セオリー壊す異色の警察ドラマ『ハコヅメ』 脚本家がこだわる“リアルさ”

セオリー壊す異色の警察ドラマ『ハコヅメ』 脚本家がこだわる“リアルさ”

 女優・戸田恵梨香と永野芽郁がW主演する日本テレビ系連続ドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(毎週水曜 後10:00)。18日放送の第5話を前に、『監察医朝顔』『フルーツ宅配便』などを手掛けてきた脚本の根本ノンジ氏のインタビューが公開された。「ドラマのセオリーとしてあり得ない、と議論になりました」「あんなの警察ドラマで見たことない」と本人も異例とする場面も数多く盛り込まれ、反響を呼んでいる今作の裏側や今後の見どころについて語っている。



【動画】川合に恋の予感?『ハコヅメ』第5話予告



■“通常点検”“添い寝”…クスッと笑える日常シーンが話題に「前代未聞だと思います」



 今作は、漫画雑誌『モーニング』(講談社刊)で連載中、元警察官の泰三子氏による『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』(既刊16巻)を実写化。ワケあり元エース刑事・藤聖子(戸田)と、天然新人・川合麻依(永野)の“最強ペア”による、身近なようで意外と知らない“交番女子”こと交番のお巡りさんのリアルすぎる日常が描かれる。



 これまでにも実写化作品を多く担当し、「漫画であれ小説であれ、原作があるからドラマ化なり映像化の話がある。必ず原作に敬意を払い、原作の世界観を大事にしています」と話す根本氏が「今までで一番難しい」とする今作。「原作のコミックスがめちゃくちゃ人気なんですけど、初期のころは一話完結の“交番の日常”みたいな話が続くんです。それをドラマ化すると各話だいたい10分を切るくらいになってしまう。そうなると残りの40分はオリジナルのエピソードで作ることになって、漫画の世界観と変わってしまうことがある。



 もちろん面白くなる場合もあるし、そういうドラマもいっぱいあるけど、『ハコヅメ』に関しては面白いエピソードがたくさんあるので、いろんなエピソードを一つのストーリーとしてつなげた方がいいな、と。その上で、登場人物たちの気持ちの流れがきちんと起承転結できるように構成していく。だから話のつながりが難しかったりするんです」。そんなこだわりによって、原作の空気感を生かしながらもドラマとしても見応えのある仕上がりとなっている。



 主人公ら女性警察官3人が署内の仮眠室で川の字になって眠る前代未聞の“添い寝シーン”や、第1話で描かれた“通常点検”では、身に着けている装備品の状態や動作の確認などをする恒例行事という、絶対に笑ってはいけない状況下で警察官たちの“心の声”がダダ漏れとなったシーンも話題を呼び、YouTubeでのノーカット版再生回数も300万回を突破している。“通常点検”シーンは、原作6巻に登場する。



 「初めに書いたのはもっと長かったので、打ち合わせのときに、やっぱり長すぎるんじゃないか、ストーリーに関わるシーンじゃないのにそもそも必要なのか、と議論になりまして。原作でも6巻くらいのエピソードなのに1話に入れることないじゃん、という意見もあった」。登場人物たちの“心の声”が全開となるコミカルな場面だが、「それもまたドラマのセオリーとしてあり得ない、と議論になりました。みんなの“心の声”なんて、普通はあんまりやらないんですよ、主人公の目線で見ていくから。いきなり全員が、ってないんです。だけど面白いじゃないですか。こういうことをやろうとしてるんだな、とドラマの見方もわかってもらえる。だから絶対にやったほうがいい」と力説したという。



 結果、無事に収録されたシーンは予想どおり大反響。「仕上がりを観たら超面白くて。藤が警笛を吹いたときのあの顔、あの目、素晴らしすぎましたよね。あれを1話でやったことによって、いつでも“心の声”ができるようになったので、よかったな、と」と手応えとともに、1話以降の演出の手助けにもなった。



 さらにもう一つ、根本氏が「どうしてもやりたかった」と言うのが、第4話の“添い寝”シーン。「原作にもあるんですけど、あんなの警察ドラマで見たことない。でもおそらく実際にこういうシーンがあったんだろうな、と。どうしても寝なきゃいけないから寝よう、って。一方の男たちはおじさん刑事に囲まれて寝る。あれもたぶん本当にある話なんだろうな。今までの警察ドラマではあんなシーンないですよ、前代未聞だと思います。こういうところが『ハコヅメ』。ああいう、なんともいえないリアルなものは必ず入れたいと思っています」。



■見どころは“正義の味方ではない警察官”「文句も言うし、愚痴も言う」



 その“リアルさ”こそが今作をこれまでにない警察ドラマに仕立てている。「僕は普通に生きている人たちの細やかな日常を描くことが好きなので、どんな原作でもそこは大事にしています。ごはんは何を食べるとか、どうやってお風呂に入るとか、日常の細やかなことでも事件は起こると思うので。だから食べ物のメニューも台本に細かく書き込んじゃう。“こういうのを食べる人って、こういう性格だよね”ってあるじゃないですか。ごはんの食べ方だけでもキャラクターが出るので。細かく書いちゃって嫌がられるんですけど(笑)」。



 そんな根本氏にとって『ハコヅメ』は、まさに自身が一番描きたいことと合致する作品。「原作でも『警察官なんて、しょーもない普通の人間だよ』というセリフがあるんですけど、まさにそこ。今までの警察ドラマは刑事の推理がすごいとか、熱血とか、正義感が強いとか、わりとそういう描かれ方をしていたけど、『ハコヅメ』に出てくる警察官たちはすごく人間臭くて、普通の人なんですよ。文句も言うし、愚痴も言う。そこが魅力なんです。扱う事件も、普通の警察ドラマは殺人事件で人が死んで、誰が犯人で、と描いていくけど、そうことを全く描いてない。もっと身近な事件、誰にでも起こるような出来事、警察官はこんなこともしてるんだな、って。警察官を正義の味方として描くのではなく普通の人として、悩みながら事件にあたっている、解決するために頑張っている、そこを見てほしいですね」と話した。



 そして『ハコヅメ』のもう一つの見どころが、戸田と永野のコンビネーションだ。「原作があるので当て書きではないけど、お二人がよりリアルに、より魂を吹き込んでくれている。戸田さんの凛としてる顔と、優しい顔と、ちょっとキュートになるときの、あの感じが素晴らしくて。心奪われてしまいました。永野さんも、川合というキャラクターはちょっと失礼だし、急にタメ口聞いたりするし、やる気もなさそうだし、嫌われる要素があるんだけど、永野さんが演じることによってそれが全くない。また髪型がいいですよね、あれでもう川合そのもの。ほんとに感動します」と絶賛する。



 ちなみに、ふたりの演技で特に印象に残っているシーンは「1話で川合が犯人を走って追いかけて、でも転んで追いつけなかったのを、藤が捕まえた。それが4話では、転んだ川合に藤が『立て!走れ!』って言う。あそこは好きですね。川合が一生懸命立ち上がるところ、1話から4話の間でちょっとだけ成長しているところとか。でも5話以降、さらにいいシーンが出てきちゃう…」と期待をあおった。



 第4話で、川合は似顔絵が評価され、正式に似顔絵捜査官としての研修を受けることに。物語はここから新たな展開をみせる。根本氏は「5話からは川合が似顔絵捜査官として開花して、“これから成長していくぞ”っていう、第2章と言っても過言ではない。面白いシーンが山盛り。川合と藤の合コンがあり、さらに川合は恋に落ちる。これは面白いです。まじめな事件も取り扱いながら、5話は楽しい回。それ以降も原作で人気のエピソード、僕が好きなエピソードをどんどん使っていくので、楽しみにしていてください!」と自信をのぞかせる。



 初恋すらしたことがないという川合がまさかの恋に落ちる、その相手とは。そしていまだ明かされない、藤が交番に来た本当の理由…。一体なぜ刑事課のエースが交番に来たのか。休みを返上してまで何を追っているのか。そして藤が大事にしまっている写真に写る、どこか川合に似た面影の女性警察官は誰なのか。お巡りさんのリアルな“日常”とともに描かれる人間ドラマの行方にも注目だ。
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