山寺宏一、声優業界の変化「怖い」 60歳で“若手の活躍に嫉妬”する自分に驚き

山寺宏一、声優業界の変化「怖い」 60歳で“若手の活躍に嫉妬”する自分に驚き

 数々の名作アニメに出演し、その声色で無数のキャラクターを演じ分けてきた声優の山寺宏一。2012年に始まった『宇宙戦艦ヤマト2199』からデスラー役を務め、それ以前に『宇宙戦艦ヤマト復活篇』等で古代を演じていたことを含めると20年以上もヤマトシリーズに関わっている稀有な存在だ。8日上映のアニメ『宇宙戦艦ヤマト2205新たなる旅立ち前章-TAKE OFF-』ではアベルト・デスラーを再び演じる。その山寺に、同作への想いをはじめ、今年60歳を迎えて思う声優としての在り方などを聞いた。



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■「中学1年でアニメを卒業しようとしていた」その後の人生変えた『ヤマト』との出会い



――山寺さんは、富山敬さんの後継として古代役を務めてから、約20年間にわたってシリーズに携わっていることになります。



【山寺宏一】これだけいろいろなカタチで関わっている方は原作を除くとあまりいないでしょうから、本当にありがたいことだなと思っています。『ヤマト』のテレビシリーズが始まった頃、僕は中学1年生くらいで、そろそろアニメを卒業しようと思った時期でした。当時は大人向けのアニメというものは少なく、子どもが観るものだという風潮だったので、アニメを観ていたら子どもっぽいと言われるかなと思っていたら「なんだ、これは!」と。『ヤマト』と『ルパン』に関しては、背伸びして観るアニメだという認識がありました。中学生で多感な時期で、毎週ドキドキして観ていた『ヤマト』のファンである僕が、古代とデスラーを演じるっていう。今振り返ると驚きでしかないです。



――1970年代に起こった第一期アニメブームの中心だった『宇宙戦艦ヤマト』ですが、50年近く続く同シリーズに、声優としてどのような想いがありますでしょうか。



【山寺宏一】社会現象とまで言われましたよね。まだ続いていることに驚きを感じています。尊敬する富山敬さんの後を、小さい頃に観ていたというイメージでやらせていただいて、『復活篇』の話が来た時もびっくりしました。でも、歴史のある作品だけにいろいろな意見が出てきてしまうので、コアなファンの方を意識しすぎてもいけないし、だからと言って全然違うものにもできない。非常に難しいと思います。時代が変わったからこそ描けるものがあり、変わらないものもある。ヤマト愛を持って、みなさんで受け継いでいるのだなという感じがずっとしています。『2199』が成功していなければリメイクシリーズも続いていないわけで、すごいことだと思います。



――本作は、ヤマトクルーたちの新たなる旅立ちを描きながらも、デスラーがとても印象的に描かれています。



【山寺宏一】『2202』シリーズでデスラーの過去が明かされて、「そんなことがあったのか!」と僕もびっくりしたのですが、デスラーは生まれながらに冷徹で、手段を選ばないような男だったわけではないことが明らかになり、すべてはガミラス存続のために心を鬼にしてやっていたことがわかりました。ですので、本作では若い頃から大きなものを背負っているということをずっと感じながら演じています。



今回は特に、前のシリーズでランハルト(クラウス・キーマン)という自分の甥っ子の思いも背負うということになり、彼との約束があるわけです。それをずっと胸に秘めているので、背負うものがさらに大きくなったかなと感じがしますね。



■「あ、時代変わっちゃった」山寺が“おいてけぼり”を感じた声優業界の変化



――原作シリーズでは、伊武雅刀さんがデスラー役を演じられていましたが、リメイク作品で役を引き継ぐことに関してはどう感じていたのでしょうか。



【山寺宏一】『ヤマト』は長年続く人気作ですから、ずっと応援している人と、新たに観てくれる人が両方いらっしゃいます。最初、伊武さんが演じていたデスラーを聞いていた人はどう思うかを意識してしまって、そのことばっかり考えていました。僕自身が伊武さんじゃなきゃって思っていましたから。顔もストーリーも変わるので、やらせていただきますと言いましたが、伊武さんと比べられるとずっと思っていましたからね。プレッシャーはあったけれど、始まってしまえば目の前の作品に向き合い、その役をどう演じるかなんです。与えられたものをどれだけクオリティー高いものに仕上げるか、ということですから、あまり周りのことは気にしなくなりました。プレッシャーは相変わらずですけど。



――今では、山寺さんのデスラー役は広く受け入れられています。



【山寺宏一】声優は作品との出会いがすべてなんですよね。そこで力を発揮できるかどうか。まず出会えるか、次に力を発揮できるか。本当にやりがいのある、心震えるようなセリフを言えるっていうのは、本当に喜びですね。だから、そういう作品に出会えたことはよかったです。伊武さんのデスラーでしょって、ビビッてお断りしなくてよかった。



――伊武さんを始め、諸先輩方からはどのような影響を受けたのでしょうか。



【山寺宏一】『ヤマト』だけでなく、数々の作品で先輩の真似ばかりしてここまでやってきたところはありますし、大好きな先輩がいたら自分の出番がなくてもスタジオからは絶対出たくなった。良いな!と思う人がいたら常に盗もうと、いまだに思っているんです。仕事の仕方など影響受けまくりだし、先輩方とよく飲みに行ったりもしました。「器用貧乏になるな」といつも先輩に言われたし、「売れても勘違いするな」「マネージャーに生意気な態度をとるな」ともいろんな言葉を頂きました。演技に関しても普段のことも、いろいろ言われました。生意気になりそうだったんでしょうね(笑)。



――今作では、新たなキャストが『ヤマト』に初参加されます。ベテランから若手まで、幅広い世代の声優の方と共演される中で、年代に伴う声優という職業への変化は感じられますか。



【山寺宏一】今はすごく感じています。前は「基本的に変わりませんよ」と言ってすましていましたが、最近「あれ?」と思い始めました。こうやっていろいろな作品に出させていただいていますが、どこかでおいてけぼりを感じたこともよくありますね。「あ、時代変わっちゃった」みたいな。やばい、もっと頑張らないとって。僕も『おはスタ』以降、声優以外でも来た仕事を何でもやろうと思って今まで頑張ってきたけれど、それとは違う幅の広さですね。SNSやって、イベントで人いっぱい集めたり、コンサートで人集めてすごいなと。今は個人の発信力が大事になっているじゃないですか。そんなの関係ないっていうタイプだったんですけど、そんなことも言ってられないなって。だからよく話すんですよ、SNSをバカにしちゃいけないなと。「山ちゃんもいいけれど、この声優は100万人(フォロワーが)いる。じゃあこっちか」と言われるようになったら怖いなと思うんです。



■60歳を迎えるもまだ“若造” 「死ぬまでやりたい」声優業への想い



――今年60歳を迎えられましたが、『ヤマト』シリーズを含め声優の活動についてはどのように考えているのでしょうか?



【山寺宏一】我々の仕事は印税とかないので、昔の仕事を褒められても1円も入って来ないんですよ。だから常に仕事をしていないと(笑)。これからもいい仕事をたくさんしたいし、やっていても楽しい。それが生きがいでやっていますからね。住宅ローンが残っているという話は置いておいても、仕事してなんぼなんで(笑)。



でも、60歳でこんなことを考えるとは思っていなかった。もうちょっと絞って、自分のやりたい仕事だけやろうとか、昔は考えていました。だけど、まだ先輩がいっぱいいるんですよ。自分の努力が足りないなと感じる仕事もたくさんあって、まだまだ学ぶことも多いです。



――何歳まで続けたいという想いはあるのでしょうか?



【山寺宏一】死ぬまでやりたいですね。体調はつねに管理しないといけないし、いいパフォーマンスをしたいので、あんまりせかせかやるのもよくないから、いいペースでやっていって、少しずつなくなるのはいいかもしれないですね。5年後、10年後はどうなっているかわからないですけど、やれるだけやっていきたいです。もう60歳ですけど、たまにオレ若造だなって思う時ありますから。精神的にもっと大人になりたかった。なんで若手の活躍に嫉妬するんだって、自分にびっくりですよ(笑)。



(取材・文/鴇田 崇)
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