SSFF & ASIA「スマートフォン映画作品部門 supported by Sony」が映像の世界にもたらす意味とは

SSFF & ASIA「スマートフォン映画作品部門 supported by Sony」が映像の世界にもたらす意味とは

 国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)」とソニーがタッグを組んだ企画「スマートフォン映画作品部門 supported by Sony」。「スマートフォンのカメラで撮影された25分以内の短編作品であること」という条件のもと、応募作品は900を超えた。本部門で審査員を務める内田英治監督、水野良樹(いきものがかり)、さらにはSSFF & ASIAの代表を務める別所哲也が、新たなデバイスを使った映画制作の可能性や、創作活動の未来について語り合った。



【動画】スマートフォンで撮影…OP作品『星屑の子』



■楽曲、小説、短編映画という非常に魅力的な座組で完成した『星屑の子』



 本映画祭のオンライン会場のオープニング作品として公開された『星屑の子』。本作は、monogatary.com主催コンテスト「モノコン2020」の中に設立された、いきものがかりのシングル「きらきらにひかる」を題にした小説を募集し、「いきものがかり賞」を受賞した作品を、内田監督がソニーのスマートフォンXperia TM で全編を撮影した短編映画だ。



 楽曲をモチーフに小説を紡ぎ、さらに小説を原作に映像化する……という工程は、クリエイターたちにとっては大きな刺激となったようだ。



 水野は「自分たちが作った楽曲が、自分たちの想像を超えていく瞬間というのは、なんとも言えない興奮がありました」と本音を吐露。「今回は内田監督に作品を撮っていただいて、一つの形として完結しましたが、『きらきらにひかる』からイメージして書いていただいた小説、そして撮っていただいた映像を観て、さらに新たな曲を書いたりするようなキャッチボールができたら、すごく面白いなと思いました」と感想を述べる。



 内田監督も「いまの商業映画って、漫画やベストセラー小説を映画化することがとても多い。それってどこかつまらないと思っていたので、こういった形で作品ができあがるという流れはとても面白いと思いました。さらに自主映画ではなく、ちゃんと多くの人に観てもらえるという仕組みになっていることも重要だなと感じました」と刺激的な経験だったという。



 こうした座組からできあがった作品をアウトプットする場として映画祭を展開する別所も、できあがった映像を観たとき「人間の持つ想像力が掛け合わさることで、こんなにも跳躍した世界が生まれるということは素晴らしいと思いました」と笑顔を見せると、「きらきらにひかる」という、いきものがかりが作り上げた一つの楽曲から、小説という形でさまざまな世界観が生まれ、さらに内田監督が、スマートフォンという新しいテクノロジーを駆使して映像化したという一連の流れに「なんとも言えない醍醐味ですね」と目を細める。



■非常に意義深い「スマートフォン映画作品部門」



 スマートフォンで撮影した作品を募集した「スマートフォン映画作品部門 supported by Sony」には900作品以上の応募があった。多くの人がカメラ付きスマートフォンを持つ時代。確実に映像制作という部分では、ハードルが下がった印象がある。



 しかし内田監督は「僕は超低予算映画も、予算がそこそこある映画も撮ったのですが、あまりお金って関係ないなと感じました。同時に機材に関しても、良い機材を使えば、良い作品が撮れるというわけでもない。逆に言えば、スマホでも超名作を撮ることだったできると思うんです。でも『誰でも映画が撮れる』と言われてから20年ぐらい経っていますが、それができていない」と問題提起する。



 続けて「日本は映画に関していえば、非常に保守的だし、圧倒的にチャンスが少ない」と現状を嘆くが、一方で「でも別所さんが映画祭を盛り上げてくれるし、ソニーグループが全面的にバックアップしてくれるこうした企画は素晴らしい。やっぱりシーンを盛り上げようという意気込みが最も大事だと思うんです。こういった場がないと、モノを作りたいと思っている若い子が出てこられない。みんな疲弊して何年かで夢を諦めてしまうんです。だからこそ、大人がこういった枠組みを作ることは、本当に大事」と本企画の意義を賞賛する。



 さらに内田監督は「まずは応募することだと思う。薄っぺらなスマホで作ったものを、狭い扉かもしれませんが、どんどん投げ込んでいくことが大事。僕も映画祭に育ててもらったので、チャレンジしていって欲しいですね」と若いクリエイターにエールを送っていた。



 アーティストとして活躍する水野も「保守的なシステムや、与えられた環境によって序列ができてしまうのは、非常に不幸なこと」と前置きすると、そういったしがらみなく、自身の発想やアイデアだけで勝負できるこういった企画は、厳しいようだがとてもフェアな戦いだと賛同する。別所も映像が大衆化することで、一つの題材をどのように料理するのか、想像力が非常に重要になってくると説く。



 本企画を含めて、映像表現はここ数年で大きく変わっていくことは、容易に想像できる。別所は「20世紀にジャンル化されたものが、21世紀初頭でボーダレスになった」と語ると「映画、テレビという時代を経て、インターネットやスマートフォンが生まれ、僕らは大きく考えると時代の局面に立たされている。本当にいい時代に生まれ落ちたなとワクワクしています」と目を輝かせると、内田や水野も「今後もいろいろな形で参加していきたい」と意欲を見せていた。(取材・文・撮影:磯部正和)

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