重松清氏、18年前の直木賞作『ビタミンF』80万部突破 異例の人気再燃

重松清氏、18年前の直木賞作『ビタミンF』80万部突破 異例の人気再燃

 2003年に刊行された重松清氏の小説『ビタミンF』(新潮文庫)が、昨年末からたちまち人気が再燃。短編七編が詰まった直木賞受賞作は、重松氏の代表作のひとつであったものの、ここにきて売り上げを重ね、週間売上ランキング1位となる書店もあらわれるなど、うなぎ上りに勢いが増し、合計4回8万5000部を増刷。このたび、単行本と文庫の累計発行部数が80万部を突破した。



【画像】『ビタミンF』書影



 大ブレイクのきっかけは、新潮社営業部員Aさん(40歳・男性)の熱い思いだった。「入社当初、20代の頃に『ビタミンF』を初めて読んだ時は、正直あまりピンと来なかったのですが、40歳を迎えて改めて読むと、涙が止まりませんでした。それは主人公が今の私と同年代だからです。仕事も家庭もピリッとせず、何とも中途半端な年代。コロナによる閉塞感も重なったのかもしれません。今の自分と重なる部分ばかりで、気が付くと山手線を一周して涙が頬を伝っていました。この気持ちを誰かと共有したいと思い立ち、もう一度拡販することを提案したんです」。



 昨年末、5000部の重版とともに作成したパネルには「涙腺キラー・重松清 最泣の一冊!」というコピーが添えられ、このコピーから多くの読者に思いが届き、わずか数ヶ月で大躍進を果たした。そんな勢いを象徴するかのように、平積みで置かれる書店もあり、有隣堂アトレ恵比寿店では大きく展開されている。



■『ビタミンF』あらすじ

38歳、いつの間にか「昔」や「若い頃」といった言葉に抵抗感がなくなった。40歳、中学一年生の息子としっくりいかない。妻の入院中、どう過ごせばいいのやら。36歳、「離婚してもいいけど」、妻が最近そう呟(つぶや)いた……。一時の輝きを失い、人生の“中途半端”な時期に差し掛かった人たちに贈るエール。「また、がんばってみるか――」、心の内で、こっそり呟きたくなる短編七編。直木賞受賞作。



■重松清氏プロフィール

1963(昭和38)年、岡山県生れ。出版社勤務を経て執筆活動に入る。1991(平成3)年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、同年『エイジ』で山本周五郎賞を受賞。2001年『ビタミンF』で直木賞、2010年『十字架』で吉川英治文学賞、14年『ゼツメツ少年』で毎日出版文化賞を受賞。現代の家族を描くことを大きなテーマとし、話題作を次々に発表している。
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