最古の戦隊は6億年前? スーパー戦隊を“図鑑化” 担当編集が語る意義「学ぶきっかけはフィクションでもいい」

最古の戦隊は6億年前? スーパー戦隊を“図鑑化” 担当編集が語る意義「学ぶきっかけはフィクションでもいい」

 1970年に創刊された『学研の図鑑』シリーズ。子どもの頃に家庭や学校で手にして、カラフルな水玉をあしらった表紙に見覚えのある人は多いだろう。このシリーズから、「スーパー戦隊」の図鑑が8日に発売される。『秘密戦隊ゴレンジャー』に始まり現在まで、歴代45作のスーパー戦隊を伝統ある図鑑のフォーマットで解説。1月の予約開始当初から「なにこれめっちゃほしい」「中身が気になりすぎる」など早くも多くの反響が寄せらせている。編集担当者に制作を通じて浮かび上がった、スーパー戦隊が時代を越えて支持され続ける理由と、現代における図鑑の意義についても聞いた。



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■戦士だけで300、ロボットも変形すべて1人で調べ図鑑化「ものすごく大変だった」 



 『学研の図鑑』シリーズは一昨年、往年の人気マンガ『キン肉マン』に登場する「超人」を網羅した図鑑を発売。架空のキャラクターである超人をリアルな生き物に見立て、「動物」や「植物」などと同様な形で解説した。反響は大きく、熱烈な想いをビッシリ綴った読者ハガキも数多く届き、「こういう図鑑も作ってほしい」という要望も多数寄せられたという。中でも特に多かった「スーパー戦隊」が形に。約300の戦士と、約300のロボットをほぼすべて掲載している。



 『キン肉マン「超人」』と同様、スーパー戦隊を実在の組織と仮定し、6つの形態に分類。『ゴレンジャー』などの「世界組織」、『ゴーゴーファイブ』などの「民間組織」、『カクレンジャー』などの「伝統組織」、『ジュウレンジャー』などの「古代組織」、『ゴセイジャー』などの「超自然・異世界」、『キュウレンジャー』などの「宇宙由来」とカテゴライズしている。



 編集は『キン肉マン「超人」』に続き、学研のコンテンツ戦略室室長の芳賀靖彦氏が担った。基本は個々の超人の解説だった『キン肉マン』に比べ、ほぼ全戦隊に5人以上の戦士がいて、さらにロボットも登場することから「思っていたより、ものすごく大変でした」と振り返る。



「ロボは最初の頃は1,2体だったのが、最近は戦士ごとにいて、さらに合体したりと複雑化しているんです。『ゴセイジャー』などはパーツが変形して、合体してロボになり、さらに何体かで合体……といった形で、『ゴセイジャー』などはロボの図表だけで4ページにまたがりました。当初はロボを網羅するか迷ったのですが、そうしなかったら、ファンの方に絶対受け入れられないと思ったんです」



■45作で戦う理由がユニバーサル化 “怒りのパワー”から“異星人との共闘”に変化



 資料も多くない中で、自分で乗り物やロボの写真をパワーポイントで貼り付け、合体図のラフを作るだけで、1日に2戦隊分がやっと。その前には、過去に放送された44作すべてに目を通してもいる。そこで時代ごとのスーパー戦隊シリーズの作風の変遷も感じたと、芳賀氏は語る。



「あくまで自分の視点ですが、初期の戦う主な理由は『悪いヤツは許さない』という怒りのパワーだったように思います。それが80年代後半の『ライブマン』くらいからか、憎しみは憎しみを生むだけなので『愛する者を守るために戦う』となってくるんですね。さらに90年代に入ると環境問題もあって、地球の意思を尊重しなきゃいけないと。最近だと、異世界や異星人とも共闘してユニバーサルな価値観のために戦うようになってきたのが、面白いと思いました。ただ、スーパー戦隊の良いところは、そうしたテーマを掲げながらも、ライトなタッチでユーモアがあるんです。『カーレンジャー』や『ゴーオンジャー』のようなコメディ風の作品もありますし、そこも魅力のひとつですね」



 子どもの頃は戦闘シーンがカッコ良くて観ていたのが、大人として深みを感じた作品もあったそう。



「『フラッシュマン』では、子どもの頃に地球からさらわれて、助けてくれた宇宙人に育てられた戦士たちが、地球のピンチに駆けつけて戦うんです。でも、自分たちは地球にいる生みの親の顔を知らずに育ったから、地球にいる人を見て自分の親じゃないかと思ったりするのがリアルで、親を探すも見つからないというやるせなさが描かれていました。2000年代に入ると、『シンケンジャー』では戦隊が殿様と家臣という組織になっていて。家臣は殿様に付いていく価値があるか見ていて、殿様も仕えられる価値のある人間になろうとする。それは実社会でもあることですよね」



 一方、45年で一貫して変わらないコンセプトも伝わったという。



「戦士たちの個性はバラバラで性格も全然違うけど、ひとつになれば大きな力になるのが、最大のテーマだと思います。そこはこの図鑑でも、裏テーマとして意識しました。戦士1人ずつの解説で個性が際立つように、趣味やプライベートも入れていて。こんなに別々なタイプの人たちがひとつの戦隊として戦っていることが、それとなく伝わればと」



■フィクションの図鑑で子どもたちに学ぶ意欲を「図鑑を買い与えるのは日本人の文化」



 作りとしてはカタログ的な見せ方はせず、同社の学習図鑑の体裁に則って「くらべてみよう」というページも。各戦隊の乗り物の大きさや速さなどをビジュアルでわかりやすく比較できる。また、スーパー戦隊の成立を史実の中に落とし込んだ古代史や武家時代の年表ページも設けられている。年表ページのイラストを担当したのは、実際に理科の教科書を担当しているイラストレーターにお願いするこだわりよう。



「『オーレンジャー』のキングレンジャーが活躍したのが6億年前だったり、恐竜の進化とともに『ジュウレンジャー』が生まれたり、中国文明が誕生した頃に『ダイレンジャー』の起源があったり。武家時代の年表は絵巻物風にしていますが、『ニンニンジャー』の先祖が牙鬼一族と戦っていた頃にポルトガルから鉄砲が伝来していたりします」



 作品ごとに設定された戦隊の特徴が、同じ横軸に並べることで相対化されるのが面白い。ちょうど放送中の『機界戦隊ゼンカイジャー』では、45作目の記念作として、かつてのスーパー戦隊のパワーを使って戦っている。基本、子どもの頃にスーパー戦隊に心ときめかせた大人を購買層に想定しつつ、他と同様、漢字にすべてルビをふってあるこの図鑑は、親子で重宝されそうだ。



「『ゼンカイジャー』を観ているお子さんが、話に出てきた過去の戦隊のことを図鑑を使って調べられると思います。『キン肉マン「超人」』でも、お父さんが買ってきたのを子どもさんが熱心に読んで、親以上に詳しくなっていたというエピソードが、たくさん届いてました。今は配信動画もあるので、昔の作品も含めてスーパー戦隊のファンになってくれたらいいですね」



 現代では、調べ物はネットで検索すれば、とりあえずは事足りる時代。だが、幼少期にアメリカで過ごした経験もある芳賀氏は「図鑑を子どもに与えるのは日本人の文化」だと語る。



「ネットでは、気になったものをピンポイントで調べることしかできませんけど、図鑑の良さはまず、いろんな種類が掲載された全体を見たうえで、『この恐竜、カッコいいな』という具合に気に入ったものを見つけてから深堀していけるんですよね。そういう図鑑ならではの良さを日本の読者はよくわかっていますし、今発売中の『学研の図鑑LIVE』ではDVDやARも付いているので、図鑑はまだまだ需要はある気がします」



 そして、キン肉マンやスーパー戦隊を図鑑にすることに、文化的意義も大きい。



「学校の勉強だけが学びではなくて、図鑑を見て昆虫を好きになることもあれば、テレビでスーパー戦隊から学ぶこともたくさんあると思うんです。モチーフの恐竜や忍者や星座について、もっと知りたくなるとか。学ぶ意欲をもたらすきっかけを、フィクションだからと区別する必要はないですよね。このスーパー戦隊図鑑が、お子さんの好奇心や探求心を刺激する本になればいいなと思っています」



(取材・文/斉藤貴志)
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