丸山礼、シャワーを浴びながら涙した日々 ポジティブ変換のきっかけは「賞レースでの敗退」

丸山礼、シャワーを浴びながら涙した日々 ポジティブ変換のきっかけは「賞レースでの敗退」

 ものまねタレントやYouTuberとして活躍中の丸山礼(25)が、NHK夜ドラ『ワタシってサバサバしてるから』(総合テレビ1月9日夜10時45分スタート)で連続ドラマ初主演を務める。丸山が演じるのは、あきれるほどポジティブ思考が故に、忖度も謙遜もなく、周囲に波風を立て続けるという強烈なキャラクター・網浜奈美。丸山自身「いまは失敗しても切り替えが早くなりましたが、(網浜の思考とは異なり)以前はかなりネガティブになってしまっていた」と言う。そんな丸山が主演として臨む作品への思いや、ターニングポイントについて聞いた。



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■コントを作ってきた観察眼が、役作りに生きた



 2020年にWebコミックとして連載された同名漫画を実写ドラマ化した『ワタシってサバサバしてるから』。丸山は「男っぽいってよく言われるー」「メイクほとんどしないしー」と自称サバサバ系女子を強調する女性を演じている。



 「網浜は、“サバサバしているから”って言いたいだけの女性なんですよね(笑)。近年まれにみる自信家で、謙遜も忖度もない。気持ちいいぐらい自分ファーストを貫いている女性なのですが、ついつい目で追いかけちゃうというか、気になっちゃうんですよね。ウザいと思われてしまうようなキャラクターなので、あまりトゲトゲしくならないように……ということは心掛けました。一方で、規格外な人間なので、こじんまりしないよう気をつけました」。



 ややデフォルメされたキャラクターは、漫画チックでもあり、実写で描くには、原作からのさじ加減が難しいように感じられる。丸山自身コントなどでも“あるある”的なネタを披露しているが、自身の人間観察眼は網浜を演じるうえでどう役立ったのか。



 「人やモノ、景色などをいじったりしてコントを作ってきたので、そういう部分で観察眼が生かせたと思います。それと、自分でつくるキャラクターも、頭で考えるよりもキャラクターの服とかメイクとかを寄せて作って鏡の前に立つと、自然とセリフが出てきたりするんです。網浜も漫画のイメージに寄せて、髪を短く切り、ビジュアルを作ることで、役にスッと入っていけました」。



 「私は結構周りのことを気にしてしまうタイプなので」と語った丸山。網浜とは性格が違うというが「自分を大事にしていこう」という考え方は、丸山がYouTubeで発信しているメッセージに近いものがあるようにも感じられる。



 「YouTubeは“私のメッセージを聞いて!”というつもりでやっているわけではないのですが、生きていると悩みもあるし、それを共有するだけでも気持ちがほぐれることもあるので。でも、網浜奈美というキャラクターを演じながら、中身の半分は自分がいるような感覚もありました。網浜を演じていると、そこまでお利口さんにしなくてもいいのかなと、フィルターがひとつ外れた感じがありましたね」。



■友だちからの勧めではじめたYouTubeがブレイクのきっかけ



 網浜は自信家でポジティブ。丸山も明るく元気というパブリックイメージがあるが――。



 「切り替えは早いほうかなと思いますが、この仕事をはじめたころは『ダメだー』と思うことも多く、すぐに自分を責めてしまっていたんです。シャワーを浴びながら『あそこでもっとこうすればよかった』などと涙する毎日でした」。



 北海道からひとりで上京し、コンビでもトリオでもなく、ピンでの活動を選んだ丸山。自分自身の気持ちが落ち切ってしまう前に、すくい上げなければ……という思いから、今のように気持ちの切り替えを早くするようになった。そのきっかけになったのが“賞レースで結果が出なかったこと”だという。



 「R-1グランプリなどの賞レースに挑むわけですが、結果が全然でなくて……。年末年始、普通にテレビを観ている自分に落ち込むんですよね。でもある時『私なんで芸人になったんだっけ?こんな気持ちになるためになったんじゃない』って。その沈むばかりの気持ちをどうにかして跳ね飛ばしたいと思ったんです」。



 そこからYouTubeという新しい表現方法に目を向けることができたことで、気持ちが軽くなったと話す。



 「当時の私は19歳くらいで、同世代の女性芸人さんがあまりいなかったので、気持ちを切り替えても、どうしても孤独を感じることが多くて。悩んでいるときに友だちから『YouTubeいいんじゃない?』と言われて……。やってみたら、自分自身がすごく楽しかったんですよね」。



■親近感を持ってもらいつつ、憧れの存在でもいたい



 ポジティブシンキングとYouTubeに「救われた」という丸山。自分の個性を出し突き進んだ結果、連続ドラマの主演という仕事が舞い込んできた。



 「やばいですよね。信じられないですよ(笑)。自分を信じてきてよかった。めげそうになって、実家に帰りたいと思ったことも何度もありましたが、踏ん張ってよかったなと心から思えるオファーでした。でも今回のお話は本当にラッキーだっただけだと思っているんで、『礼ちゃんに頼んで良かったね』って言っていただけるように、しっかり結果を出したいです」。



 ドラマ主演からスタートする2023年。新たな野望は丸山の心のなかに宿っているのだろうか。



 「新年早々に放送されるので、まずはドラマに全力投球ですね。正直言うと、どんな反応が来るのかビビッてしまっている自分がいます。でも新しいことに挑戦したという思いはすごく強かったし、期待に120%でお返ししたいという気持ちで臨んだので、ワクワクも大きいです」。



 芸人という道を選んだ時、連続ドラマの主演を務めるという未来は「まったく見えていなかった」と話す丸山。



 「この世界に入ったとき、本当に何もできなくて、最初のマネージャーさんに行動のすべてをしっかり指摘してくださいとお願いしたんです。それくらい右も左もわからない子どものような大人で。いまでも勉強中ですが、仕事帰りにタクシーに乗ってレインボーブリッジを見たとき『あー少しは大人になったのかも』と思いました(笑)。ゆりかもめに乗るお金もなくて、親に1000円振り込んでもらうみたいな生活をしていたので」。



 今や、そんな彼女の言葉や行動を見て、夢と希望を持つ人もいるだろう。



 「YouTubeはすぐに反応を見ることができるし、SNSでファンの方とコミュニケーションが取れるというのも今の時代に活動する強みですよね。距離が近いことで親近感を持っていただけるのはうれしいことですが、一方で“憧れて欲しい”という思いもあって。YouTubeでは素を出していますが、テレビなどではしっかりプロとして仕事ができる人間なんだと思われたい。その両方がバランス良くできるようになるというのが、私の目標です」。



取材・文・撮影/磯部正和
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