48歳で急逝した作曲家ヨハン・ヨハンソン“最後にして最初の長編監督作品”

48歳で急逝した作曲家ヨハン・ヨハンソン“最後にして最初の長編監督作品”

 作曲家ヨハン・ヨハンソンの初長編監督作品であり、遺作となった映画『Last and First Men』が、『最後にして最初の人類』の邦題で、7月23日よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ(以上、東京)ほか全国で順次公開される。



【動画】映画『最後にして最初の人類』予告編



 アイスランド出身のヨハン・ヨハンソン(1969年~2018年)は、クラシックと電子音を融合させた音楽スタイルで知られ、映画をはじめ舞台・コンテンポラリーダンスなど幅広いジャンルで活躍した作曲家。



 中でも映画音楽での活躍はめざましく、エディ・レッドメインがアカデミー賞主演男優賞に輝いた『博士と彼女のセオリー』(2014年/ジェームズ・マーシュ監督)では、ゴールデングローブ賞で作曲賞を受賞。大ヒットした『メッセージ』(2016年/ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)でも同賞にノミネートされ、世界的な注目を集めるようになった。



 しかし、キャリア絶頂期にあった2018年2月9日、48歳で急死。早すぎる逝去に、シガー・ロス、マックス・リヒターなど世界中のアーティストたちが数多くの追悼コメントを寄せた。生前に親交のあった音楽家の坂本龍一も「これから何度も共に音楽を作ることになるだろうと思っていました。そんな彼が何も言わずに突然去ってしまい、ぼくを含めて残された者はただ呆然としています」と追悼文を寄せていた。



 今回、日本公開が決定した『最後にして最初の人類』は、もともとシネマ・コンサートの形式で生上演されていたものがベースとなっている。ヨハンソンが監督した16mmフィルムの映像をスクリーンに投影し、女優のティルダ・スウィントンが朗読を加え、ヨハンソンによるスコアをオーケストラが生演奏するというスタイルだ。



 これをヨハンソンが亡くなった後、16mmフィルムの撮影監督を務めたシュトゥルラ・ブラント・グロヴレンを中心とした参加スタッフが、1本の長編映画として構成。ヨハンソンが目指したアーティスティックなビジョンを損なうことのないよう、2017年7月に行われた英国・マンチェスターでの初演を再現するべく努めた。そして、ついにヨハンソンの死後2年を経て、ヨハンソンの“最後にして最初の長編監督作品”は映画として蘇り、2020年2月のベルリン国際映画祭でワールドプレミア上映された。



 原作は、英国の哲学者で作家オラフ・ステープルドンの「最後にして最初の人類」(1930年/邦訳は絶版)。20世紀を代表するSF作家の一人であるアーサー・C・クラーク(『2001年宇宙の旅』)にも大きな影響を与えたといわれるSF小説の金字塔だ。20億年先の未来に生きる人類第18世代のひとりが、20世紀に生きる第1世代の私たちにテレパシーで語りかけてくる内容は、期せずしてヨハンソンの出世作である『メッセージ』の世界観とも響き合うものとなっている。



 なお、公開決定の発表にあわせ、ティザーポスターと予告編が解禁となった。ビジュアルで真っ先に目をひかれる巨大で奇怪なデザインの石碑は、旧ユーゴスラビアに点在する「スポメニック」と呼ばれる巨大な戦争記念碑だ。第二次世界大戦の対ドイツ戦で犠牲となった人々を追悼し、社会主義の勝利をアピールすべく建設された数々のモニュメント。それらは現在、まるで放棄された未来の夢のような姿を晒し続けており、美しくも謎めいた想像力をかきたて、スウィントンのナレーションとともに、観客を時空を超えた時間旅行へと誘うだろう。



■推薦コメント



●小島秀夫(ゲームクリエイター)

 静かに唸るヨハン・ヨハンソンの“音”に、20億年先の未来から届くティルダ・スウィントンの“メッセージ”が重なる。観客は幾何学的な記念碑(モニュメント)をただ仰ぎ観る。いつの間にか、それらは“モノリス”へと変わり、宇宙と終焉への畏怖に繋がる。これは亡きヨハン・ヨハンソンが奏でる最後にして最初の「2001年宇宙の旅」なのだ。死は終わりではない。



●冲方丁(作家) 

 20億年後の未来という超越的なこの体験は、まさに数万年前、原始の人類が宇宙を理解せんとしたときの追体験でもある。即ち本作は、人類の知の始まりと終わりとを同時に体験させ、真に世界へ耳を澄ませるための装置なのだ。



●ヤマザキマリ(漫画家・随筆家)

 ステープルドンが残した未来の人類からの警告は、ヨハン・ヨハンソンの途方も無い音と映像によって壮大な抒情詩となった。我々はこの作品を通じて、自分たちの中に潜む重要な感受性を呼び覚ますことになるだろう。

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