カルト的人気を誇る豊田徹也の漫画『アンダーカレント』今泉力哉監督が実写映画化

カルト的人気を誇る豊田徹也の漫画『アンダーカレント』今泉力哉監督が実写映画化

 2004年8月より1年間にわたり「月刊アフタヌーン」(講談社)に連載された、豊田徹也の唯一の長編漫画『アンダーカレント』が、単行本の発売(05年)から18年の時を経て、今泉力哉監督により映画化、今秋公開が決定した(配給:KADOKAWA)。



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 家業を継ぎ、夫の悟と銭湯を切り盛りし、順風満帆な日々を送るかなえ。しかし突然、悟が失踪する。彼の行方は一向に分からず、途方に暮れるかなえだったが、一時休業していた銭湯の営業を再開させる。そこに「働きたい」という謎の男・堀が現れ、ある手違いをきっかけに住み込みで働くことに。その日からかなえと堀の不思議な共同生活が始まる。



 友人から紹介された胡散臭い探偵・山崎とともに期間限定で悟を探しながら、穏やかな日常を取り戻しつつあったかなえ。しかし、ある事件をきっかけに、堀、悟、そしてかなえが閉ざしていた心の深層(アンダーカレント)が、徐々に浮かび上がってくる。



 原作漫画は、09年にフランス・パリで開催された「ジャパンエキスポ」において、フランスの批評家と記者が選出する「第3回ACBDアジア賞」を受賞。10年には「漫画界のカンヌ映画祭」と呼ばれるフランス・アングレーム国際漫画祭のオフィシャルセレクションに選出された。さらに、20年にフランスメディアで発表さ

れた「2000年以降の絶対に読むべき漫画100選」では、世界中の名だたる漫画がランクインする中、堂々の3位に選ばれるなど、フランスを中心とした海外でもカルト的な人気を誇っている。



 今泉監督は、『愛がなんだ』で社会現象を巻き起こし、その後も『あの頃。』、『街の上で』、第35 回東京国際映画祭にて観客賞を受賞した稲垣吾郎主演の『窓辺にて』など話題作を次々発表。2月には有村架純主演のNetflix映画『ちひろさん』の公開が控えている。



 コミュニケーションツールが目まぐるしく発展すると共に、人間関係が希薄になりがちな今の時代だからこそ贈りたい、人を知ろうとすることの尊さを教えてくれる、原作の繊細で静謐(ひつ)な人間ドラマを、その手腕で心が震える映画にしてくれるに違いない。脚本は、『愛がなんだ』の澤井香織が、今泉とともに手がけている。



■今泉力哉監督のコメント



 この世界にはそれが存在することで誰かが救われるという作品があって、そして、そういうものを生み出す人がいて、豊田徹也さんの『アンダーカレント』はそういう漫画で、豊田さんはそういう人だ。



 映画化にあたり、豊田さんと何度もふたりきりで会っていろんな話をした。はじめて会った日に4時間お茶をしたのだが、まだまだ話し足りなかった。帰り際、原田芳雄さんのエッセイ『B級パラダイス俺の昨日を少しだけ』をいただいた。



 豊田さんは「僕はいいんだけど、登場人物が嫌な思いをしない映画にしてください」と言った。登場人物が嫌な思いをしないように。とってもすてきな言葉だと思った。



 コロナ禍でお茶をしたある日、会計時に自分の分のコーヒー代を、きっとこういうご時世だからだろう、衛生面からラップにくるんでご用意してくださっていて。この繊細さをきちんと映画にしたいと思った。



 私はキリスト教徒なのだが、熱心な信者ではなくて、それでもたまに教会に行くと心が澄む感覚になるのだが、自分にとっての豊田さんはそういう人で、会うと心が澄む。



 とても繊細で面白い方で、日々、自分は映画監督に向いていないなと思いながら映画をつくっているのだが、こういう原作の映画化の話が来ることはとても光栄だし、きっと器用に生きることができない人にしか生み出せないものがあると信じて、これからも生きていきます。かなえや堀も、今もどこかで元気でいてくれたら。
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