香取慎吾、“完璧主義”からの解放「任せてみようと思えるように」 岸井ゆきのも共感

香取慎吾、“完璧主義”からの解放「任せてみようと思えるように」 岸井ゆきのも共感

 鈍感な夫と、表では平穏を装いながら、“旦那デスノート”なるサイトで恐ろしい本音を吐きまくる妻が織りなすブラックコメディ映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』。本作で夫・田村裕次郎、妻・日和を演じているのが香取慎吾と岸井ゆきのだ。劇中、シニカルで激しいバトルを繰り広げつつ、どこか憎めない関係性を演じた香取と岸井に、共演して感じた魅力や、心にたまった不満の吐き出し方などについて聞いた。



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■事前の準備をあまりしない“香取慎吾”は、「イメージ通りの人」



――初共演のお2人ですが、ご一緒してみていかがでしたか?



岸井:初めてお会いする方って、「どんな方かな? 怖くないかな? 優しいかな?」とか想像するんですけど、そういう概念もないほどに、「あ、慎吾ちゃんだ!」みたいな(笑)。それくらいずっとテレビで観てきた方ですし、実際お会いしても想像通りの香取慎吾さんでした。



香取:そうです。みんなが知っている慎吾ちゃんっていうね(笑)。



岸井:初めてお会いしたときに「台本はあまり読まない」とおっしゃって。「“香取慎吾”ってすごいな」って思いました(笑)。でもそれがパフォーマンスじゃないというか、とても正直に自然体だったので、この取材でも久しぶりにお会いしたのですが「久しぶりだっけ?」みたいな感じで接してくださって、とても居心地がいいなと思っていました。



香取:僕は(岸井さんを)素敵な俳優さんだなと思って気になっていたので、共演すると聞いてびっくりしたし、うれしかったですね。でも結構ピリつく関係性だったので、撮影の合間にお話をさせてもらいつつも、どこかブレーキをかけている自分がいて。もうちょっと温かくて柔らかい作品でご一緒したかったですね。



――香取さんは岸井さんのどんな部分が気になっていたのですか?



香取:特定の作品でというよりも、僕が観る作品にたくさん出ていて、刷り込まれていったような感じですね。



――お2人は、身長差が33センチもあるんですよね。



香取:身長、そんなに違ってたっけ? 全然気にしていなかったな。



岸井:私もそこはあまり気になりませんでした。でも裕次郎が筋トレするシーンは本当に重いウェイトを持ち上げていたのでびっくりしました。



香取:市井(昌秀)監督が「重いのを持ち上げて」って言うんですよ。軽いのでも変わらないのに…と思いながらも、言われた通りものすごく重いダンベルでトレーニングをしました。



――裕次郎はマッチョでしたよね、筋トレなど、身体作りをして臨んだのですか?



香取:何にもしてないです。普段もトレーニングとかしないです。疲れるの嫌いだから(笑)。



岸井:えー? 本当に何もやっていなかったんですか?



香取:まったくしてないです。あまり事前の準備とかしないんで(笑)。



岸井:さすが“慎吾ちゃん”!(笑)



■カメラの前で極限まで格好つけないというチャレンジ



――かなり屈折した夫婦を演じましたが、それぞれのキャラクターはどのように映っていたのでしょうか?



香取:裕次郎はダメなやつなんですけど、取材とかで話をするたびにそう言いまくっていたので、ちょっとセーブした方がいいのかなと思い始めているんです。



岸井:(笑)。たしかに、お互い問題がありますよね。日和も、思っているならネットに吐き出さずに直接裕次郎に言えばいいのに…と思います。我慢しているからストレスがたまるんですよね。裕次郎は口癖みたいに「いい意味で…」というんですが、あれは嫌ですね。イラっときますよね(笑)。



香取:くる! そういえば撮影中、あるシーンで市井監督が「いい意味で…」って使ったんだよね。そのとき2人で目を合わせて「いま “いい意味で”って言いましたよね」って突っ込んだんです。そうしたら監督は焦っていましたけれどね。もともと市井監督の実体験が台本に盛り込まれている話なので、裕次郎をダメ出しすればするほど、監督のことをダメだって言っているみたいになっちゃうんですよね。



――本作で挑戦だなと思ったことは?



岸井:ワイヤーアクションですね! 大変でした。ご覧になったみなさんは「この映画のどこで?」と思うかもしれませんが、実はやっているんですよ(笑)。



香取:なかなか見どころだよね。僕は挑戦ではないかもしれませんが、今回のような格好悪い役でも、どこかカメラの前だと格好つけてしまうんですよね。でも今回は、極限までなくそうという努力はしました。



――どういったことを工夫したのでしょうか?



香取:たとえば歩いているときに、いい感じに足が絡まってコケないかなとか、スマホをポケットから出すときに、引っかかってうまく出ないようにならないかなとか、そういう部分を意識していました。



――ご自身と役の共通点はありましたか?



香取:気持ちをうまく吐き出せなかったりして、怒ったり涙したりというのは結構自分に近い部分があるのかなと思っていました。泣くようなことはないのですが、いざそういう風になると我慢しきれなくなってしまうところも似ているかもしれません。



岸井:私はSNSに悪口を書いたりはしませんが、ため込んじゃうところはわかります。2人は最後爆発してぶつかり合いますが、私は出口が見つからないタイプですね(笑)。



――ため込みすぎてしまったときはどうするのですか?



岸井:好きな映画を観ます。映画の主人公が劇中で問題を解決していくことで、私もすっきりするんです。でも、実際には自分の問題は何の解決していないのですが、そうやって発散しています。



――日和のようにSNSで吐き出してみたいという思いを持つことは?



岸井:ないですね、ありますか?



香取:ないない。



岸井:共有したいわけじゃないんですよね。だから出口がなくなっちゃうんですけど(笑)。



――誰かに相談するという選択肢もないのですか?



岸井:悩んでいる最中は、誰にも言わないですね。何か結論が出たり、解決したりしないと友人とかにも話せません。



香取:それもつらいね。



岸井:つらいですね。でも、自分の悩みを人に相談しても、なんか違うなと思っちゃうんですよね。でも夫婦だったら、そこは話し合いをするのかもしれませんね。私はまだ結婚もしていないのでわからないですが。





■長く芸能活動を続けるうえで変わらないこと、変わったこと



――裕次郎と日和はいろいろなことがあって関係性も変化していきますが、お2人も芸能生活を経て変わったなと思う部分と、ここは変わっていないなと感じるところはありますか?



岸井:無邪気なところは変わっていないですね。舞台とかやっていると、カンパニーの空気って大切じゃないですか。ついイタズラしたくなっちゃうんです(笑)。悪ふざけとかちょっとしたイタズラで雰囲気を和ませることも大切だと思っているので、これからも変わらず続けていきたいなと思っています。



香取:歌やお芝居、絵を描くことや、バラエティーなど…。これまでいろいろなことをやらせてもらってきましたが、これからも変わらず、興味があることはやっていきたいです。変わったところは、昔はすべて自分が納得するまでやっていたのですが、最近はちょっと違和感があっても、相手が言っていることに思いや熱意があったら、任せてみようという風になりました。客観的な考えに乗っかるのもおもしろいなと思うようになってきましたね。



――大人になってきたということなのでしょうか?



香取:柔らかくなったのかもしれませんね。以前は完璧にミスのないように…という気持ちが強かったのですが、ミスが起きても何とかなるなって思えるようになったのかもしれません。



――何かきっかけがあったのですか?



香取:年齢もあるのかな。昔は周りが自分より年上の人ばかりだったので、負けたくないって思いも強くて。でも、気づいたら自分より若いスタッフが増えていて、そのときちょっと強い意見などを言ってもらえるとうれしいと思うようになってきたんです。



岸井:私もそうなっていきたいですね。頑固な部分があるので、そこを解きほぐしていけるように変わっていきたいですね。



香取:僕は芝居以外のお仕事もあるから10年、20年同じスタッフさんと関わることも多いけど、俳優さんは数ヶ月とかで現場が変わるから、信頼関係を築くのも、修正かけるのも大変そう。



――相手を思う気持ちが大切だと痛感する物語でしたが、お2人がひとりの人間として大切にしていることは?



香取:やっぱり思いやりじゃないですか。自分ひとりでここまでくることができたなんて思わないし、応援してくださる人もそうですが、スタッフさんなどみなさんのおかげで、いま立つことができている。そういう人たちへの感謝や思いやりは大切だと思う。それをおろそかにすると裕次郎になっちゃうから(笑)。



岸井:この仕事が好きで、ここに立っているという気持ちですかね。どんなに大変でもそれだけは見失わないようにしたいです。





取材・文/磯部正和

写真/MitsuruYamazaki
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