『きかんしゃトーマス』、交渉に20年かかった“日本キャラ”誕生秘話

『きかんしゃトーマス』、交渉に20年かかった“日本キャラ”誕生秘話

 個性豊かなキャラクターたちが登場する『きかんしゃトーマス』シリーズ。日本出身のキャラクターといえば、2010年の映画に登場した蒸気機関車「ヒロ」が挙げられる。本国主導の作品において、日本でのマーケティングを担当するソニー・クリエイティブプロダクツが「日本出身キャラを出してほしい」という想いで交渉を続けて20年。ようやく実現した人気キャラクターだ。そしてこのたび、ヒロに続く日本出身の新キャラクター「超特急のケンジ」が、3月26日公開の最新劇場版『映画 きかんしゃトーマス おいでよ!未来の発明ショー!』に登場。こちらは交渉に10年かかったという。誕生秘話を聞いた。



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■新キャラ「ケンジ」は“世界最速”、奇抜な顔立ちに大反響



『きかんしゃトーマス』シリーズの最新劇場版に新キャラクターとして登場する「ケンジ」は、最先端の電気エンジンを持つ超特急。世界一のスピードを誇る鉄道車両として、物語の舞台であるソドー島で開催される発明ショーのサプライズゲストとして日本から招かれるという設定だ。



 同シリーズの日本出身キャラクターといえば、『きかんしゃトーマス 伝説の英雄』(2010年公開)で初登場した蒸気機関車「ヒロ」がいるが、昭和の日本男児を思わせる質実剛健「ヒロ」に比べると、「ケンジ」は初代の新幹線を彷彿とさせるビジュアルで、若々しくイケメンな今どきの風貌。目鼻立ちがくっきりとした今どきのイケメンだ。映画の公開および新キャラが発表されて以来、Twitterなどではそのビジュアルが「めっちゃ小顔!」「インパクトありすぎ」と大きな話題を呼んでいる。



 同シリーズのキャラクターや物語の設定は米国・マテル社が主導しており、日本におけるマーケティングを担当するソニー・クリエイティブプロダクツの西岡敦史さんも初めてケンジの風貌を見たときには「そこが顔なの!?」と驚いたという。



「ケンジのモデルとなった鉄道車両を擬人化するときに、日本人だったらランプが目、丸い部分が鼻というふうに見立てますよね。真ん中に顔を寄せたことで結果的に“小顔キャラ”になったわけですが、そうした海外のフィルターを通した意外性も注目していただけた理由の1つだったのかなと思います」



■日本オリジナルキャラ・ヒロ、根強い人気は「世界的にみても成功事例」



 世界180ヵ国以上で放送されている人気シリーズ『きかんしゃトーマス』。日本では1990年に放送開始され、翌年1991年よりソニー・クリエイティブプロダクツが日本国内のマスターライセンスを扱っている。



「権利をお預かりして以来、日本の機関車を出してほしいと粘り強く交渉し続け、20年目にして実現したのがヒロでした。その後、それほどテレビシリーズなどに頻繁に登場するわけではないのに、今なおヒロは大人気でグッズも安定して売れています。

 やはり日本出身という設定に加えて、国内でのアトラクションやイベントでもヒロに活躍し続けてもらっていることで、子どもたちが親近感を抱いてくれているのだと思います」



 日本国内の「トーマス市場」は、2013年より右肩上がりで成長しており、ヒロの成功事例は「本国側も高く評価している」とのこと。しかしその後も「次なる日本の鉄道車両を」と交渉を重ねたものの、ケンジの登場までには結果的に10年かかった。



「ヒロの登場以来、各国のライセンシーからも『我が国の鉄道車両も出してほしい』という声が上がっていたようです。グローバルで展開するコンテンツだけに、本国側も各国の反応をうかがっているところもあるのでしょう。

 映画『きかんしゃトーマス Go!Go!地球まるごとアドベンチャー』(2019年公開)は5大陸を巡る物語で、世界各国の鉄道車両11台が活躍しています。ただ残念ながら同作には日本出身キャラは登場しませんでした」



 とは言え、『地球まるごと~』に登場した11台の車両はモブキャラに近かった。本作のケンジのように“ソロ”で活躍したほうが確実にインパクトは大きいはずであり、西岡さんも「ヒロと同じくらいの人気キャラに育てて、第3弾の日本出身キャラの誕生につなげたいですね」と意気込んでいる。



■「ケンジ」命名の由来は、英語の響きのカッコよさ



 ケンジという名前については、英語での発音の響きがカッコよく、「英語圏の子どもが発音しやすい」こともネーミングの決め手の1つだったという。



 昨年、原作の誕生から75周年を迎えた同シリーズ。時代を超えて世界中の子どもたちに愛され続けている理由はどこにあるのか。ソニー・クリエイティブプロダクツでは、2018年より「東京学芸大学こども未来研究所」と共同研究を重ねてきた。



「その結果、子どもたちの多くが特定のキャラクターに自分を投影して見ていることがわかりました。『きかんしゃトーマス』には、さまざまな色、大きさ、形、性格のキャラクターが登場します。

 しかも誰もが一面的ではなく、いばってばかりのキャラがいざというときに頼りになったり、気弱なキャラが意外な頑張りを見せたりする。まさに子どもたちの社会そのものだから、キャラクターに感情移入しやすいんですね。教育に好影響という調査結果も出ています」



 日本ではアニメだけでなくミュージカルやアトラクションイベントなど、トーマスの世界に触れられる機会も多い。しかしコロナ禍において、“体験型イベント”への参加はまだまだ厳しい状況だ。楽しみが限られる中で、子どもたちの心を満たしてくれているのが映像作品。『映画 きかんしゃトーマス おいでよ!未来の発明ショー!』が多くの子どもたちに届くことを願いたい。
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