是枝監督「森七菜をオーディションで選ぶ申し訳無さ」語る 出口夏希は「監督を女性と勘違い」
累計発行部数270万部を超える、小山愛子の人気コミックを実写化したNetflixドラマ『舞妓さんちのまかないさん』がいよいよ配信を迎える。京都の花街を舞台に、舞妓を目指す少女と、まかない飯で舞妓たちを支える少女の奮闘を描いた本作。総合演出の是枝裕和監督、ダブル主演を務めた森七菜(21)と出口夏希(21)が作品の見どころや、オーディションの爆笑エピソードなどを披露した。
【動画】森七菜も爆笑…出口夏希の天然爆発!? 見守る是枝監督の表情にも注目
■メインキャスト2人とも、新人をキャスティングする予定だった
――人気コミックの実写化。日本の伝統文化である舞妓さんというテーマを世界配信するうえで、意識したことはありましたか?
是枝:正直、世界配信だからなにかが変わるということはないです。監督をするうえで映画だから、ドラマだから、配信だからで演出が変わるかというと、変わらない。脚本を書く上でもそれは同じなんです。シンプルに、自分がいま一番書きたいと思う連続ドラマを書かせてもらったつもりです。
――森さん、出口さんともにオーディションを経ての出演とお聞きしましたが、選考理由は?
是枝:最初は、メインキャスト2人とも、新人さんで行くのがいいのかなと思っていたんです。でもいろいろな知り合いのスタッフから、とにかく「森七菜すごいよ、本当にいいよ」と聞いていたので、オーディションに参加していただいたんです。新人に交じってオーディションに参加してもらうということ自体申し訳ないなという思いはありましたが、やっぱりうわさ通りで、オーディションを重ねていくうちに森さんしかいないなと思うようになっていきました。
――森さんが先に決まったんですね。
是枝:そうですね。そこからは森さんと組み合わせるなら……という視点で選考をしていきました。出口さんは、最初に会ったときから、天真爛漫で嘘がなく、一緒にいるとこちらが明るくなるような人だなと。ただ芝居は未知数だったので、最初はすみれという役に限定せず、いろいろな役の可能性を探りました。森さん、出口さん、ドラマオリジナルキャラクターである涼子役の蒔田彩珠さんの3人の組み合わせを見たとき、スタッフがみんな「このトライアングルしかない」という話になって。出口さんにすみれをお願いしたという流れですね。
――最後はバランスで決めたのですね。未知数に思えた出口さんの芝居はいかがだったのでしょうか?
是枝:こんな言い方をするとおこがましいですが、すみれの成長と、出口夏希という女優さんの成長がリンクするというか、監督たちもスタッフも、これは一回限りの瞬間に立ち会っているという感覚はありました。とても貴重なタイミングでの出会いだったと思います。
――是枝監督の評価をお聞きになったと思いますが、お二人はどんな思いで是枝組に参加したのでしょうか?
森:是枝さんの作品で、しかも物語の真ん中にいる女の子。オーディションを受けたときは「落ちたくないな」という思いだったのですが、いざ受かったら途端に喜びを不安が侵食していくような感じになってしまって、正直怖かったです。でも実際是枝監督とお会いすると、 “巨匠”みたいな圧はまったくなく、とても穏やかな方だったので、その不安は和らぎました。とても自由に見守っていただけているという感じで、撮影中はとても心地良く、心が弾んだ時間でした。
出口:作品を見たことはもちろんあったのですが、今まで監督を意識して作品を観るということが正直なかったので、是枝監督のお顔を知らなかったんです…。オーディションのときだけは、私は特に何も情報がないままの参加だったので、「どの方が監督なんだろう。多分真ん中にいるだろうな」と思っていたのですが、私の横からカメラを撮っていたおじさんがいて、この人誰だろう……って(笑)。
是枝:それが俺だったんだよね(笑)。
出口:はい(笑)。
森:真ん中に座っていた人って若い女性の人?
出口:そう。
森:監督が女の人だと思っていたの?
出口:うん。本当になんの情報もなくオーディションに行ったので(笑)。
是枝・森:(爆笑)
■物語を通して、役と一緒に自分も成長できた
――お二人は幼少期から一緒にいる仲良しの設定でした。どんな形で関係性を作っていったのですか?
森:お互い人見知りなんですよね。最初に会ったのはオーディションのときだったのですが、そのときは特に話をしませんでした。
出口:本読みのときもお互いチラチラ見合うのですが、そのときもほとんど話はしませんでしたね。
森:撮影が始まってから徐々に「実は話しやすい」と気付き、一気に距離が縮まりました。やっぱりお芝居を重ねていくことで信頼感って増していくので、現場って大切だなと思いました。
出口:私は撮影に入る前と後で森さんの印象が全然違いました。たくさん作品に出ていて、経験が豊富なので緊張していたのですが、現場に入ると、本当に飾らない方で一気に打ち解けました。“出口夏希”という人間を全部見透かされているような感じもあり、顔の表情ひとつ変えただけで「なんかあった?」って言ってくれるんです。
森:でもそれは、すごくわかりやすいんですよ(笑)。着物の帯をかなりきつく締めるから、長い時間の撮影になると大変なんですが、疲れてくるとすぐわかる(笑)。是枝監督もおっしゃっていましたが、本当に嘘がない子だなと。私も気を使わなくて、とても相性が良かったと思います!
――それぞれの役柄へのアプローチ方法は?
森:とても難しかったですね。お料理の所作はもちろんなのですが、お芝居のなかでも、多くを語らずに台所に立つ後ろ姿や、人に向ける視線、出す料理でキヨちゃんがどれだけ周囲に愛されているかを納得してもらわなければいけないんです。でも是枝監督をはじめとするスタッフさんが、とても温かい空気を作ってくださったので、徐々にキヨちゃんになることができました。
出口:すみれは物語を通して成長していく役だったので、その変化をどうやって出したらいいのか……と考えました。作品を通して、役と一緒に成長できたと思います。自分で観ても、1話と最後では顔つきが変わっていると感じられたので、注目してほしいですね。
■原作に出てくる料理からなにをチョイスするか、一番悩んだところ
――劇中、キヨが作る料理は本当においしそうでした。特に惹かれた料理はありましたか?
森:私は、ドラマに出た料理はほとんど食べました。カットがかかるとすぐ裏に行って食べて、また始まると急いで戻ってという感じで(笑)。
是枝:カットかかったあとに裏で食べているのは、ほとんど僕と森さんでしたよね(笑)。
森:そうでしたね(笑)。どれも本当においしいのですが、おにぎりが一番好きです。(フードスタイリストの)飯島奈美さんの握ったおにぎりは、本当にほかの誰も作れないような味なんです。白米の輝きから違うので、ぜひドラマでも観て欲しいです。
出口:私はずっと親子丼と言っているんです。実はこの撮影まで親子丼というものを食べたことがなくて。食わず嫌いだったのですが、料理練習をしていた七菜ちゃんのところに行ったときに親子丼を食べて、おいしすぎてびっくりしたことがすごく印象に残っていて。心残りは、飯島さんの天ぷらが食べられなかったこと!
是枝:原作に出てくる料理から、なにをチョイスして作品に出すかというのが、一番悩んだところなんです。どれも本当に美味しそうだもんね。いまの気分だと、なすの煮浸しかな。物語のなかでもすごく重要な料理。人の心が動く料理って素晴らしいですよね。
――いよいよ配信がスタートしますが、最後にメッセージを。
森:この物語はお料理の話ではあるのですが、日本の伝統や友情、恋、そして家族の物語と、いろいろな要素がたくさん詰まっています。おかずがたくさん詰まったお弁当のような作品で、観終わったあとには、きっと心になにか温かいものが宿るドラマになっていると思うので、ぜひご覧になっていただけたらうれしいです。
取材・文/磯部正和
写真/MitsutuYamazaki
ヘアメイク/宮本 愛(yosine.)(森七菜)、中山友恵(出口夏希)
スタイリスト/申谷弘美(森七菜)、Shohei Kashima(W) (出口夏希)
【動画】森七菜も爆笑…出口夏希の天然爆発!? 見守る是枝監督の表情にも注目
■メインキャスト2人とも、新人をキャスティングする予定だった
――人気コミックの実写化。日本の伝統文化である舞妓さんというテーマを世界配信するうえで、意識したことはありましたか?
是枝:正直、世界配信だからなにかが変わるということはないです。監督をするうえで映画だから、ドラマだから、配信だからで演出が変わるかというと、変わらない。脚本を書く上でもそれは同じなんです。シンプルに、自分がいま一番書きたいと思う連続ドラマを書かせてもらったつもりです。
――森さん、出口さんともにオーディションを経ての出演とお聞きしましたが、選考理由は?
是枝:最初は、メインキャスト2人とも、新人さんで行くのがいいのかなと思っていたんです。でもいろいろな知り合いのスタッフから、とにかく「森七菜すごいよ、本当にいいよ」と聞いていたので、オーディションに参加していただいたんです。新人に交じってオーディションに参加してもらうということ自体申し訳ないなという思いはありましたが、やっぱりうわさ通りで、オーディションを重ねていくうちに森さんしかいないなと思うようになっていきました。
――森さんが先に決まったんですね。
是枝:そうですね。そこからは森さんと組み合わせるなら……という視点で選考をしていきました。出口さんは、最初に会ったときから、天真爛漫で嘘がなく、一緒にいるとこちらが明るくなるような人だなと。ただ芝居は未知数だったので、最初はすみれという役に限定せず、いろいろな役の可能性を探りました。森さん、出口さん、ドラマオリジナルキャラクターである涼子役の蒔田彩珠さんの3人の組み合わせを見たとき、スタッフがみんな「このトライアングルしかない」という話になって。出口さんにすみれをお願いしたという流れですね。
――最後はバランスで決めたのですね。未知数に思えた出口さんの芝居はいかがだったのでしょうか?
是枝:こんな言い方をするとおこがましいですが、すみれの成長と、出口夏希という女優さんの成長がリンクするというか、監督たちもスタッフも、これは一回限りの瞬間に立ち会っているという感覚はありました。とても貴重なタイミングでの出会いだったと思います。
――是枝監督の評価をお聞きになったと思いますが、お二人はどんな思いで是枝組に参加したのでしょうか?
森:是枝さんの作品で、しかも物語の真ん中にいる女の子。オーディションを受けたときは「落ちたくないな」という思いだったのですが、いざ受かったら途端に喜びを不安が侵食していくような感じになってしまって、正直怖かったです。でも実際是枝監督とお会いすると、 “巨匠”みたいな圧はまったくなく、とても穏やかな方だったので、その不安は和らぎました。とても自由に見守っていただけているという感じで、撮影中はとても心地良く、心が弾んだ時間でした。
出口:作品を見たことはもちろんあったのですが、今まで監督を意識して作品を観るということが正直なかったので、是枝監督のお顔を知らなかったんです…。オーディションのときだけは、私は特に何も情報がないままの参加だったので、「どの方が監督なんだろう。多分真ん中にいるだろうな」と思っていたのですが、私の横からカメラを撮っていたおじさんがいて、この人誰だろう……って(笑)。
是枝:それが俺だったんだよね(笑)。
出口:はい(笑)。
森:真ん中に座っていた人って若い女性の人?
出口:そう。
森:監督が女の人だと思っていたの?
出口:うん。本当になんの情報もなくオーディションに行ったので(笑)。
是枝・森:(爆笑)
■物語を通して、役と一緒に自分も成長できた
――お二人は幼少期から一緒にいる仲良しの設定でした。どんな形で関係性を作っていったのですか?
森:お互い人見知りなんですよね。最初に会ったのはオーディションのときだったのですが、そのときは特に話をしませんでした。
出口:本読みのときもお互いチラチラ見合うのですが、そのときもほとんど話はしませんでしたね。
森:撮影が始まってから徐々に「実は話しやすい」と気付き、一気に距離が縮まりました。やっぱりお芝居を重ねていくことで信頼感って増していくので、現場って大切だなと思いました。
出口:私は撮影に入る前と後で森さんの印象が全然違いました。たくさん作品に出ていて、経験が豊富なので緊張していたのですが、現場に入ると、本当に飾らない方で一気に打ち解けました。“出口夏希”という人間を全部見透かされているような感じもあり、顔の表情ひとつ変えただけで「なんかあった?」って言ってくれるんです。
森:でもそれは、すごくわかりやすいんですよ(笑)。着物の帯をかなりきつく締めるから、長い時間の撮影になると大変なんですが、疲れてくるとすぐわかる(笑)。是枝監督もおっしゃっていましたが、本当に嘘がない子だなと。私も気を使わなくて、とても相性が良かったと思います!
――それぞれの役柄へのアプローチ方法は?
森:とても難しかったですね。お料理の所作はもちろんなのですが、お芝居のなかでも、多くを語らずに台所に立つ後ろ姿や、人に向ける視線、出す料理でキヨちゃんがどれだけ周囲に愛されているかを納得してもらわなければいけないんです。でも是枝監督をはじめとするスタッフさんが、とても温かい空気を作ってくださったので、徐々にキヨちゃんになることができました。
出口:すみれは物語を通して成長していく役だったので、その変化をどうやって出したらいいのか……と考えました。作品を通して、役と一緒に成長できたと思います。自分で観ても、1話と最後では顔つきが変わっていると感じられたので、注目してほしいですね。
■原作に出てくる料理からなにをチョイスするか、一番悩んだところ
――劇中、キヨが作る料理は本当においしそうでした。特に惹かれた料理はありましたか?
森:私は、ドラマに出た料理はほとんど食べました。カットがかかるとすぐ裏に行って食べて、また始まると急いで戻ってという感じで(笑)。
是枝:カットかかったあとに裏で食べているのは、ほとんど僕と森さんでしたよね(笑)。
森:そうでしたね(笑)。どれも本当においしいのですが、おにぎりが一番好きです。(フードスタイリストの)飯島奈美さんの握ったおにぎりは、本当にほかの誰も作れないような味なんです。白米の輝きから違うので、ぜひドラマでも観て欲しいです。
出口:私はずっと親子丼と言っているんです。実はこの撮影まで親子丼というものを食べたことがなくて。食わず嫌いだったのですが、料理練習をしていた七菜ちゃんのところに行ったときに親子丼を食べて、おいしすぎてびっくりしたことがすごく印象に残っていて。心残りは、飯島さんの天ぷらが食べられなかったこと!
是枝:原作に出てくる料理から、なにをチョイスして作品に出すかというのが、一番悩んだところなんです。どれも本当に美味しそうだもんね。いまの気分だと、なすの煮浸しかな。物語のなかでもすごく重要な料理。人の心が動く料理って素晴らしいですよね。
――いよいよ配信がスタートしますが、最後にメッセージを。
森:この物語はお料理の話ではあるのですが、日本の伝統や友情、恋、そして家族の物語と、いろいろな要素がたくさん詰まっています。おかずがたくさん詰まったお弁当のような作品で、観終わったあとには、きっと心になにか温かいものが宿るドラマになっていると思うので、ぜひご覧になっていただけたらうれしいです。
取材・文/磯部正和
写真/MitsutuYamazaki
ヘアメイク/宮本 愛(yosine.)(森七菜)、中山友恵(出口夏希)
スタイリスト/申谷弘美(森七菜)、Shohei Kashima(W) (出口夏希)