パンクブーブー佐藤、ガンプラは「自分育てロールプレイングゲーム」 “根気”が必要なのはお笑い賞レースと同じ

パンクブーブー佐藤、ガンプラは「自分育てロールプレイングゲーム」  “根気”が必要なのはお笑い賞レースと同じ

 『M-1グランプリ2009』『THE MANZAI 2011』で優勝するなど、お笑い界で確かな存在感を放っているパンクブーブー。ほぼすべてのネタ作りを担当している佐藤哲夫は、『ガンプラビルダーズワールドカップ』(以下/GBWC)の日本大会で準優勝を果たすなど、確かな実力を持つモデラーとしても知られており、現在“吉本プラモデル部”の部長として、YouTubeやSNSなどで、積極的にプラモデルの普及に努めている。なぜ、そこまでプラモデルに魅せられるのか?そこには、お笑い賞レースで好成績を収める原点ともいえる体験があった。



【写真】「日本2位の実力は確か!」パンクブーブー佐藤『GBWC』準優勝作品『リサイクルズゴック』(写真78枚)



■プラモデルはいくつになってもやればやるほど成長できる



━━佐藤さんがプラモデルをつくるようになった、幼い頃の原体験を教えてください。



【佐藤】4歳くらいからガンプラを作り始めて、子どもの頃はお小遣いをもらったら、全部、その日にプラモデルに使っていました。それまでおもちゃというのは、買って遊んで飽きて終わりだったのが、自分で作って、自分で色を塗ってというのがもう衝撃的で、楽しくて。



━━その後、本格的にのめりこんだきっかけは?



【佐藤】高校卒業して芸人になってからは、電気代とかガス代を払うのがまず先でしたから(笑)、プラモデルから一時的に離れていました。その後、息子が2歳半になって、プラモデルに興味を持ち始めて、一緒に作るようになったんです。

 僕くらいの年齢になると、どんな趣味をやってもだいたい能力が下がっていくんです。例えば、僕はバスケットボールも好きなんですが、今やろうとしたら、筋力がつく前に膝が壊れるのは目に見えている。同じ時期に始めた若い人はグングンうまくなるけど、こっちはすべての能力において落ちてきているから、若い人との差がどんどん開いてしまう。ところが、プラモデルというのは、今の年齢からスタートしても、やればやるほど成長できるんです。歳とともにダメになっていくことばかりのなかで、自分が成長できるのってすごい魅力だし、喜びじゃないですか。それでハマっていったというのが大きいですね。



■ガンプラとお笑い、“賞レース”で勝つために必要なのは「ずっとやり続ける根気」



━━BANDAI SPIRITSが主催する公式ガンプラ世界大会『GBWC』の日本大会で、2014年、2015年、2018年にファイナリスト、2016年に準優勝に輝くなど、まさにトップモデラーと言える実績です。



【佐藤】ありがとうございます。準優勝をいただいた作品『リサイクルズゴック~エコだよ!それは!~』は、今までで最長の9ヵ月かけました。完成した時は、すごいモデラーがいっぱいいる中で戦える作品を作れたと思いました。



━━のぞき穴が付いた大きな箱の中で、ズゴックが海中で朽ちたザクを回収し、最新のモビルスーツの部品として再利用するという設定の作品ですね。



【佐藤】雑貨屋さんで買ったミラーボールのミラーの部分を外して光に利用して、水の中の景色を表現したりとか、創意工夫で技術を補いながら作ったので、思い入れも強い作品です。お金をそんなにかけられるわけではないので、雑貨屋さんや100均で使えそうなものを買ってきたり、試作品みたいなものを作って、何度も失敗しては直すというトライアンドエラーの繰り返しでした。家族も協力してくれて、息子がおやつに食べた容器を、「コレ使えるんじゃない?」ってとっておいてくれたり。塗料をこぼして絨毯一枚ダメにしちゃったり、かなり迷惑もかけました(笑)。



━━佐藤さんは、パンクブーブーとして『M-1グランプリ2009』『THE MANZAI 2011』で優勝されています。ガンプラでも実績を残されていますが、“賞レースで結果を出す”という点で、お笑いとガンプラ、何か共通点はあるのですか?



【佐藤】『M-1』は、才能の面もあるんでしょうけど、何より、1年間、賞レースのためにモチベーションを持続できた人でなければ上位に残れないんです。自分の中でしっかりゴールをイメージして、1年間、形が見えない中でも根気よくずっとやり続けるというのは、本当に難しい。プラモデルもそれは同じですよね。僕が子どもたちにプラモデルを勧めたい理由のひとつもそこで、受験でも仕事でもこれから大人になるにしたがって、短期間ではなく、1年、2年、3年という長いスパンでモチベーションを保つということが非常に大事になると思うんです。プラモデルはそれを養えると思いますね。



━━長期的な集中力が身につくんですね。



【佐藤】プラモデルって手先が器用じゃないとできない、というイメージでとらえられがちですが、実はそんなことないんです。1個1個の作業は、そんなに難しくないし、要は単純な作業の積み重ね。だから正しい知識さえつけていけば、上手にもなる。プラモデルに必要なのは、センスでも器用さでもなく、知識と根気と家族の理解(笑)。この3つがあれば絶対できます。



■プラモデルがもっと身近になるよう世の中を変えたい



━━現在は「吉本プラモデル部」の部長として、定期的にライブを開催したり、展示会やイベントにも出演するなど、モデラーとの交流を深めていますね。



【佐藤】ハイキングウォーキングのQちゃん(鈴木Q太郎)らと集まって、プラモデル作って遊んでいたとき、けっこう話が盛り上がって、「お客さんもプラモデル好きだったら笑えるトークライブができるよね」っていう話になったんです。それがきっかけで、プラモデル部を作ることになりました。



━━プラモデル部を作ったことで、新たに発見したプラモデルの魅力はありますか?



【佐藤】これはプラモデルを再びやるようになって驚いたことなんですけど、プラモデルって一人でコツコツっていう面もあるけど、自分から能動的に動けば、かなりアクティブに遊べる趣味なんです。

 例えば、自分たちで企画して展示会を開いたり、オフ会でプラモデルを持ち寄って飲み会をしたり、プロモデラーを講師に招いて技術を学んだり、製作会をしたり。実はそういう活動をしている人がたくさんいて、プラモデル部でも、こちらからこうやって楽しくやっているよというのを発信していったら、たくさん共感してくれる人が集まってきたんです。

 それまでぶっちゃけ、僕自身、プラモデルという趣味に暗いイメージを持っていたから、学生時代にあまり友達に言ってなかったんですけど、実はプラモデルという趣味は、すごく開けた空間で、奥深いものだということに気づきましたね。



━━プラモデル部を通して、プラモデルの普及にも努めたいと?



【佐藤】プラモデルに対して抱かれがちな、“一人で引きこもってやる趣味”というイメージを変えて、魅力をもっと広められれば、プラモデルを趣味にする人がもっと増えると思うんです。そして最終的には、僕らが子どもの頃に体験したような、プラモデルが生活の中に当たり前にあるような時代が来たらいいなと思いますね。プラモデルがもっと身近になるように、世の中を変えたいです。



━━3月18日には『吉本プラモデル部活動記』という本を出版されました。



【佐藤】僕らがただただプラモデルをどれだけ楽しんでいるかっていう内容なので、これを読んだからといって、一切プラモデルはうまくならないです(笑)。自分の中で知らなかったプラモデルの楽しみ方を見つけてもらえたらなと思います。



━━最後に、佐藤さんにとってガンプラとは何か、教えてください。



【佐藤】“セカンドライフ”に近いですかね。ガンプラをやっているときというのは、普段の仕事とは離れて没頭し、利益関係なく、純粋に楽しむことだけを追求して、成長できる時間。“自分育てロールプレイングゲーム”みたいなもので、自分のもうひとつの生活ですね。



取材・文/河上いつ子
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