小林聡美&松重豊、俳優の仕事は「奇跡だらけ」 映画『ツユクサ』で共演

小林聡美&松重豊、俳優の仕事は「奇跡だらけ」 映画『ツユクサ』で共演

 歳を重ねるたびにどんどん魅力的になっていく人がいる――『かもめ食堂』『めがね』でその自然体な演技に女性たちから絶大な支持を得てきた小林聡美。『孤独のグルメ』で主演を務め、ドラマ・映画に引っ張りだこの松重豊。映画『ツユクサ』(公開中)での共演は「奇跡以外の何ものでもない」と語っている。そんな二人に聞いた、素敵に歳を重ねる秘訣とは?



【動画】本編冒頭の隕石衝突シーン解禁



――『ツユクサ』は、映画『愛を乞うひと』などで知られる平山秀幸監督の作品ですね。隕石が人間に当たる確率は一億分の一。そのありえない出来事に遭遇した主人公・五十嵐芙美(いがらし・ふみ)に訪れる小さな奇跡の物語――というイントロダクションと、小林さんが飛び上がっているファーストルックに接して、隕石? 飛んでる? どういうお話? と興味が湧きました。



【小林】私も脚本を読ませていただいて、はじめちょっと不思議なお話だなと思ったんです。何げない日常の中に「断酒会」「隕石」といったフレーズが出てきて、恋愛もあって、芙美の勤め先の友人たちにもそれぞれ事情があって…。いろいろな要素がちりばめられた、妙な味わいのある、あったかい映画になったと思います。



【松重】僕が客として映画に何を求めているかというと、単純に誰かの日常を覗き見たい、それだけだったりすると思うんです。『ツユクサ』は、まさにそういう映画になっていると思います。この映画の登場人物たちを探したらいないんだけど、でもいそうな人たち。その人たちの日常を覗いてる感覚になって、見終わった後に、やっぱりいい映画だったなと思える。映画なんだから、絶対いないというのは頭の片隅ではわかっているんだけど、会ってみたいな、会えるんじゃないかなと思える、そういうワクワク感が映画を観た時の豊かさですね。



――隕石にぶつかるという奇跡的な出来事から始まる本作ですが、そういう小さな奇跡にぶつかった経験はありますか?



【小林】いろいろ、なんだかもう奇跡だらけな感じがします、大人になってみると。このお仕事をしていること自体も奇跡ですし、人との出会いもそうですよね。あの時、あの作品をやっていなかったら、あの人と出会っていなかったら、今の自分はいないでしょう。そういった劇的な奇跡だけでなく、最近は毎日、朝起きることも奇跡のような気がします。日常の細かいことをちゃんと味わえる年齢になってきた、ということなんですかね(笑)。



【松重】僕は、ある奇跡が起きて、男の子と女の子の心と体が入れ替わる、という映画(※)を観て、スクリーンの中にいた女の子とまさか40年ちかく経って、スクリーンの中で恋愛するって、奇跡以外の何ものでもない。



※大林宣彦監督が広島・尾道を舞台に身体が入れ替わってしまった男女の中学生を描いた青春映画『転校生』のこと。尾美としのりと小林聡美が主演を務めた。



【小林】(笑)。その映画のことで言えば、時を経て、「あの映画、観ました」「良い映画でした。大好きです」といったお言葉を、まさかと思うような方々からいただくことがあって、「これは奇跡だ」と思ったことがありました。



【松重】そうなんだよね。お仕事をいただけることがまず奇跡ですし、向こう側の人だと思っていた方と一緒に仕事する奇跡も起きるし、コロナ禍で、いろんな企画が浮かんでは消えていく中で、この映画が何とか公開にまでこぎつけられたのも奇跡。何が起こるかわからない、奇跡を日々感じていますね。



■小林聡美の「透明感」について松重豊の考察



――松重さんは、情報解禁の時に、小林さんについて「透明感あふれる知的な存在感が圧倒的で、そこにひかれていく男を演じることに、微塵も演技が入る余地はありませんでした」とコメントされていましたね。



【松重】本人を横にして「透明感」というのは、なんだか気恥ずかしいのですが、やはり俳優という職業の人間は、本来どういう人なのか、普段どういう生活をしているのか、見えない方が豊かな存在になれると思うんですね。



僕は本当に若い頃から小林さんのファンですので、出演されている作品も観てきましたし、執筆された本も拝読してきましたが、それでもなお、本当はどういう人なんだろう、と心ひかれてならないんです。



しかも、カメラの前では、その身に架空の人物をありありと存在させるので、こちらも自然に心と体が動いてしまう。自分を透明にして登場人物を宿らせる小林聡美さんという俳優のすごさ、不思議さが本当に魅力的だと思いました。



【小林】実態がよくわからない(笑)。



【松重】実態がわからない、と言われるのはどうですか?



【小林】自分でも実態がよくわからないです。そういうものですよね。



【松重】いろいろな作品でいろんな役をやってると、自分はどういう人なのかよくわからなくなるってくるというのは、俳優あるあるの一つかもしれないですね。



――「透明感」はそっちだったんですね。歳を重ねると失われがちな「透明感」の方かと思っていました。いい意味でイメージが変わらない、というか。



【小林】私自身は何も気にしないようにしています。気にしていないですね。「変わりませんね」とおっしゃっていただけれるのは、うれしくもありますが、何も変わっていないことはないので(笑)。周りからどう思われているのか、といったことは気にしないようにしています。松重さんも一見「変わらないな」と思いますが、きっといろいろ変わってきていますよね(笑)。



【松重】その通り。(身長は)縮むし、(頭髪は)白くなるし、(肌は)パサパサになる(笑)。



――そういうこともあるかもしれませんが、お二人には素敵に歳を重ねる秘訣を聞きたいと思っていました。どう歳を重ねていきたいですか?



【松重】この映画のタイトルになっているツユクサ(露草)は、どこにでも生えている植物です。でもこの映画のお話をいただいて、初めて近所の公園に数ヶ所、群生していることを知りました。よく散歩をしている公園なんですけど、今まで全然気づいていなかったことに気づいた。年齢を重ねるにつれ、なんでも知っていると思い込みがちになるんですよね。あれ? もしかしたらちゃんと知らないかもしれない、何か自分にとって大きな奇跡を起こす可能性があるものを見過ごしているかもしれない、ということに気づきながら、歳を重ねていきたいです。



【小林】確かに、日常の中での小さな気づきは、大切にしたいですね。気づきってとても豊かなこと。それから他人のアドバイスも貴重だけれど、やはり自分が面白いと思うのは何か、自分は今、どうしたいのか、といったことを大事にしていきたいです。自分が素敵に歳を重ねていこう、と思って、毎日を過ごしていれば、それだけで十分、素敵なのではないかと思います。
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