憶測を呼ぶ「コスプレ著作権ルール化」トラブルなく楽しむには? 美人コスプレ弁護士に聞く

憶測を呼ぶ「コスプレ著作権ルール化」トラブルなく楽しむには? 美人コスプレ弁護士に聞く

 1月に報道され、さまざまな憶測を呼んだ「コスプレ著作権ルール化」に関する発表。大勢のコスプレイヤーから「今後はもう、自由にコスプレ活動ができなくなるのでは?」と心配する声が上がっていた。明確な答えが示されるのはこれからだが、ここで改めて、“コスプレと著作権”について考えてみたい。法律の専門家であり、自身も趣味でコスプレを楽しむ渥美陽子弁護士にインタビューを実施し、トラブルなくコスプレを楽しむ方法を聞いた。



【画像】美人コスプレ弁護士、渥美先生の“ハルヒ”や“けもフレ”コス 胡蝶しのぶも!



■コスプレは著作権を侵害する?「ポイントは、“二次的著作物”にあたるかどうか」



 そもそも「著作権法」とは、“著作物に関する権利を保護する法律”である。漫画やアニメのイラストといった著作物を創作した著作者は、それらに対してさまざまな権利を有することになり、そのなかに“二次的著作物を勝手に創られない権利”がある。例えば、小説を映画化する際などは、著作者である原作小説の作者に許諾を得なければならない。 コスプレはこの“二次的著作物”に当たるのでは? というのが今回の報道に関する論点だ。



 「コスプレは“二次的著作物”に該当せず、著作権を侵害しないことが多いと考えます」(渥美弁護士)。



 著作権法が保護する『著作権』のうち、“他人が勝手に二次的著作物を生み出すのをやめさせる権利”や、逆に“著作物に新たな創作性を加えて、二次的著作物として生み出すことができる権利”を『翻案権(ほんあんけん)』という。 “二次元のアニメキャラを三次元で表現する”というコスプレ行為の適法性は、この『翻案権』の観点から考える必要があると渥美弁護士は言う。



 「新たな創作性を加えられた著作物が、もとの著作物の“表現上の本質的な特徴”の同一性を維持していて、なおかつそれを見た人が、もとの著作物の“表現上の本質的な特徴”を直接感得できるような場合、翻案権の侵害となります」(渥美弁護士)



 渥美弁護士は、自身でも挑戦した『涼宮ハルヒの憂鬱』のコスプレを例に出しつつ、「私は涼宮ハルヒのコスプレをしたことがありますが、それがアニメやイラストで描かれるハルヒの“表現上の本質的な特徴”を備えているとは言えないと思います。服装がいっしょだとしても、ハルヒをハルヒたらしめているのは、何といっても彼女の顔です。アニメやイラストで表現される、少しツリ目気味で顔の3分の1ほどを占める大きな目や、極端に小さな鼻を、生身の人間が再現することは不可能です」。



 最も重要な“キャラクターの顔”を、“表現上の本質的な特徴”の同一性を維持しながら生身の人間が表現することは不可能であり、コスプレ姿を見た人も、コスプレから“表現上の本質的な特徴”を直接感得するのは困難だという。



 さらに、コスプレによってキャラクターの表現が想起されることになったとしても、コスプレと具体的なキャラクターの表現が、“見る側の知識”や“概念としてのキャラクター”を間に挟んで間接的に結び付けられているにすぎないというのが渥美弁護士の解釈だ。



■一方、活動によっては『不正競争』にあたるおそれも……



 では、コスプレをしたうえでの商業活動にはどのような問題点が潜んでいるのか?



 「“広く知られているキャラクターに扮して商業活動を行うこと”は、『不正競争』として、『不正競争防止法』に違反することがあります。近時の例としては、カートのレンタル業者に関する『マリカー事件』が有名です。この事件では、業者が、公道でのカートツアーを先導するガイド従業員に任天堂のゲームに登場する「マリオ」や「クッパ」を想起させるコスチュームを着せていたことの適法性が争点の一つとされました。知財高裁は、従業員にコスチュームを着用させてカートツアーのガイドをさせることは、任天堂の著名な商品等表示である「マリオ」などのイラストに類似するものを、自己の商品等表示として使用する不正競争に当たると判断しました」(渥美弁護士)。



 また、個人であっても、自己の創作物に無許可で作品の商品等表示をすると、不正競争防止法違反になる……とのこと。「例えば、『鬼滅の刃』のキャラクターのコスプレをして、写真集やコスプレROMを制作し、作品名もそのまま使う形で販売したりすると、不正競争として、差止めや損害賠償を求められたり、罰則の対象になることがあります」(渥美弁護士)。



 では、作品名を出さなければ、コスプレをして“販売”を行ってもセーフということだろうか?



 「具体的な名称は伏せていても、コスプレと作品・キャラクターとの共通性の程度によっては、「類似」であると認定され、「不正競争」に当たるとされることは十分あり得ます。著名な作品やキャラクターの顧客吸引力を利用して商売をしたり、そのことによって作品やキャラクターのイメージを毀損する行為には、不正競争防止法による差止めや、損害賠償の請求が現実に行われることもあり得ると思います」(渥美弁護士)



■企業が活動を制限することは考えにくい 「コスプレイヤーは作品にとって大切なファン」



 ここまででコスプレは『著作権』の侵害には当たりづらいが、場合によっては『不正競争』にあたる可能性があることが分かった。また、よく話題に上がる“『私的使用』ならOK”という認識についても聞いてみた。



 「私的使用というのは、著作物について、著作者に無断で複製や翻案を行うことができる場合のうちのひとつです。コスプレであっても“家庭の範囲内”という範疇を超えてしまうと、私的使用でなくなる可能性が高いです。営利目的でなくても、不特定多数の目に触れるようなSNSでの画像の公開などもそうです。もっとも、私は先に述べたとおり、コスプレはそもそも二次的著作物に当たらない場合が多いと考えていますので、コスプレが二次的著作物であることを前提として、私的使用か否かで当否を論じるのは、ポイントがずれていると考えています」(渥美弁護士)



 実際のところ、ほとんどの場合はそうした活動が制限されることはない。著作権を有する“著作者”が直接訴えを起こさない限りは問題にならないからだ。



 「作品やキャラクターはファンによって支えられていますし、コスプレをする人の大半も、それらの作品の熱心なファンである可能性が非常に高いですよね。著作者側も、自身の作品を盛り上げてくれる熱心なファンが、節度を守って行っている楽しみを奪ってしまうのは良くないということは分かっていますし、相乗効果となって作品を盛り上げることも大いにありますからね」(渥美弁護士)。



 一連の話を聞くかぎり、「どのような活動までなら著作権法の侵害に当たらないか?」というガイドラインを示すことが、今回の「コスプレ著作権ルール化」の目指すところだと思われる。作品やキャラクターのファンとしてコスプレを楽しむ分には、これからも問題なく、活動を続けて行くことができそう……というのが渥美弁護士の見解だ。最後に、多くの著作物を有する企業側は「コスプレ著作権ルール化」に対してどのような動きを見せるのかの予想を聞かせてもらった。



 「自社の作品をより盛り上げるためにコスプレは重要な存在……と考えている企業は、もし政府が厳しめのガイドラインを発表したとしても、“うちの作品やキャラクターはこの範囲なら自由にコスプレをしてもいいですよ”といった独自のルールを打ち出していくのではないでしょうか。この度の報道はあくまでも、『皆が安心してコスプレを行うことができる範囲はどこまでなのかを、もう少し明確にしていきましょう』といったものに過ぎないので、皆さんが心配されているほど、厳しい規制が入ることはないと思います。私自身の趣味のひとつでもありますし、今後も節度を守って、楽しくコスプレ活動を続けていきたいですね」(渥美弁護士)。



取材・文=ソムタム田井
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