新シリーズ『PUI PUI モルカー DRIVING SCHOOL』放送決定 見里朝希&小野ハナ、監督対談

新シリーズ『PUI PUI モルカー DRIVING SCHOOL』放送決定 見里朝希&小野ハナ、監督対談

 モルモットが車になった世界で巻き起こる、<モルカー>たちの友情、冒険、ハチャメチャアクション、そして癒しを描き、子どもも大人も熱狂させた『PUI PUI モルカー』(1期)の新シリーズのタイトルが発表された。全編新作の『PUI PUI モルカー DRIVING SCHOOL』(10月よりテレビ東京ほかにて放送予定)はどんな作品に? <モルカー>の生みの親である見里朝希氏と、新シリーズの監督を任された小野ハナ氏に話を聞いた。



【画像】ショートPVの場面カット



■『PUI PUI モルカー』(1期)とは?



 2021年 1月よりテレビ東京系子ども向けバラエティ番組『きんだーてれび』内にて全12話が放送された、約2分半のストップモーションアニメ(コマ撮り)。その斬新な世界観は子どもだけでなく、大人たちにも大反響。ファンアートが大量発生した。その反響は国内にとどまらず、台湾では週に32回放送されて人気爆発。米「NYタイムズ」でも注目の映像作品として報道されるなど、全世界でブームを巻き起こした。



――『PUI PUI モルカー』は見里さんにとってテレビアニメーションシリーズ初監督作品でしたね。大反響となった感想を聞かせてください。



【見里】大学生の頃から家族でモルモットを飼っていて、もし自動車がモルモットみたいにかわいい後ろ姿だったら、渋滞時のストレスもなくなるんだろうな、という発想から生まれたのが<モルカー>。当初は、モルモット好きの間で話題になってくれたら良いな、と思っていましたが、ファンアートをはじめ、制作していた頃は全く想定していなかったような反響があって、ファンや関係者の方々の愛情や熱意に驚きと感謝の日々を送っています。いつも応援してくださり、ありがとうございます。



――なぜ、こんなにも大勢の人に愛されたのだと思いますか?



【見里】最初はリアルなモルモットの見た目にしようと考えていたのですが、最終的にデフォルメして、子どもでも描きやすいようにシンプルにしたことで、すごく親しみやすかったのだと思います。



――待望の新シリーズは小野ハナさんが監督を担当されるとのことですが?



【見里】そうなんです。1期を経て、新シリーズの話が浮上する中で、2Dアニメや3DCGアニメで制作する案もありました。キャラクターの可能性を広げることを考えると、それもありだと思いましたが、個人的にはコマ撮りでやっていきたい気持ちがあって。でも、制作スケジュールの問題もあって、どうしよう、となった時に、小野さんにお願いすることにしました。小野さんは2Dアニメとコマ撮りの両方を理解されていて、かつ、エンタメ性とアート性の融合や、使い分けをした作品をさまざまな分野で作られている。<モルカー>もエンタメ性のある作品でありながら、色彩や映像の見せ方はアートらしくこだわりたい部分もあったので、方向性が似ていると感じました。



――小野さんは『PUI PUI モルカー』1期も関わってらっしゃいましたが(3・4・6話の絵コンテを担当)、新シリーズを一緒にやりたいというお話があった時、どのように感じましたか?



【小野】<モルカー>の新作が作れる!というワクワクする感じと同時に、ファンの皆さんもきっと期待しているだろうし、ここで引き受けなかったら、新シリーズの話が立ち消えになってしまうかもしれないという危機感もありました。コマ撮りでやりたいという見里さんの思い、イメージを形にするために、今引き受けるしかない!と奮い立つものがありました。



【見里】小野さんが引き受けてくださって、新しい<モルカー>が観れる!となった時は、僕が一番うれしかったかもしれません。



■モルカーの魅力「手作り感」を継承



――見里さんから小野さんにどのような引き継ぎをされたのですか?



【見里】一番はモルモットの魅力について。やっぱり<モルカー>では、本物のモルモットらしさは大事にしたいと思って。だからこそ、モルモットはどこが魅力なのか、それを伝えることに最も力を入れた気がします。例えば、下唇のプルプルしたUの字の感じとか(笑)。



【小野】とても学ばせていただきました(笑)。その後、画像検索して、たしかにプルプルだ!と。 今回、アニメーターの方たちとも魅力を共有すべく、モルモットの写真をプリントしてスタジオに貼っていました。



――1期で絵コンテ3話分を小野さんに依頼した経緯は?



【見里】もともと『PUI PUI モルカー』は15分くらいの中編アニメーションで企画していて、1人で作るつもりだったんです。それが、途中でテレビシリーズになることが決まって、1話約2分半、12話分も作らなくてはならなくなった。それでいろいろな方に声をかけて、協力を仰いだんです。そんな中、別の作品の打ち上げでたまたま小野さんとご一緒した時があって、そこで「造形と絵コンテを並行してやっているけど、時間がない」といった話をしたら…



【小野】絵コンテ、やりましょうか?ってその時は軽い気持ちでお声がけしたのを覚えています。



――コマ撮りアニメの魅力をお二人はどのように感じてらっしゃいますか?



【見里】これは、いろんな取材で話してることではあるんですけども、最大の魅力は「手作り感」だと思います。最近のCGアニメーションは技術がかなり発達して、リアルに表現できるようになってきて、あえてフレーム数を落とすことによってコマ撮りっぽく見せることもできる。実際、そういう作品が出てきて、コマ撮りはピンチになるんじゃないかと危機感を抱いていた時期もありました。逆に、コマ撮りで、リアルに再現しようと頑張りすぎると、見る人によってはCGと間違えられてしまう可能性もある。どうしたらいいか、というところで僕が考えたのは、完璧をあえて目指さず、手作り感を出すことだったんです。



 <モルカー>は、パッと見ただけで、いかにも羊毛フェルトで手作りしました、というのがわかる。手分けして撮影するため、同じキャラクターで複数体の人形を用意している場合もありますが、全部手作業なので、全く同じものは作れません。ミリ単位で顔が違うなど個体差が出てしまうんですが、それがむしろ手作り感につながって、味になる。あえて完璧を目指さなくていいことでコマ撮りらしさが表現できるというのは、すごく気が楽で、制作していて楽しいところでもあるんです。



【小野】その柔らかい“隙き”と言いますか、遊びがあるところに生身感が出るんですよね。人間でも「今日、調子悪いな」みたいな時はちょっと顔が違って見えたりするじゃないですか。人形にも個体差があるし、誰がどう動かすか、どういう光を当てるか、そういったことでも違った表情に見える。思いがけない効果が生まれるなど、生モノなところが魅力だと思います。



■大事なことは作品制作そのものを楽しむこと



――『PUI PUI モルカー DRIVING SCHOOL』を手掛けるにあたり、小野さんが気をつけたことは?



【小野】見里さんの頭の中に浮かんだ断片的なアイデアやイメージをちゃんとキャッチして、それをつなぎつつ、観る人をちゃんと楽しませるストーリーに仕上げていくことにすごく気を配りました。



【見里】今回、小野さんは僕から<モルカー>を託されて、正直に言って、本当に大変だったと思います。いろいろとプレッシャーを与えてしまっていたんだろうなって。僕は小野さん自身が作品制作そのものを楽しめなかったらどうしよう、とちょっと心配していました。



 監督が代われば、どうしたって以前とは異なるところもあると思います。でも、それによって<モルカー>に新しい刺激が加わったのは間違いなくて、僕自身、自分でやっていた時には気づくことができなかった<モルカー>の魅力に気づくことができました。僕が観た限り、<モルカー>の魅力は全く失われていないですし、さらに小野さんならではの良さもにじみ出ているところも見えたので、正直、ホッとしています。



 作品づくりにおいて、個人的に大事だと思うのは、作り手自身がそれを魅力的だと思って、納得することだと思うんです。多くの人に伝わるように中身をわかりやすくすることも大事ですけど、作家性といいますか、作者自身の欲望をありのままにさらけ出せるか、ということの方が大事なのではないか、と。自分に嘘をつかない表現をした作品こそ、作者の魅力が伝わる。だから、今回の<モルカー>で、小野さん自身が自分をさらけ出してくれたな、と思うことができました。それは小野さん自身にとってもすごく良いことなんじゃないかと思いました。



【小野】そうですね。見里さんのアイデアをただ並べただけのものを作っていても、見里さん自身が作るものには到底及ばないですし、私自身、やってて味気ないものになってしまうだろうということは最初から思っていました。だって見里さんはものすごく楽しんで作品を作っていらっしゃる方だから、まず「そこで劣ったらヤバい」と思いました。見里さんに負けないくらい、<モルカー>たちのことをかわいがって、愛して、アニメーション制作を楽しむ。それを頑張る作業でした。



 今回、私がさらけ出したのは、「モルカーってどういう風に生きてるの?」という<モルカー>の世界への探究心ですね。見里さんとのやりとりの中で、まだそこまで語らないよ、という余白みたいなのも残しながら、本作の中で描いていいラインを探りつつ、人間と暮らしているモルカーの知られざる一面を探し出す作業が楽しかったです。細かい想像をいっぱい膨らませながら、『PUI PUI モルカー』の新シリーズを作っていきました。



■出会うべくして出会った不思議な縁



――これまでにやってきたこととか、学生時代に熱中したことでもいいんですが、今に生きてるなって思うことは?



【見里】僕は大学の卒業制作に力を入れてよかったな、と思っています。もし力を入れて取り組んでなかったら、大学院に進学することもできなかったですし、『モルカー』を最初に着想したのは大学院の1年次の時だったので、『モルカー』を生み出すこともなかったかもしれません。大学の卒業制作も、大学院の修了制作も、“それまでの自分の人生を半分変えてやる”という意気込みで取り組んできたんですけど、その努力というのはちゃんと報われるんじゃないか、と思います。



【小野】私に関して言うと、大学の授業で学んだことよりも、オタク活動の中からチャンスを拾っていった感じです。好きなものを追って、そのコミュニティに参加して、いろいろ自分でやってみて、身につけていったことが今の仕事にもつながっているな、と思います。



【見里】小野さん、昔、ボーカロイドのMVを作っていましたよね?



【小野】え? はい、作っていました。



【見里】やっぱり! 僕が高校生だった頃、すこっぷ(ボカロP)さんの「ドミノ倒シ」や「指切り」がすごく好きで、よくMVを観ていたんですが、最近、MVのアニメーションを小野さんが作っていたことを知ったんです。ボーカロイドのMVを観るのが好きだったことも、美大で勉強したい、と思うきっかけの一つにつながったんじゃないか、と今では思っているのですが、仕事で出会う前から一方的に小野ハナさんのことを知っていたんだな、ということがわかってびっくりしていました。



――小野さんはご存知でしたか?



【小野】今、初めて聞きました。つながってますね! ちょっと恥ずかしさもありますが(笑)、ありがとうございます!



――お二人が出会うべくして出会った不思議な縁が明らかになったところで、インタビューの締めとして、ひと言いただけますか?



【見里】今回、小野さんが監督を務めてくださったことで、制作過程においてすでに自分でも予測しなかった<モルカー>の魅力を発見しています。そして、1期ではできなかった、視聴者の皆さんと同じ感覚で<モルカー>を観るという経験が初めてできる。新シリーズの放送を、皆さんと同じように楽しみにしています。



【小野】見里さんの世界観を「完全に再現しました」とは、到底言えないといいますか、あえて言わないでおきます。ただ、見里さんが生み出した<モルカー>とモルカーの世界観をより深めよう、より広げようという思いで、見里さんをはじめ、今回のスタッフ全員でいろいろ考えながら、慎重に、心を込めて作ってきました。ぜひ、楽しみにしていただけたらと思います。



■「見里朝希×小野ハナ Wクリエイター モル・トーク」



 『PUI PUI モルカー』原案・監督の見里氏と『PUI PUI モルカー DRIVING SCHOOL』で監督を務める小野氏の対談動画は3本構成。



Vol.1:制作決定ありがとう!編:https://youtu.be/lyONn3O5C2c

Vol.2:第1期でのお仕事編:7月22日 正午公開

Vol.3:お楽しみに!編:7月29日 正午公開



■見里朝希(みさと・ともき)プロフィール



 東京都生まれ。2018年、東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。『あたしだけをみて』(16年)や『マイリトルゴート』(18年)はSHORT SHORTS FILM FESTIVALで優秀賞・東京都知事賞をはじめ、国内外の映画祭で多数の賞を受賞。若手クリエイター対象の国際賞「Young Guns」にも選出される。21年発表の『PUI PUI モルカー』でテレビアニメシリーズ初監督を務める。



■小野ハナ(おの・はな)プロフィール



 岩手県生まれ。2014年、東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。『澱みの騒ぎ』(14年)で大藤信郎賞を受賞。ほか、『such a good place to die』(16年)、『あいたたぼっち』(16年)、『In A Mere Metamorphosis』(20年)など。当真一茂とUchuPeople合同会社を運営。アニメーションだけでなく、絵画作品を発表するなど、美術作家としても活動している。
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