工藤静香、自己プロデュースし続けた35年 「おニャン子時代は自分が必要とされていないと思っていた」

工藤静香、自己プロデュースし続けた35年 「おニャン子時代は自分が必要とされていないと思っていた」

 今年活動35周年を迎えるシンガー、工藤静香(52)が7月20日、初のセルフカバーアルバム『感受』をリリースした。工藤といえば、アイドルグループ『おニャン子クラブ』に所属しながらソロデビューも果たし、多くのヒット曲を世に放っている。また、個性的な前髪や眉毛、メイク、ボディコンシャスなファッションなどでも80~90年代の女性たちをリードした。そんな彼女に、デビューからの35年を振り返ってもらった。



【動画あり】「踊り方がパパと重なる」母・工藤静香とともにノリノリで料理するKoki,



■年を経ることで“ふくよか”になる言葉を、いまの姿で表現したセルフカバーアルバム



――ソロデビュー35周年おめでとうございます。最新アルバム『感受』は、初めてのセルフカバーアルバムですが、このタイミングでリリースした理由を教えてください。



工藤静香 ファンの方たちから「昔の曲を今の声で歌ったCDがほしい」という要望をいただいたんです。「今の声で」というのは、「今の表現で」ということだと思ったので、オリジナルのバックトラックを歌い直すのではなく、アレンジも全部変えることにしたんです。



――10代、20代ではない、50代の工藤静香の解釈で……ということですね。



工藤静香 そう。特に言葉って、年を経ることで“ふくよか”になるじゃないですか。「愛してる」という言葉も、若いときは対・異性だけだったけれど、今はもっと幅広いものになっている。私だけじゃなくて、聴き手側もそうでしょ? それを表現できるものにしたかったんです。だから、昔は強く歌っていたものを優しく歌ったり、その逆もあったり。でも譜割りを変えるなど、印象が大きく変わってしまうことはしなかった。そんなことをしなくても十分変わると思ったので。



――「くちびるから媚薬」がラテンになっていたり、「MUGO・ん…色っぽい」がボサノヴァになっていたり、「千流の雫」がクラシック調になっていたり、アレンジも壮大になっていた印象ですが、工藤さん的に特に「おお!」と思った曲は?



工藤静香 だいたい全部びっくりしましたよ(笑)。中でも「千流の雫」は、あまりに素敵で初めて聴いたときに泣きました。私は音から形や色や雰囲気を感じとって、それを声に出すのだけれど、「千流の雫」は音が竜巻みたいにぐるぐる回っている感じがして、すごく気持ちよかったんです。びっくりでいったら、「Ice Rain」も、「Blue Rose」も(笑)。胸を触られる音が多くて、アレンジに泣かされました。すごく幸せでしたね。



――ライブで聴きたくなるアレンジでもありますが、7月23日(土)からスタートする『工藤静香 35th Anniversary Tour 2022』では、どのように反映されるのでしょう。



工藤静香 自分の歌を入れる前に何度泣いたかわからないぐらい感激したアルバムですし、弦の音を聴いてほしいので、カルテットを入れます。本当に感動できる音がとても多いので、楽しみにしていてほしいです。私、音フェチなので(笑)。



■中島みゆきとの出会いは“宝物” 長い付き合いながら「楽曲の感想を聞いたことはない」



――収録曲は、ファンクラブ会員から募ったリクエストを基に構成したということですが、本当にヒット曲が多いですよね。



工藤静香 そうですね。でも、ヒット曲が多いというのが悩みどころでもあったんです。リクエスト上位の曲でも年代が近いものは外したりして。だから、「FU-JI-TSU」や「メタモルフォーゼ」や「声を聴かせて」が入っていない。これだけあってもまだ選びきれないっていうのはすごく幸せなことですよね。



――その中でも、中島みゆきさんの提供曲が多いですよね。



工藤静香 今回収録した曲の中でみゆきさんが作詞、作曲してくださったのは、「激情(1996年)」と「島より(2021年)」で、あとは詞を提供していただいているものが3曲です。「声を聴かせて」も迷ったけれど、17歳の時に歌った「抱いてくれたらいいのに」を選曲しました。



――中島みゆきさんとの出会いは、工藤さんの音楽史の中でも大きなものなのでは?



工藤静香 もちろん大きいですね。宝物です。みゆきさんは私にとって、もうとにかく、ひたすらLOVEな存在なんですよ。好きすぎて、打ち合わせがうまくできないんですよね(笑)。私が見るのは良いんだけれど、みゆきさんの目に私が映っているのが耐えられない。もうずっとずっと大好きで憧れていた方なので、こんなに長くお付き合いさせていただいているのも幸せです。



――大成功したオタクですね(笑)。



工藤静香 本当にそう(笑)。本当にただのファンなので。だから完成した作品をお渡ししたこともないんです。お手紙と一緒に「できあがりました」って渡してしまうと、お返事をしなきゃならないと思ってしまうかもしれないじゃないですか。私の方から負担をかけたくないから、曲の感想も聞いたことがないんです。



■転機は23歳でリリースした「Blue Rose」 セルフプロデュースは「自分で責任を負うため」



――アルバムには15曲が収録されていますが、この中で工藤さんの転機になった曲というのは?



工藤静香 振り返って大きな転機だったのは23歳のときにリリースした「Blue Rose」ですね。偉大な後藤次利さんから離れて、セルフプロデュースをはじめた曲。あの曲調をやるには、今の場所から離れなければと思ったのですが、その責任を誰かに負わせるのは重すぎるし、自分で決めたことだったから、自分で責任を取ろうって思って“セルフプロデュース”を始めたんです。



――工藤さんは楽曲だけでなく、ヘアメイクなども含め、“工藤静香”をセルフプロデュースされてきましたよね。アイドルグループ・おニャン子クラブに所属していたときから自己表現ということは考えていらしたのですか?



工藤静香 そうですね。でもおニャン子時代は、自信がなかったんですよ。必要とされてる感じもしなかったし、私を見ている人はあまりいないと思っていたんですよね…。



――意外です。



工藤静香 おニャン子のメンバーで結成されたユニット・うしろ髪ひかれ隊もやっていたので、知名度は少しあったと思うのですが、ソロデビューが決まったときは、「おニャン子最後のソロデビュー」というのがすごく重荷だったので、「他に誰かいませんか?」って聞いたのを覚えています。うしろ髪ひかれ隊の時は髪の毛を結んでリボンをつけて、ソロのときは外す……ということをしていたのは、セルフプロデュースだったかも。



――ソロデビュー後は、工藤さんの髪型、メイク、ファッションが世の女性のトレンドになりました。



工藤静香 私自身、一生懸命背伸びしていた時期ですね。今思うと申し訳なかったです、あんな変な髪型(トサカ前髪)しちゃって。めっちゃスプレー使って、自然に優しくないですし(笑)。



――あの印象的な前髪もご自身で決められたんですか?



工藤静香 そうですね。自分でやりました。「いいな」と思うと、メイクだけじゃなく、カットもカラーも自分で。アルバム『intimate』(1991年)のジャケット写真は、自分でカットしてメイクもしました。眉毛も「嵐の素顔」(1989年5月)は極太だけど、次の「黄砂に吹かれて」(1989年9月)で細くしたり。



――「新しい自分を見せたい」という気持ちが、セルフプロデュースに繋がるんですね。35年経ってたどり着いた「自分らしさ」って何でしたか?



工藤静香 常に自分らしかったですよ。ヘアメイクに関しては自分で実験してるから、黒歴史もいっぱいあるけれど(笑)。小学5年のときに母のホームパーマ液でセルフパーマをして以降、ずっとこう。変わりたいというより、試したいんですよ。ゼロから始める初めてのことをクリエイトしていくことが大好き。それが自分らしさに繋がっているのかもしれません。



■この先の目標は「健康維持」 娘からの“ムチャぶり”も幸せな日々



――クリエイトし続ける工藤さんのこの先の目標って?



工藤静香 40周年、50周年のことはわからないけれど、個人的な目標は、健康維持かな(笑)。私は自分の体の信号に鈍感で、倒れるまで気付かないんです。人のことはよく見ているのに。いろいろなアンテナがある中で、1つ2つは自分を見てもいいんじゃないかなと思うようになって、温かいものを飲んで甘いものを食べるとか、1日5分でできそうなちょっとしたリラックスを取り入れるように心がけています。クリアにならないと、物事もうまく進まないでしょ。私、あれもこれもって考えすぎるんですよね……。せっかちな人間ではないのですが、頭の中が忙しくて。インスタで「3回息をしてリラックスしましょう」って書いたけれど、実は自分に言ってる(笑)。



――頭の中は、常にフル回転なんですね。工藤さんはお料理、絵画など趣味もクリエイティブですが、今1番楽しい趣味は?



工藤静香 この間、長女にされたムチャぶりが楽しかったですね。夕方、もうおかずはできていたのに、学校帰りに「今日はパスタが食べたい」って連絡してきて。どんなパスタが食べたいのか写真を送ってもらって、家にあるものを組み合わせて作って。そういうことが、楽しいですね。



――それもクリエイティブ(笑)。娘さんも大きくなると、友だちみたいになりますよね。



工藤静香 そう。もうずっと、15歳くらいからは友だちですね。一緒にできることも多いので、本当に楽しいです。



――一緒に趣味を楽しんだりするのですか?



工藤静香 そうですね。植物を育てたり、お料理をしたり、絵を描いたり…同じものを好きだったりするので。でも強制したことは一度もないし、お手本になっているというのも違くて。お互いが、一緒に楽しめることは楽しんでいるという感じですね。



取材・文/坂本ゆかり
カテゴリ