オンラインライブは新たな表現方法を創造する次段階へ

オンラインライブは新たな表現方法を創造する次段階へ

 新型コロナウイルス感染拡大によって、リアルライブを自粛せざるを得なくなり、多くのアーティストがオンラインライブへと舵を切ってから、1年が経過した。その間に、音楽を生業とするプロとして、有料でライブを行いたいアーティストサイド、そして好きなアーティストを応援したいというファン、双方のニーズが合致して、有料オンラインライブ市場は短期間に急拡大を遂げた。ぴあ総研は2020年の市場規模を448億円と推計している。



【写真】新宿にオープンしたライブ配信のアジト



■専用スタジオでオンラインならではのユニークな表現方法を創造



 リアルライブに対する飢餓感もあって、すっかり定着したオンラインライブだが、今年に入ってから、その熱が落ち着きを見せている感は否めない。そういった今の状況について、「ユーザーがトーンダウンしているのではないか」と語るのは、コミュニティ型ファンクラブ「Fanicon(ファニコン)」を運営するTHECOO代表取締役CEO・平良真人氏。



 2020年3月にいち早く「ライブを止めるな!」プロジェクトを立ち上げ、アーティスト支援に乗り出した同社は、チケット制ライブ配信サービスのプラットフォーム利用料、配信機材やスタッフの無償提供を開始。ライブハウスから配信を行う場合は、会場費もTHECOOが負担。またチケット収益は主催者・アーティスト側に100%還元されるという内容で、大きな反響を得た。



「昨年の3月以降、弊社だけでも数多くの、そしてさまざまなタイプのオンラインライブを開催してきました。それによって、行う側も観る側もすっかりオンラインライブに慣れていきました。今は次のフェーズに移行しようとしている時期なのだと思います」(平良真人氏/以下同)



 次なるフェーズとは、アーティストもユーザーもともに楽しめる“オンラインならではのユニークな表現方法の創造”なのだという。確かに、オンラインライブには、リアルライブとは異なる感動体験がある。しかし、リアルライブの代替として考えたとき、物足りなさを感じるのもまた事実だ。オンラインメディアには、オンラインならではの表現方法があり、適合するコンテンツがあってしかるべきだが、そのカタチが何なのか? 今はそれを模索する段階なのだという。



■最新設備を備えたライブ配信専用スタジオを新宿にオープン



 オンラインならではの新しい表現、新しい演出、新しい音楽の創造を目指して、THECOOはこのほどオンラインライブ専用のスタジオ『BLACKBOX3(ブラックボックス3※)』(東京新宿区)をオープンした。場所は、昨年3月に閉店したレコーディングスタジオ「スタジオグリーンバード」の跡地である。地下1階、2階のフロア構成となっており、4面LEDパネルを常設した「BOXスタジオ」、アンティーク調の「BRICKスタジオ」の2つのスタジオを併設している。照明、カメラ、映像などの設備を完備し、オンライン配信やミュージックビデオ撮影など様々な用途に対応できるよう設計された。



「出演者やクリエイターからの様々なリクエストに応えたいと考え、拡張性の高いスタジオを目指しました。LEDは必要ない、アコースティックライブを行いたいというニーズもあると考え、そのためのスタジオも作りましたし、ありとあらゆることを想定した作りになっています。スタジオの名前“BLACKBOX3(※)”には、ミュージシャン、クリエイター、俳優、芸人…など、表現をしたい人が集まって、ユニークな発想のもとに様々な発信ができる場にしたいという思いを込めています。リアルのライブが復活しても、オンラインライブとどちらにしようか悩んでしまうくらいのものを創造していきたいですね」



 大型LEDパネルとメディアサーバー(disguisevx2)により、XR映像などのクリエイティブな演出も可能だという同スタジオ。現時点でこれほどの設備を備えたスタジオは、国内ではここだけだという。投資額は数億円に達したということから、気になるスタジオ利用料金を尋ねると、同社が運営するコミュニティ型ファンクラブ「Fanicon」や、チケット制ライブ配信サービスの利用者には無償提供されるという答えが返ってきた。



「イベントなどのライブ配信はFaniconのサービスの1つに含まれています。今まであったスタジオも利用者に無償提供してきましたので、今回、新たにスペックの高いスタジオが追加されたということになります。Faniconのコンセプトは“With fan, More fun.”。ファンが楽しめば、自分の熱量を金銭的価値に置き換えてくれる人の割合も増え、その結果として還元も大きくなっていく。それがファンコミュニティなんです」



■ファンコミュニティの中から誕生する配信ならではの新たな表現方法に期待



 現在、Faniconには3000弱のコミュニティがある。スタジオを使って、様々な試みを行ってもらえれば、きっといろんなヒントが生まれるはず。そのための先行投資だと、平良氏は期待を寄せる。



「Faniconには、ファンとコミュニケーションをとるための様々な機能があります。利用されているACIDMANの大木伸夫さんが、コロナ禍でライブやラジオなどいろんなやり方を試してみて、自然とファンとの付き合い方の“解”を見つけることができたと話されていました。このスタジオも同じです。いろいろ試してもらって、配信での楽しみ方探しにチャレンジしてほしい。とにかく何か面白いことをやりたいと思っている人は、一度体験してほしいですね。どれだけ説明しても、実際に見るのとは大違いですから」

 

 アーティストに、そしてファンに選ばれるサービスになるために、THECOOがコロナ禍に出した“解”が、何が飛び出すか分からない空間『BLACKBOX3(※)』の設立だった。ここから、どんなユニークなコンテンツが生まれるのか。チャレンジは始まったばかりだ。



※3は上付き文字
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