小田和正8年ぶりのアルバム 揺るぎない強さと圧倒的な包容力に満ちた『early summer 2022』

小田和正8年ぶりのアルバム 揺るぎない強さと圧倒的な包容力に満ちた『early summer 2022』

 小田和正が6月3日、約3年ぶりとなる全国アリーナツアー『Kazumasa Oda Tour 2022 「こんど、君と」』をスタートさせた。ファイナルとなる11月の横浜アリーナ公演まで、約5ヶ月をかけて全国16ヶ所(計34公演)を廻る。アリーナツアーの開催は、国内アーティスト史上最年長ということでも話題になったが、このニュースを耳にして、得も言われぬ安堵感を覚えた人も多かったのではないか。それは、これまで先駆者として道を切り開いてきた小田が、ついに動き始めるという喜び、そして長引くコロナ禍で充満した閉塞感を、風が吹き抜けるようにさっと流してくれるのではないかという、祈りにも似た思いだ。透明感ある清々しい歌声には、そう思わせてくれる、揺るぎのない強さが宿っている。



■8年ぶりのアルバムを携え待っているファンに会いに行く



 ツアー開始に続き、6月15日には10枚目のオリジナルアルバム『early summer 2022』もリリース。なんと前作の『小田日和』(2014年)が発売されたのは今から8年前のこと。その年は、ディズニーアニメーション『アナと雪の女王』が一大旋風を巻き起こし、東京オリンピックに向け国立競技場が解体されている。そう聞くと一昔前のことのようだが、久々のカムバックといった懐かしさを感じさせないのは、その間も要所要所で小田が、実にいいタイミングで、“歌”というメッセージを発信し続けてきたからにほかならない。



 本アルバムに収録されているのは計9曲。最近の作品としては、NHKドラマ『正直不動産』(6月7日最終回)の主題歌「so far so good」が記憶に新しい。たたりでウソがつけなくなった元ヤリ手営業マンの奮闘を描いたコメディードラマなのだが、回を追うごとに感動の輪が広がり、幅広い層の共感を集めていった。そのドラマ終盤の清涼感を増幅させているのが、エンディングで流れる同曲であるといっても過言ではないだろう。



 また、20年以上にわたって小田和正の楽曲を起用している明治安田生命の企業CMには、昨年7月より「風を待って」が起用されている。初夏の風に包まれているような心地よさと安らぎを感じさせる同曲には、根本要(スターダスト・レビュー)、和田唱(TRICERATOPS)、JUJU、松たか子、大橋卓弥(スキマスイッチ)、矢井田瞳、熊木杏里、水野良樹(いきものがかり)らがコーラスで参加して彩りを与えている。



 さらにさかのぼって昨年4月には、放送開始60年を迎えたNHK『みんなのうた』の記念ソングとして、「こんど、君と」が提供されている。当時の楽曲コメントで小田は、「『みんなのうた』60年に向けた思いと、コロナに対する気持ちという、色合いの違う二つの内容をいかに紡いでいくか悩みました」と葛藤した気持ちを明かしている。そうやって生まれた同曲が、今回のツアータイトルに冠されていることを考えると、この歌詞に込められた思いがいかに切実なものであったかが伝わってくる。



 上記のようなコロナ禍で制作された楽曲に加え、ジャズに魅せられた高校生たちの青春を描いた映画『坂道のアポロン』の主題歌「坂道を上って」(18年3月公開)、人気ドラマシリーズ『遺留捜査』主題歌「小さな風景」(第4シーズン)、TBS系日曜劇場『ブラックペアン』主題歌「この道を」(18年4月クール)、フジテレビ系『めざましテレビ』テーマソング「会いに行く」(18年4月~1年)といったタイアップ曲も収録されている。



■あの日の勇敢な姿がよみがえる ファン待望の「この日のこと」も収録



 ドラマや映画の主題歌から番組テーマソング、CM曲…、収録されたラインナップを見ていくと、タイアップの幅広さに驚かされる。普遍的で生命力にあふれる歌詞が、シンプルだが力強い旋律にのり、涼やかな声で歌われたときの圧倒的な包容力は、いつの時代にも必要とされているからなのだということに、改めて気づかされる。



 そのほか、経済ドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け』(テレビ東京系)のエンディングテーマとしてこの6月よりオンエアがスタートした、最新作「ナカマ」も収録されている。この曲について小田は「団体で戦うというのはどういうことか。見えないところで懸命に頑張る仲間がいてくれるからそこへたどり着ける。自分の現場でもそんな人たちが大勢います。少しでも番組の役に立つことが出来れば嬉しいです」と語っている。前出の「こんど、君と」がファンに向けて歌われたものであるのなら、この「ナカマ」は周囲のスタッフに向けて歌われたものなのかもしれない。そういう意味で、この2作は対になった作品なのかもしれない。そんな小田の思いに寄り添うように、佐藤竹善(SING LIKE TALKING)と松たか子の見事なコーラスワークが音に厚みを与えている。



 そしてもう1曲、忘れられない歌が本作には収録されている。それは、今や小田のライフワークとなった音楽特番『クリスマスの約束』(TBS系)の放送スタート時に書き下ろされた「この日のこと」だ。当時、小田と親交の深いアーティストや、若手アーティストらが加わり、小田を含めて総勢21組がボーカルで参加。第1回放送(01年)で番組の最後に、レコーディング風景の映像と共にオンエアされた、番組ファンにとって思い出深い楽曲である。今作では小田のソロが収録されているが、ラストに鳴り響く観客の拍手を聴いてそのシーンが不意によみがえってきた。



 新たな扉を開いた小田和正のあの日の勇敢な姿は、今も脳裏に焼き付いている。本アルバムを携え、「もう少し先へ行ってみよう」と歩み出した姿に、そのまま重なってみえる。



■作品情報

小田和正『early summer 2022』

発売日:2022年6月15日(水)発売

価格:3300円(税込)

【収録曲】

1. 風を待って (明治安田生命企業CM曲/テレビ朝日系連続ドラマ「遺留捜査」主題歌)

2. 坂道を上って(映画「坂道のアポロン」主題歌)

3. 小さな風景 (テレビ朝日系連続ドラマ「遺留捜査」主題歌)

4. この道を (TBS系日曜劇場「ブラックぺアン」主題歌)

5. so far so good (NHKドラマ10「正直不動産」主題歌)

6. ナカマ (テレビ東京系「ガイアの夜明け」エンディングテーマ)

7. こんど、君と (NHK「みんなのうた60」記念ソング)

8. この日のこと (TBS音楽特番「クリスマスの約束」書き下ろし曲)

9. 会いに行く (フジテレビ系「めざましテレビ」テーマソング)
カテゴリ