渡米から5年“沈黙”貫いたピース綾部祐二、壮大なボケは不発「戻った時に僕の席があるとは思ってない」

渡米から5年“沈黙”貫いたピース綾部祐二、壮大なボケは不発「戻った時に僕の席があるとは思ってない」

 2017年に渡米して以来、5年間沈黙を守っていた綾部祐二。当時は「これまでのキャリアを捨てて挑戦するのはすごい」などの好意的な声から「成功するわけない」「どうせすぐ戻ってくる」といった批判まで、賛否両論が飛び交い大騒ぎになった。だがそれから5年の間、綾部の活躍ぶりはほとんど聞こえてこなかった。時おり芸人仲間が様子を伝えるものの、「アイツは今なにやってんだ?」というのが世間の共通認識だったように思う。そんな綾部が突如、エッセイ本を発表。現在はLAに滞在している本人を直撃した。



【動画】黒のバイクで疾走! NYスタイルで渡米計画の失敗を語る綾部祐二



■渡米時の記者会見で思わぬ反響、「又吉の芥川賞に対抗して…」との憶測にツッコミ



――渡米時にはいろいろな憶測が飛びましたが、あらためてそこに至った考えを教えてください。



【綾部祐二】僕は小学4年生の時に「芸人になりたい」と言い始めて、一時はその夢を忘れて就職したものの、20歳の時にダウンタウンさんのロケに遭遇して衝撃を受け、「やっぱり芸人になりたい」と上京しました。ありがたいことに夢は叶いましたが、「このまま進んでもあまりワクワクする結果にならなそうだ」と思ってしまったんです。当時40歳でしたけど、20歳の自分のように、日本から飛び出してみようと。ただ、それだけだったんですけどね。



――結果、大騒ぎになりました。



【綾部祐二】そうなんですよ。「レギュラー9本あって、年収いくらなのに」とかビザの話題とか。世間との温度差に驚きました。



――「相方の又吉直樹さんが芥川賞を獲ったので、それに対抗してアメリカへ行った」などの声もありました。



【綾部祐二】今思えば、そう答えておいた方が奇行すぎて面白かったですね! 芥川賞に対抗するのに渡米とか、ヤバすぎるだろ、そんなやつ(笑)。でも間違いなく大喜利としてはその回答が正解でした。そう言っておけば良かったな…。



■帰国せず“沈黙”貫いた理由は? 壮大な「5年越しのボケ」、不発に終わる…



――今回、エッセイ本『HI, HOW ARE YOU?』(KADOKAWA/7月16日発売)を発表。5年間帰国もせず、メディア出演もせず。なぜ今、エッセイだったのでしょう。



【綾部祐二】最初から3~5年は日本に戻らないと決めていたんです。狙っていたのは、英語が全然上達してないと思わせておいて、5年後に突然ペラペラと英語をしゃべりだすという、ボケ。



――どういうことですか?



【綾部祐二】例えば芸人が変なメイクをして舞台とかロケで出オチを狙っている時に、メイクの過程を先に見せるバカはいないと思うんですよね。突然だから笑えるわけじゃないですか。それと同じで、僕が何をやっているのかを見せず、突然の「英語がしゃべれる僕」という5年越しのボケをやりたかったんです。ところが、そのボケが成立しないほど英語が…。失敗しましたね。今回の本は、ボケができませんでしたという報告。半分は自分のため、半分は1人の40歳の男が急に渡米したらどうなるかというサンプルを提示するため。誤解してほしくないのは、決して僕がアメリカで何をしていたかという疑問の答え合わせではないことです。



――ちなみに現在の英語レベルは?



【綾部祐二】目指しているところを100とすると、まだ7ぐらい。意思疎通はできますが、コミュニケーションはまだまだ…。



――又吉さんには、出版の報告したんですか?



【綾部祐二】本を出したいということは相談しました。で、最初タイトルは「ヒバーナ」にしようと思ってて。でもブランクがありすぎる上に、大滑りしたらヤバいから止めました(笑)。



――アメリカではどんな生活を?



【綾部祐二】最初は語学学校へ通って英語の勉強。あと友だちといろんな所へ行ったり。去年は英語の勉強も兼ねて老人ホームでボランティアをしていました。



――失礼ですが、収入源は。



【綾部祐二】インフルエンサーとして、日本からのPR案件があったほか、アメリカの映画にエキストラ出演したり、CMに出演したり。NYは物価がめちゃくちゃ高いんですが、暮らせるだけの収入はありました。自炊するなど節約もしながら。



――Instagramを見ると、高そうな服を着てらっしゃいますが。



【綾部祐二】あれは全部日本から持って行ったんですよ(笑)。それで「ピザ大好き」とか投稿して「この人、アメリカで何やってるんだろ」と思わせるのが目的でした。



――それがネットニュースになったり、テレビで芸人さんが綾部さんの話題を出したり。正直、5年も離れていて、いまだに忘れられてないのはすごいことでは。



【綾部祐二】いや、本当にありがたいです。うちの両親はテレビや新聞が情報源なので、両親にも僕のことが伝わるのがうれしいですね。



――ところでピースを解散しないのは、やはり帰国後に日本で活躍したいから?



【綾部祐二】いや。戻った時に仕事とか僕の席があるとは思ってません。敢えて日本の芸能情報をシャットアウトしていますが、おそらく、新しい人もどんどん出てきているでしょうし…。解散しないのは単に「海外に行ったら解散」とかのルールがないからですね。だからピースとして、ふわっといられる。僕は芸能界にも、ふわっといましたから(笑)。



――日本の芸能情報を遮断する理由は?



【綾部祐二】その方が面白いからです。5年も経てば芸能界も街並みも変わる。それを全然知らないで戻ったほうが、驚きがあるじゃないですか。



――昨今は同期のキングコングさんのように、芸人さんがYouTubeやサロンを開いて活躍したり。活躍のフィールドが変わってきています。



【綾部祐二】カジ(サック)からは出演依頼をもらったので知っていますし、いい事だと思います。世界中と繋がれるコンテンツがあって、従来の芸能界とVSになる意味はどこにもない。ただ、今の子はYouTubeに憧れるんでしょうけど、僕の時代は芸能界が憧れだった。僕はやっぱり、芸能界やハリウッドと華が感じられる場所が好きです。



――お笑いにもコンプライアンスが求められるなどの変化も。例えば年末の『ガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)のタイキックが問題視されたり。



【綾部祐二】えっ!? タイキックまで…。おそらく、子どもが真似するとかそういうことですよね。でも僕は、子どもが1回テレビで見ただけで真似したいじめをすることがないように普段から教育をすることが大事だと思います。僕に子どもがいたとしたら、「テレビがバカなことやっても、映画で暴力シーンがあっても、うちの教育は負けない」って言うと思います。



■「人生は一度きりかもしれないけど、ワンチャンスではない」



――お話を聞いてあらためて、40歳にして新たな挑戦をした綾部さんから勇気をもらえます。



【綾部祐二】よく言われましたよ。「地位も仕事もお金も捨てて」とか。でも僕は逆に、皆さんが何に引っかかっているのかわからない。僕は別に怖くない。もしかしたら、単に僕がズレてるのかもしれません。過去にもビートたけしさんと初共演した際、あまりにうれしくていろいろしゃべりかけてしまったんですよ。スタッフはヒヤヒヤするし、東野(幸治)さんにも「お前、頭おかしいで」と言われ(笑)。そもそもそういうタイプなんです。



――そういう性格だと、ビッグマウスとかミーハーとか、夢を語るとバカにされるとか。日本で生きづらくなかったですか?



【綾部祐二】夢を語りづらいというのは他人を意識しすぎだと思いますよ。自意識過剰なのではないかと。SNSでもそういう人をバカにする風潮がありますけど、好きな事をやっている人を叩くのが好きな人だっているんだから仕方ない。自分が強くなろう。仲間と助け合おう。その方がよほど建設的だと考えています。



――そんな綾部さんの夢は?



【綾部祐二】一度でいいから、ハリウッドのレッドカーペットを歩くことです。ベタかもしれませんが人生は一度きりしかありません。でも、一度かもしれないけど、ワンチャンスではない。だから僕は何度も挑戦する。一番怖いのは、年をとってから何もやってなかったと気づくこと。だから、一度きりの人生を「良かったな」と思えるよう楽しみたい。この本はそんな1人の男の1サンプルです。自分の一番の理解者は僕であり、一番のファンも僕。そんなこともお伝えしている本です。



(文:衣輪晋一)
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