西島秀俊、時間がたっぷりあった2、30代は映画館通い「仕事がなくても映画に関われれば幸せだった」

西島秀俊、時間がたっぷりあった2、30代は映画館通い「仕事がなくても映画に関われれば幸せだった」

 今月公開された『シン・ウルトラマン』で、地球上に出現した巨大不明生物の対策として設立された『禍威獣(カイジュウ)特設対策室』の班長を演じた西島秀俊(51)。今年は、昨年公開され、主演を務めた『ドライブ・マイ・カー』が第94回米アカデミー賞の国際長編映画賞を授賞したほか、第45回日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞を初受賞するなど世間の大きな注目を集めた。日本を代表する俳優として長年キャリアを築いてきた彼に、これまでのキャリアのこと、仕事がなかった時期のこと、今後のことを聞いた。



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■勧善懲悪ではない『ウルトラマン』、幼少期は“怪獣”含む両者に思い入れがあった



――本作は『ウルトラマン』シリーズのファンである庵野秀明さんと数多くの特撮作品に携わってきた樋口真嗣監督が数々の作品に続きタッグを組み、“未だ誰も見たことのないウルトラマン”をテーマに作られた作品ですが、樋口監督とご一緒してみていかがでしたか。



【西島秀俊】 現場での樋口監督の立ち振る舞いを見ていると、誰よりも特撮作品を愛していることが伝わってきました。本作には日本でトップクラスの特撮愛と知識を持った方々が集結していますが、膨大な知識と経験値のある樋口監督が現場で指揮を執っていたからこそすばらしい作品になったと思います。



――「ウルトラマン」は西島さんにとってどのような存在でしたか。



【西島秀俊】 僕が子どもの頃は特撮ヒーロー番組がたくさん放送されていて、『ウルトラマン』はとくに好きで、怪獣カードを集めていました。ウルトラマンごっこも流行っていたのですが、僕はTシャツの襟を頭の上まで持っていって、怪獣ジャミラの真似をすることが多かった気がします(笑)。



――怪獣が好きだったんですか?



【西島秀俊】 どちらも好きでしたね。善と悪をハッキリと分けて描くことの多いヒーロー作品の中で、ウルトラマンはそういった描き方をしていかなったので、ウルトラマンも怪獣もどちらも大好きで、どちらも同じように思い入れがありますね。当時ウルトラマンを制作していた方々が、明確な意思を持って作ってらっしゃったのではないかなと、そんな風に思います。



――禍威獣特設対策室(通称:禍特対)の専従班班長である田村君男という役柄をどのように捉えて演じられましたか?



【西島秀俊】 田村は現場監督というポジションなので、巨大生物の禍威獣が現れた現場に実際に行って、さまざまな事態を対処していくのですが、“目的のために手段を選ばないということを絶対にしない”というのが彼を演じるうえでの軸になっていました。生身の人間が命をかけて任務を遂行する姿を見続けてきた人だからこその判断というか。そこは僕の中で大事にしていた部分です。



――現場の雰囲気はいかがでしたか?



【西島秀俊】 スタッフさんも含め、全員が子どものようにキラキラとした瞳で取り組んでいたのが印象的な現場でした。主演の斎藤工さんはじめ禍特対のメンバーを演じた長澤まさみさん、有岡大貴さん、早見あかりさんも心から現場を楽しんでいたと思います。たとえば、禍特対のメンバーが未知の出来事や生物に遭遇したときに、驚きつつも前向きに立ち向かっていく姿は、演じている俳優のみなさんそれぞれの本来の性格が色濃く反映されているように感じました。本作にかける思いを共有しながら撮影できて良かったです。



――西島さんの中で一番テンションが上がったポイントを教えていただけますか。



【西島秀俊】 たくさんありますが、やはり一番は自衛隊の方々が全面協力してくださったこと。以前『空母いぶき』(2019年)という映画で空自と海自の方々とは撮影を通して交流させていただいたのですが、陸自の方とは今回初めてご一緒したんですね。みなさんとお話しする中でそれぞれの思いに触れられたことが興味深かったです。



■観てくださる方のことを考えながら作品に参加したほうが、結果がうまくいく気がする



――30年以上俳優を続けてこられた中で、お仕事に対する意識の変化はこれまでにありましたか。



【西島秀俊】 昔は“こういう作品をやりたい”といった、自分が中心の理想を考えることが多かったんですが、途中から“こういう作品があったら観客のみなさんが喜んでくれるかな”と想像しながらお仕事をするようになったことが一番大きな変化ですね。自分のことよりも観てくださる方のことを考えながら作品に参加したほうが、結果がうまくいくような気がします。なので、これからも“作品を楽しんでもらいたい”という気持ちを大事に続けられたらと思っています。



――今年は『ドライブ・マイ・カー』が第94回米アカデミー賞の国際長編映画賞を受賞しましたが、授賞式の会場でベネディクト・カンバーバッチさんやアンソニー・ホプキンスさんとお写真を撮るなど世界的に活躍する方々との交流もあったと伺いました。改めて、このときの心境をお聞かせいただけますか。



【西島秀俊】 もっと緊張すると思っていたのですが、意外としませんでした(笑)。授賞式の会場には世界各国の映画の作り手が集まっていたので、同じ映画人としてお互いの作品を称え合うといったことが当たり前のように行われていたんです。僕自身も有名な監督や俳優から『あの作品よかったよ』とか『素晴らしかった』と言って頂いて、それに対してこちらも作品の感想の言葉を述べるといったやりとりをしました。素晴らしい方々とフラットに語り合えるような場だったので、とても居心地が良かったです。



――幅広く活躍されていますが、俳優デビューした当時、現在のご自身の姿を想像されていましたか。



【西島秀俊】 いえいえ。当時はウルトラマンの映画に自分が出るなんてことは想像もしてなかったです。過去に仕事がない日が長く続いた時期もあったので、20代、30代で俳優として経験していてもおかしくないようなことを実はまだ経験してなかったりするんです。いまも常に新しい挑戦ばかりですし、『シン・ウルトラマン』というビッグプロジェクトに参加できると知ったときは夢のようでした。



――お仕事が少なかった時期をどうやって乗り越えられたのでしょうか。



【西島秀俊】 “映画に関わっていられるなら生きていけるし幸せだ”という気持ちが根底にあったのが大きかったように思います。でも、あの時期があったからこそ、いまの僕がいるとも思うんですよね。



――と、言いますと?



【西島秀俊】 時間がたっぷりあったので、毎日のように映画館に通っていたんですよね。いま振り返ると貴重な経験だったなぁと。いまは配信でさまざまな作品を観ることができますが、当時は映画館でしか観られない映画がたくさんあって、世界中の作品を片っ端から観たという経験は何ものにも代え難いです。



――ちなみに最近は映画館で何かご覧になりましたか?



【西島秀俊】 3月に新宿シネマカリテでロベール・ブレッソン監督の『湖のランスロ』と『たぶん悪魔が』を観ました。2本とも“どうやってこの映画を作ったのだろうか”と思うようなおもしろい作品でした。『シン・ウルトラマン』も、絶対に時間を作って観に行きたいと思います。



――『シン・ウルトラマン』も迫力の映像と音響が楽しめる映画館で観ていただきたい作品ですよね。



【西島秀俊】 僕自身、大きなスクリーンと良い音響で観て圧倒されたので、ぜひ劇場で観ていただきたいです。特撮のプロが集まって作った作品ですから、ケタ違いと言えるほど完成度が高いです。大人も子どもも楽しめる内容になっていますし、テーマのひとつとして“人間”というものを真正面から描いているので、観終わったあとに何かを感じていただけたらうれしいですね。



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『シン・ウルトラマン』

出演:斎藤 工、長澤まさみ、有岡大貴、早見あかり、田中哲司/西島秀俊 

山本耕史、岩松 了、嶋田久作、益岡 徹、長塚圭史、山崎 一、和田聰宏 



企画・脚本:庵野秀明 

監督:樋口真嗣 

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