安生めぐみ、ポール・トーマス・アンダーソン監督作品でハリウッド映画デビューを語る

安生めぐみ、ポール・トーマス・アンダーソン監督作品でハリウッド映画デビューを語る

 今年の「第94回アカデミー賞」主要3部門にノミネートされたポール・トーマス・アンダーソン監督の映画『リコリス・ピザ』(公開中)に、日本人妻“キミコ”役で出演した安生めぐみがこのほど都内の映画館で行われたトークイベントに登壇。出演までの道のりや、オーディション、そして舞台となったサンフェルナンド・バレーについてなど、本作の舞台裏を語った。



【動画】アラナ・ハイムのインタビュー映像



 本作の舞台は1970年代のロサンゼルス、サンフェルナンド・バレー。実在の人物や出来事を背景に、アラナ(アラナ・ハイム)とゲイリー(クーパー・ホフマン)が偶然に出会ったことから、歩み寄り、すれ違っていく恋模様を描き出す。主演のアラナは、三姉妹バンド・ハイムの三女。クーパーは、フィリップ・シーモア・ホフマンの息子、クーパー・ホフマン。ショーン・ペン、トム・ウェイツ、ブラッドリー・クーパー、ベニー・サフディも出演。ポール・トーマス・アンダーソン監督がこだわり抜いたセット、小道具、ファッションをそろえ、細かな脇役に至るまで行き届いた演出が高く評価されている。



 そんな本作に登場するのが、サンフェルナンド・バレーに実在する日本食レストラン「ミカド」。その店のオーナーの2番目の妻“キミコ”を演じた安生は、昭和音楽大学短期大学部ミュージカル科の卒業公演で主役を務め特別賞を受賞。卒業後、アップスアカデミーにてアメリカの演技手法を学ぶと同時に、日本舞踊正派西川流に入門し師範名取となる。



 時代劇の舞台やテレビの現場で経験を積み、2011年に本格渡米。映画の名門である南カリフォルニア大学などの短編作品に参加。学業を続ける傍らコミックオペラ『ペンザンスの海賊』にケイト役で出演。渡米10年目にして、『リコリス・ピザ』の撮影に臨み、さらにNBCの人気ドラマ『グッドガールズ:崖っぷちの女たち』シーズン4にも出演。映画とテレビでの同年デビューを果たした。



 3.11の震災をきっかけに、「後悔しないようにやりたいことをやろう!」と長年憧れていた俳優への夢を叶えるべく一大決心し、渡米したという安生。ハリウッドに近く、映画のスタジオが立ち並び、関係者も多く住んでいるというサンフェルナンド・バレーは俳優を目指すにはうってつけの場所。ここに居を構える安生は「自然も多くて、(『リコリス・ピザ』の)映画そのままののんびりした雰囲気です」。



 短大の音楽学科や演劇クラスに通いながらウェイトレスのアルバイトをし、オーディションを受ける日々を過ごすが、なかなか芽が出ない毎日に心身ともに「つらくなることもあった」という。



 そんな中、本作のオーディションに出会う。コロナ禍のためセルフテープオーディション(指定の演技をした映像資料を送り、合否が決まる形式)だったというが、「メールに英語で該当シーンが添付されていて、それを自分なりに日本語に訳し、何度も撮って、(キャスティングディレクターに)送りました」という。アメリカへ渡り10年、努力が実り見事合格し、初めて監督のポール・トーマス・アンダーソンに会ったのは撮影当日だった。



 現場でアンダーソン監督に「めぐみには、いろんなことをやってもらいたいんだ」と声をかけられことを振り返り、「この言葉が1番うれしかった」と明かす。「私が出演するシーンはとっても短いのに、監督はいろいろなパターンの演出を考えてくれていました。実際に半日かけて演じたんですが、最後に監督から『アラナから目を離さないで演じてほしい』といわれたので、ギロッと(睨むように)演じてみたら、なにかカチッとハマった感覚がありました」という。



 完成した作品を見るまでどのパターンが使われるかわからなかったが、「長いシーンではなかったので、そのシーンが使われるかどうかも心配していました。でも初めて完成した映画を観たとき、しっかりと使ってくれていて安心したし、感激もしました」と振り返る。自分の名前がエンドクレジットに映像付きで使用されていたことも「監督からのプレゼントでした」と喜びもひとしおだ。



 撮影現場では「僕の義母は日本人なんだよ」と監督に言われ、驚いたそう。安生の役名「キミコ」は監督のパートナーであるマヤ・ルドルフの継母である日本人ジャズシンガーだった笠井紀美子さんからヒントを得ていたらしく、『リコリス・ピザ』にもエキストラ出演している。



 日本滞在中に本作の公開を迎えた安生は、公開初日(7月1日)に劇場へ足を運んだそうで「日本で見るときは、日本語字幕がどんなふうについているのか、楽しみにしていました。キワどいシーンを字幕で読んで初めてちゃんと理解した部分もあったりして、監督の挑戦を感じました」と、鑑賞を楽しんだという。



 ポール・トーマス・アンダーソン監督の作品はほぼ全て見ている、という安生が1番好きなのは「独特の愛の形が表現されていると思う」という『ファントム・スレッド』。そんな監督のファンでもあり、「私ならできるはず!」と自らを信じ、決して夢をあきらめずに俳優を目指し続けた結果、『リコリス・ピザ』というハリウッド映画で銀幕デビューを果たした安生。「日本の皆様にお届けできるような作品に出演できるよう、頑張りたい」と語り、このイベントの直後にロサンゼルスに戻っていった。
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