「診察台がギロチンのようだった」歯医者と関係性を築く難しさ、摂食障害により20代で入れ歯になった女性の孤独感

「診察台がギロチンのようだった」歯医者と関係性を築く難しさ、摂食障害により20代で入れ歯になった女性の孤独感

 18歳で過食症を発症し、嘔吐を繰り返して胃酸で歯が溶け、28歳にしてほとんどの歯を失い、入れ歯になったというろぺさん。うつ病やパニック障害も患い、治療中に気を失ったり、予約した時間までに向かうことができず、何度もかかりつけの歯医者さんを変更したりと関係性が上手く築けずにいたという。入れ歯にする治療方針に従ったが、自分がもう少し調べられていたら、家族や第三者の意見を聞けていたら、違う未来になったかもしれない…。SNSで当時の体験を発信しているが、その“悔しさ”が現在の活動の原動力になっているという。



【動画】歯がない姿は家族にも見られたくない…入れ歯女子のモーニングルーティン



■誰かの役に立っていると分かり「自分自身も報われた」



――「入れ歯女子のモーニングルーティーン」など、YouTubeで入れ歯になる経緯も含めて動画にしていますが、なぜ発信しようと思われたのでしょうか。



【ろぺ】一言で言うと「悔しかったから」という思いが強くて。自分の歯がなくなることは苦しかったけど、いくら悔やんでも失ったものは戻ってこない。でも、この悔しくて苦しかった経験を無駄にしたくなくて「何かに使えないか?」と思った時に、ネット上で発信することを思いつきました。最初はSNSに投稿していて、その後YouTubeを始めました。やっぱり自分の口で話すとすごく伝わるので、自分の経験を全部動画にして残しておこうかなって。残しておけば誰かに見てもらえて、誰かの役に立つかもしれないから。



――動画には、たくさんのコメントが寄せられていますね。



【ろぺ】はい。コメントを見てなおさら「配信して良かったな」と思いました。私の動画が誰かにとって何かのきっかけになったり、誰かの役に立てているとわかって、自分自身も報われた感覚があります。



――病気については、10代の頃に過食症になったのが最初ですか?



【ろぺ】はい。過食症が始まったのは18歳の頃で、20代が一番孤独で苦しかったです。当時は今みたいにSNSもなかったし、周りに友達も、相談できる人もいなくて。何かを調べる時も、今みたいにネットで調べられなかったから、毎日本屋に行ってました。



――本屋で、どういう本を読みましたか?



【ろぺ】摂食障害の本を読んで「過食症ってどういう病気で、どうやったら治るのか」という情報を探したんですけど……当時は摂食障害の本が少なくて、いい情報は得られなかったです。もう自分で行動するしかなくて、とりあえず病院に行ってみたり、自助グループに行ってみたんですよね。今なら足を運ばなくても、ネットで同じ病気の人とつながったり情報交換したりできますけど、当時はそれができなかったから。



――実際に行動されて、何か光は見えましたか?



【ろぺ】光は全く見い出せなくて。病院の先生と話しても何の解決にもならなかったです。今だから思うんですけど、結局話を聞いて欲しかったのは先生じゃなかったんです。自分と同じ状況で苦しんでいる人たちとの会話の方が私にとっては大事で。病気を経験もしたことない先生のかけてくれる言葉なんて、心のどこにも響かなくて、孤独感が全然癒えなかったんです。まだ自助グループの方が私にとっては支えになりましたね。



――自助グループでは、同じ症状を持たれる方と交流があったのですか?



【ろぺ】はい。そこで出会いがありました。でも体調がどんどん悪化してきちゃって、その自助グループにも行けなくなったんです。そうなってからSNSを始めて、結局そのSNSで救われました。ただ自助グループに足を運んだことも全然無駄ではなかった。実際に人と会って話すという感覚はSNSにはないものだから、それはそれで貴重な経験だったと思います。



■上手く築けなかった歯医者との関係性「診察台がギロチン台のような感覚だった」



――ろぺさんは過食症になって、食べたものを嘔吐して歯が悪くなったのですか?



【ろぺ】そうです。戻すときの胃酸で歯が溶けちゃったのも原因の一つです。また一日中ずっと口に食べ物を入れていて、それが何年も続いているので、どう考えても歯が悪くなっちゃうんですよね。



――歯を悪くして歯医者さんに行くこともあったと思いますが、ろぺさんにとって歯医者さんはどういう場所でしたか?



【ろぺ】私にとって歯医者はもう地獄でしかなくて。ただただ恐怖しかなかったです。診察台がギロチン台かのような感覚で。当時パニックがめちゃめちゃひどくて。歯医者さんで順番を待っている時にパニックの発作を起こして倒れたりしてたんで、それがトラウマになってたんですよね。歯医者に行くと考えただけでも震えが出るし、歯医者さんに到着しても怖すぎて中に入れないんですよ。



――歯医者さんを何軒も変えたと仰ってましたよね。



【ろぺ】そうなんです。治療の途中で具合が悪くなったり、予約しても「やっぱり行けない」ということがかなりあったんです。そのうち「もう来ないでくれ」と言われて、また別のところに通うということもありました。あとは、病気のことを話したところで理解をしてもらえなかったんですね。当時心の病気に理解のある歯医者さんって本当にいなくて。そもそも病気のことって話しづらいんですね。もっと病気のことを話せていたら、そんなに歯医者を変える必要もなかったと思うけど……。



――最終的には、ろぺさんの病気のことを分かってくれる歯医者さんに出会ったわけですよね。これはご自身で調べて見つけたのですか?



【ろぺ】たまたまたどり着いた感じですね。心の病気に理解がある歯医者さんを調べても、遠すぎていけないんですよ。私に体力が全然なかったから、遠い場所に行けなくて。近くで、とりあえず痛みをとってくれる歯医者に行くしかなかった。それで、たまたま良い先生にたどり着けました。その先生は話しやすくて、私の話をちゃんと聞いてくれました。



――歯医者を変えていく中で、「まだ入れ歯をする必要はなかったんじゃない」と指摘されたこともあったそうですが、その時の心境はいかがでしたか?



【ろぺ】私はそれ(入れ歯)しかないと思って入れ歯にしたんですよ。なのに、新しく行った歯医者で「これはまだ大丈夫だよ。まだ差し歯でいけるよ」と言われた時に、「私、なんてバカなことしたんだろう。なんで別の歯医者に行こうと思わなかったのか」と後悔しました。当時は「先生が言ったことは絶対だ」と思っていたんで、思いつかなかったんですよね。



――確かに、思ったことを先生に言えずに診察が終わってしまうこともありますよね。



【ろぺ】私の場合は、子どもの頃から「自分の頭で考える」という行為をしたことがなかったんです。人に言われるままに生きてきちゃって。入れ歯にする時も歯医者にそう言われて「そうなんだ。私はそれしかないんだ」と言われるままにやってもらったんです。今考えると、なんでもっと自分で考えなかったんだろうって思います。別の歯医者さんに行くとか、自分で調べてみるとか、そういう行動をできていたら違う結果があったかもしれない。でもその時は余裕もなくて、一日生き延びるだけで精一杯だったんですよ。誰にも相談できずに一人で治療とかも全部やってたんで、自分の頭の限界だったんでしょうね。



――もっと他の選択肢を選ぶべきだったと思いますか?



【ろぺ】それもありますし、それと「自分の現状をちゃんと話しておけば良かった」と思いました。「自分は今こういう病気で、こういう症状がある」とちゃんと伝えることは本当に大事だなって、この時の経験から思いました。これは、今同じような状況にいる人にも伝えたいことでもあります。



ご自分の病気や症状のことは、ちゃんと先生に伝えた方が良いと思います。不安なことを不安なままにしておくと余計不安になるし、恐怖を引き起こして私の場合はパニックにもなっちゃうから。不安や恐怖を減らすためにも、先生とちゃんと話ができる関係性は大切です。歯医者に限ったことではなく「自分はこうしたい」と自分の気持ちや希望を伝えることは本当に大事だと思います。摂食障害や心の病気に理解のある歯医者さんがまだ少ないように思うので、もっと増えてくれるといいなと思いますし、通いやすい環境も整ってくれると有難いです。

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