編では描き切れないサイドストーリーをガンプラで“創造”し、SNSで発表するモデラーも多い。dachさん(@dach_afnw)は、『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』で描かれた高機動試作型ザク(通称アイナザク)を制作。ドムやザクのパーツを使い、テスト&データ収集だけのために作られた実験用の機体という想定にも関わらず、武器はより強固なものを持たせて仕上げられている。なぜ“寄せ集め”ザク試作機を作り、強力な武器を持たせたのか?dachさんの想いを聞いた。



【比較画像】塗装ひとつでここまで印象が変わる…アイナザク進化の過程



所属する模型サークルのコンペがきっかけで制作



――ガンプラを本格的に作り始めたのはいつ頃ですか?



【dach】4歳か5歳の時、『機動戦士Vガンダム』を放送していて、かっこいいロボットが戦うところに憧れてガンダムを好きになりました。ガンプラを本格的に始めたのは2018年。ガンダムダブルオースカイとWガンダムゼロ(TV)で初めてのミキシング(手や足などのパーツを他のガンプラから持ってきて作品を作ること)に挑戦して、試行錯誤の末『ガンダムW0 SKY』を完成させました。



――いきなりミキシングだったんですね。完成した作品の出来はいかがでした?



【dach】本当にありがたいことにたくさんのいいねや、リツイートをいただきました。また、ガンプラ投稿サイトGUNSTAさん主催の「ビルドダイバーズコンテスト」で優勝させていただきました。身の余る光栄をたくさんいただき、今の僕があります。



――なるほど。そんなdachさんの近作「MS-06RD-4 ZAKU II-A BAOA Q-」は、アイナザクをモチーフにされていますね。どのようなきっかけで制作しようと思ったのですか?



【dach】私が、所属する模型サークル「からくりラボ」のコンペ『連邦ジオン』がきっかけでした。このコンペは連邦軍、ジオン軍に関係する機体のみで行うというルールで行われました。今までザクも作ったことがなかったので、新しい挑戦として作ってみようと思いました。



――アイナザクは、ガンプラのキットとしてプレミアムバンダイ限定で販売されていますが、それを使用せずに制作されたと伺いました。



【dach】はい。「HG ORGIN ザクII」「HG ORGIN MSD ドム試作実験機」という2つのキットを使用しました。ミキシングだけどミキシングに見せないよう、ドムの特徴的な足も工作して寄せたり、カラーリングもほぼ調合し、特徴的な赤いラインもデカールではなく塗装で再現しました。とにかくアイナザクにどこまで寄せれるかにこだわって制作しました。



連邦軍との壮絶な戦い…大事な局面であれば「使える物は何でも使うだろうと思いました」



――ツイッターで発表された際、「戦争末期、試作機すら実戦に使わなければいけない状況ではなかったのか?と寄せ集めの武器で駆り出されたアイナザクをイメージして」という一文を添えて投稿されていました。『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』で描かれたアイナザクは、試作機としてテスト中に敵と遭遇するわけですが、dachさんはどのような物語を創造されたのでしょうか?



【dach】制作当初のコンセプトは、「ストレートに」「基本工作」で、普通のアイナザクを作ろうと思っていました。でも途中で、「尊敬する先輩モデラーへのリスペクト」「制作に協力してくれた友人の武器を使いたい」を入れたいと思い、さまざまな武器もマウント出来るに方向をシフトしました。当然ですが、アイナザクの公式設定ではマシンガンとヒートホーク以外の武器は持っていない。なので、武器を持つ必然性を考えました。しっくりきて、説得力がありそうな物語、それが作品タイトルにもある「ア・バオア・クー戦」でした。



――ジオン軍の最終防衛地点の宇宙要塞「ア・バオア・クー」での、連邦軍と壮絶な戦いですね。



【dach】はい。アイナザクは試作機。現実世界での試作機は決して一機だけじゃないと思いました。予備で数機確保しているはず。戦争の大事な局面でもある「ア・バオア・クー戦」はジオン軍にとってどうしてもしのがなければいけない戦い。そのためには使える物は何でも使うだろうと思いました。



――性能がどうなのかわからない寄せ集めの試作機すらも強力な武器を持たせて、国を守るために戦闘に出さざるを得なかったのではないかと。まさに、国家総動員ですね。



【dach】そうです。私はどうしても、「ア・バオア・クー戦」を太平洋戦争と重ねて見てしまうところがあります。「使える物は何でも使うだろう」というのは、太平洋戦争末期の旧日本軍の兵力不足による学徒出陣や、鉄の接収、兵器の二次転用などからヒントを得て制作しました。



――深いメッセージが込められているんですね。



【dach】個人的に戦争はどちらも正義であり、善も悪もない。ガンダムはそれをよく再現してくれているアニメだと私は思っています。ガンダムには儚くも美しいシーンがたくさんあります。理由は人それぞれですが、自国のために尽くし、守る人がいる。旧式の、しかも試作機で「ア・バオア・クー」を駆けたこのアイナザクから、そんな背景を想像していただけらたら幸いです。



――制作後の反響はいかがでしたか?



【dach】温かい言葉をたくさんいただき、感謝しています。また、こうしてオリコンさんからもお声がけいただいたこともあり、思い入れのある機体になりました。



――最後になりますが、dachさんにとって「ガンプラ」とは?



【dach】僕にとってガンプラは「楽しい」です。作るのも楽しいし、見るのも楽しい、見せ合うのも楽しい、語るのも楽しい。全てに「楽しい」が詰まったツールです。これからも、自分がかっこいいって思う作品を作っていきたいと思います。
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