50周年ユーミン、ロングランツアー63公演完走「当分引退するつもりない」宣言 アバターになっていくかも

50周年ユーミン、ロングランツアー63公演完走「当分引退するつもりない」宣言 アバターになっていくかも

 デビュー50周年を迎えたシンガー・ソングライターの松任谷由実が9日、兵庫・神戸国際会館こくさいホールで足掛け10ヶ月におよぶロングランツアー『松任谷由実コンサートツアー 2021-2022 深海の街 THE CITY IN THE DEEP SEA』のファイナル公演を開催した。2021年9月30日の初日から全63公演で約15万7000人を動員したツアーの57本目、6月25日に行われた東京国際フォーラム ホールA公演をレポートする。



【写真13点】『深海の街』ツアーで衣装でも楽しませたユーミン



■10代で発表した1stアルバム曲も…半世紀のキャリアを凝縮 



 4年ぶり通算39作目のオリジナルアルバム『深海の街』(2020年12月発売)を携えた本ツアーでは、潜水服姿で深海へと沈んでいく《私》を軸に、“闇の中に差す一筋の光”を世界観とするストーリーが紡がれた。



 冒頭、潜水艦を想起させるステージセットから、映画『海底2万マイル』でネモ船長が奏でたパイプオルガンをほうふつとさせる武部聡志(Key)の演奏が響き渡る。船長風のナポレオンジャケットにマントを羽織ったユーミンがせり上がりで姿を現すと、割れんばかりの拍手のなか、乗組員の衣装を着用したバンドメンバー、遠山哲朗(Gt)、浜崎賢太(Ba)、小田原豊(Dr)、小林香織(Sax、Fl)、今井マサキ(Cho/Gt)、佐々木詩織(Cho/Per)の演奏に乗せ、「翳りゆく部屋」「グレイススリックの肖像」で物語が始まった。



 曲間にモノローグを入れながら、シームレスに演奏。最新アルバムのオープニングを飾った「1920」「ノートルダム」、アルバム/ツアータイトル曲「深海の街」と続け、ユーミンとツアーメンバーの8人が環状8号線周辺で遊ぶフィルムを背景にした「カンナ8号線」で観客が総立ちとなる。間奏では鮮やかな赤のノースリーブのワンピースに衣装チェンジし、ポップアップで軽やかに再登場。さらに、ユーミンが最新CG技術で“デジタルヒューマン”と化した西部劇風の映像を背に繰り広げた「知らないどうし」まで、9曲ノンストップで惹きつけた。



 両手を広げ、さざなみのように広がる喝采を全身で受け止めたユーミンは、開始から45分ほどが過ぎたところで「ごあいさつが遅れましたが、きょうは来てくださって本当にありがとう! 作り始めた頃も現在も、いろいろな想いでやっています。本当にいろいろ…。あの頃の出来事、そして今の出来事、このショーにはそれらすべてを練り込めたと思っています。だからどうか、最後まで楽しんでいってください」と呼びかけ。拍手の熱量から観客の高揚感が伝わってくる。



 「あなたと 私と」ではラテンのリズムに乗せ、軽快にターンしながらワンピースの裾を翻し、上手側、下手側の観客にも手を振る。「REBORN~太陽よ止まって」では、ダンサーが踊るシルエットの映像に、ステージ上のユーミンのシルエットが融合した。



 「新しい曲と古い曲を続けてお送りします。聴いてください」と切り出すと、最新アルバム収録曲から「散りてなお」、そして、当時19歳で発表した1stアルバム『ひこうき雲』(1973年)収録曲から「雨の街を」「ひこうき雲」を胸に染み入る歌声でしっとりと歌唱。ファンは偉大な半世紀のキャリアに想いを馳せながらじっくりと聴き入った。



 バンドメンバーの美しいコーラスに続いて、トレンチコートに衣装チェンジしたユーミンが登場。場内は再び総立ちとなって手拍子を送り、雲のようなスモークが立ち込めるなか、稲光の映像を背に歌った「LATE SUMMER LAKE」では大盛り上がり。ユーミンはカメラとともにくるくると回転しながら顔を近づけ、アップの表情がそのまま大型ビジョンに映し出され、観客も笑顔になる。



 「ANNIVERSARY」ではミラーボールの光が会場に降り注ぎ、あたたかい色の光が客席へと放たれる美しいライティングでも感動を増幅させた。本編最後の「水の影」を静かに歌い終えたユーミンは、セットの階段の上からゆっくりと沈んでいき、モノローグとバンドメンバーの演奏で深い余韻を残した。



 鳴り止まぬ拍手がアンコールとなり、再びオープニングの衣装で登場すると「青い船で」を披露。メンバー紹介、スタッフの集合写真の紹介に続いて、「皆さんも今日の大事なクルーでした。ありがとうございました」と深々とおじぎし、観客に感謝を伝えた。割れんばかりの拍手に包まれるなか、1stアルバムから「空と海の輝きに向けて」を歌いあげ、「海」と「旅」の共通項がある2曲でアンコールを締めくくると「皆さんのあしたが、光と幸せに照らされますように」と願いを込め、会場を埋め尽くした観客に手を振った。



■「引退するなっていう拍手?」Wアンコールに感極まる



 熱のこもった手拍子でユーミンを呼び戻し、ダブルアンコールに突入。「なんか今日は一段と!」と盛大な拍手に感激したユーミンは、この日の朝、吉田拓郎(76)が年内で活動終了と報じられ、上の世代のコンサート引退報道も相次いでいることを意識してか、「これは引退するなっていう拍手?」と問いかけた。ファンがさらに大きな拍手で呼応すると、「まだまだいろいろな困難のなか来てくださって、本当にありがとう」と感極まった。



 新型コロナウイルスの影響で開幕が1年が延期となったロングランツアーを振り返ると、「当分、引退するつもりはないよ」ときっぱり宣言し、しんみりムードを一掃。映像演出でデジタルヒューマンと化したこともあってか「アバターになっていくかもしれないから、生身の私を、ここ数年覚えておいてくださいね」と冗談めかしつつ、現役続行宣言で万雷の拍手を浴びた。



 続けて、ツアーの核となっている最新アルバム『深海の街』の制作経緯も口にした。



 「2020年にコロナ禍に入ったとき、今までない体験したことがないくらいどん底まで落ち込んで、今までやってきたことが全部虚しく思えて無力感にさいなまれて、どうしようかと思ったんだけれど、それと同時にミュージシャン魂というか、好奇心、性(さが)というか、そんな自分を記しておきたいなと。ショックとかパニックとかも“絶対に力に変えて見せる”って思ったんです。世の中のとんでもないバイブレーションを、これは絶対に記しておくべきだと思って作ったアルバムです」



 「そのあと、またさらにいろんなことが起こって、みんなで一つの小さな船に乗って、歴史の教科書の中を旅しているよう(な気持ち)になりました。すごい時に一緒に生きていますよね。だから、一瞬一瞬を大事にしたい、そんな気持ちがすごく込められたアルバムになったと思います。そして、2020年の段階よりも今のほうがもっとリアリティーをもって受け止めていただけるはずだと思っています」とかみしめるように語った。



 未曾有の年となった2020年を記録したアルバム曲を中心に、「今まで50年間作ったたくさんの曲の中から選びに選んで、一つの物語をつづりました」とセットリストの構成を明かすと、「その物語を締めくくるナンバーを歌いたいと思います」と伝え、武部のピアノ一本で「二人のパイレーツ」を歌唱。「覚えていてね」としっとりと歌い、さまざまな死生観が込められたストーリーを完結させた。



 なお、ツアー61本目の兵庫・姫路公演が行われた7月5日、ユーミンはシングル「返事はいらない」でのデビューから50周年のアニバーサリーを迎えた。そして、9日の千秋楽後には自身のインスタグラムを更新し「これからも、走り続けます!」と改めて宣言した。



■『松任谷由実コンサートツアー 2021-2022 深海の街 THE CITY IN THE DEEP SEA』セットリスト



▼2022年6月25日公演

01. 翳りゆく部屋

02. グレイススリックの肖像

03. 1920

04. ノートルダム

05. 深海の街

06. カンナ8号線

07. ずっとそばに

08. What to do? waa woo

09. 知らないどうし

10. あなたと 私と

11. REBORN~太陽よ止まって

12. 散りてなお

13. 雨の街を

14. ひこうき雲

15. NIKE ~The goddess of victory

16. LATE SUMMER LAKE

17. Hello, my friend

18. ANNIVERSARY

19. 水の影

【アンコール】

EN1. 青い船で

EN2. 空と海の輝きに向けて

【Wアンコール】

WEN1. 二人のパイレーツ
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