他店がやらないことに挑戦 ディスクユニオンが提案するこれからのリアル店舗

他店がやらないことに挑戦 ディスクユニオンが提案するこれからのリアル店舗

 ディスクユニオンは7月9日、東京・新宿に「ベストアルバムストア」、「収納ストア」、「新宿中古センター」、「新宿クラシック館」の4店舗を同時オープンした。注目は、洋邦のベストアルバムだけを集めた「ベストアルバムストア」、そして、CD・レコード、書籍の収納用品に特化した「収納ストア」である。リスナーが音楽を聴くという「行為」そのものは変わってはいないが、時代と共に音楽の所有形態は変化を遂げてきた。同社が展開するこれまであるようでなかったユニークな切り口のリアルショップには、音楽ストリーミング市場が拡大するなかでCDが共存していくためのヒントが隠されている。



【写真】収納用品に特化したディスクユニオン初の「収納ストア」



■CDを復権したいという思いから生まれた「ベストアルバムストア」



 東京・新宿通りにある紀伊國屋書店の隣にある「T&T IIIビル」3階に新たに誕生したディスクユニオン4店舗。以前、同所にあったビルには新宿中古センター、新宿クラシック館が入店していたが、改装に伴い一時移転して営業を行っていた。この度、新ビルのオープンに合わせてリニューアルオープンした形になる。



 エレベーターを下りると、壁一面にプリントされた名盤の数々が出迎えてくれる。向かって左から「新宿中古センター」、「ベストアルバムストア」、「収納ストア」、「新宿クラシック館」の順に並んでおり、それぞれのフロアを自由に行き来できる設計になっている。ベストアルバムストア店長の中野良亮氏は、ベストアルバムだけを集めるという「ベストアルバムストア」のユニークなコンセプトは、「長年音楽市場を牽引してきたCDを復権したい」という同社の思いから生まれたものだという。



 「関心のあるアーティストができたら、まずはベストアルバムから聴き始めるケースが多いですよね。ベストアルバムというとCDの印象が強いこともあり、このコンセプトで1店舗作ってみようか、ということになりました」。ストリーミング市場が拡大しても、日本にはCD文化が根付いていることを実感しており、他店には見られないコンセプトで「レコードの復活がある一方で、CDもしっかり販売していきたい」と語る。



 一方の「収納ストア」は、ディスクユニオン初の収納用品に特化した店舗だ。元々新宿にはCD・レコードアクセサリーのストアはあったが小規模なものだった。そのため、以前より「アクセサリー商品の中から収納にまつわる商品だけに特化した店を作りたい」というアイデアを温めていたという。これまでカタログ販売していた収納ラックを展示するだけでなく、自分の家に置いた感じがイメージしやすいようにと、実際にCD・レコードを収納したラックを配置したイメージルームも併設し、音楽のある暮らしを演出。それにより、当初の目論見通り「それぞれの店舗に来た人がふらっと立ち寄れる流れができた」ようだ。



■日本独自に発展したコンピレーション文化 新たな発見の数々



 「ベストアルバムストア」に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのはびっしりとCDが詰まった四方の棚である。J-POPから歌謡曲、洋楽、そしてフロアの一角に置かれたレコードまで含めると、その数は約1万2000枚となる。ベストアルバムだけで店を本当に作れるのか不安だったと言うのは、同ストアのチーフ・荒井 培氏。「集めていく中でこれだけのCDの数が揃ったのは新たな発見でした」と驚きを隠せない。



 商品構成の割合を見ると、圧倒的に日本アーティストのものが多い。ベストアルバムをはじめ、シングルコレクション、海外アーティストの来日記念盤、各種コンピレーションと、日本企画盤の多様さは目を見張るものがある。「CDは利便性に加え、資料的な面でも優れています。そういった背景もあってコンピレーション文化が日本独自に発展した背景があるのだと思います。そういう意味でも、こういったコンセプトの店づくりは日本でしかできないのではないでしょうか」。



 平日は40代~50代の利用が多いが、休日は30代前半の層の姿も見られ、客層は広がる。訪問した日は、平台で「アンソロジー・オブ・アメリカンフォーク・ミュージック」特集が展開されていたが、今後、さまざまな切り口でベストアルバムならではの魅力をアピールしていく。また、同店の20代~30代のスタッフの意見を取り込みながら、若い世代にもアプローチしていきたい考えだ。今後の目標は、「1アーティストでも多く取り揃えて、ここに来たら探していたアーティストのベストアルバムが必ず手に入る専門店を目指したい」と意気込む。



■収納用品を通じて快適な音楽ライフを提案する「収納ストア」の手応え



 収納用品を通じてより快適な音楽のある暮らしを演出する「収納ストア」。入りやすい雰囲気を心掛け、壁を低くして各店舗を行き来できる通路から中がのぞけるデザインとなっている。部屋を模したイメージルームなどを作った空間演出は、インテリアショップのショールームのよう。CD・レコードがぎゅっと詰まったイメージがあるためか、「お客さんにはいい意味でディスクユニオンらしくないと言われています」と笑うのは店長の小林光宏氏。



 大小のオリジナル収納用品を中心に、レコードフレームなどのディスプレイ商品、ビニールカバーなどの保護用品も数多く品揃えされている。人気はレコード店に置かれているようなタテ入れタイプのレコードラックで、レコードプレーヤーが置けるラックと組み合わせて購入する人が多いという。プレーヤーが置ける奥行きをもたせたラックは、同社が製造元にサイズ感を伝えたオリジナル商品。展示されている商品はいずれも、“レコードやCDをきれいに大事に収納したい”と考えるユーザーの期待に応えた作りになっている。

 

 休日には、家族連れやカップル、引っ越しを間近に控えた夫婦の利用が相次ぐ。CD・レコード関連以外にも、これまでWEB限定の取扱いだった読書用品のオリジナルブランド「BIBLIOPHILIC」商品も常設されている。ゼロからの店づくりに試行錯誤の日々、ということだが、「ラックを求めるお客様の多さに気づかされた」と手応えを感じている。



■CDとストリーミング共存の道を模索 これからのリアル店舗のあり方を考えるきっかけに



 ベストアルバムに大きな注目が集まったのは90年代だ。コンピレーション市場の先駆者的作品である「NOW」シリーズに始まり、「MAX」「HITS」等々、洋楽入門コンピレーションが人気を博し、それに類したコンピレーションが続々とリリースされていった。邦楽では、人気急上昇中の時期にGLAYがリースした『REVIEW~BEST OF GLAY』(97年)が記録的なヒットとなり、それまでのベストアルバムの定義を覆した。以降、ベストアルバムは、アーティスト活動の集大成ではなく、節目にリリースされるものへと変わっていった。



 アーティストによって、ベストアルバムに対する捉え方はさまざまだが、前出の荒井氏が語るように、その商品数の豊富さは、まさに日本のCD文化の1つの象徴と言えるものだろう。今回のような取り組みは今後、CDがストリーミングとの共存の道を探っていくうえでの1つの可能性を提示しているように感じられた。そして、これまであるようでなかった、音楽ファンのニーズにとことん寄り添ったオリジナルアイテムを取り揃えた「収納ストア」。ディスクユニオンの新店舗は、これからのリアル店舗のあり方を考える大きなきっかけとなりそうである。



文・カツラギヒロコ



■ディスクユニオン「新宿中古センター」「ベストアルバムストア」「収納ストア」「新宿クラシック館」店舗概要

・住所 : 〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目17番5号 T&TIIIビル 3F

・営業時間:12:00(一部店舗を除く)~20:00
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