
今年のeスポーツ市場は“格ゲー”に再び脚光、賞金総額200万ドル大会も…一方、子を持つ親世代はいまだ疑念?
“プロゲーマー”という職業もすっかり定着し、eスポーツ市場も年々活気を帯びている昨今。パリ夏期五輪(24年開催)での正式種目化を目指す動きや、今年開催されるカプコン主催のeスポーツ世界大会『カプコンカップ10』の賞金総額が200万ドル(約2億6000万円)と発表され話題になるなど、2023年のeスポーツ市場は大きな節目を迎えることになりそうだ。プロゲーマーが“生業”として周知される一方、eスポーツが“純粋なスポーツ競技”として完全に認知されたのか? 同市場の更なる可能性とその課題を探ってみよう。【円グラフ】子どもが「eスポーツ選手になりたい」と言ったら? 親世代のリアルな反応結果■プロ選手の増加、配信者や講師、各種の公演…ゲームプレーヤーが“食える”時代に 各種企業が調査する「子どものなりたい職業ランキング」で、上位ランクインの常連となったeスポーツ選手。ゲーム市場そのものは1980年代以降、日本を象徴する巨大産業へと発展してきたものの、プレイヤーたちは長年に渡って憂き目にあってきた。90年代までコンピューターゲームは、一定の年齢に達した際には“卒業”するものとして捉えられており、成人を迎えてもなおゲームに現を抜かしていると“社会不適合者”の烙印を押され、商売として成り立つなどまさに夢物語であった。 日本人初のプロゲーマーであり、格闘ゲーム界におけるカリスマとして君臨する梅原大吾氏(41)は、10代の頃より格闘ゲーム『ストリートファイター』シリーズで頭角を表わし、若干17歳で世界王者に。その後も国内外の大会において無双を続けてはいたものの、当時は大会賞金も低く生活は難しかった。何よりもゲームは“社会悪”であり“卒業すべきもの”という風潮が根強く、梅原氏も05年に一時期ゲーマーを引退、雀荘勤務や介護職を経験した後に復帰し、2010年にようやく“プロ格闘ゲーマー”として歩みを進めるに至った。 国内初のプロゲーマー誕生から10余年。いまや多くのeスポーツ選手が台頭しゲーム1本でも“食える”時代に。これはプロライセンスを保持していないゲーマーにも波及し、動画配信サービス内でのゲーム実況による広告や投げ銭による収益、eスポーツ選手育成の講師、各種メディア出演や全国での公演などなど、多様な形で“ゲームプレーヤー”が一定の社会的地位と影響力、それに伴う実益を付与される仕組みが形成された。■ゲームで育った親世代ですら…子どもが「eスポーツ選手」になるのは6割が反対 “不健康イメージ”いまだ根強く 一方、子を持つ親の目はどのように変化したのだろうか? 一昔前にトレンドになった「なりたい職業1位にYouTuber」に、眉をひそめる親世代も多かったが、現在の40代世代は、文字通り“ゲームで育ってきた世代”でもある。子どもが「将来はプロゲーマーになりたい」と打ち明けても寛容に受け止めることも出来そうだが…。 先ごろ発表された『アサヒ炭酸ラボ 親世代に聞く、いまどきのeスポーツ意識調査』(※調査対象:全国の小・中・高校生の子どもと同居する30~50代の父母各250名 合計500名)では、【親世代のeスポーツの認知】は100%であったと報告。内容までよく知っている親は2割弱に留っている。また「スポーツ」ではなく、あくまで「ゲーム」と考えている親が8割以上を占める結果となった。 また、子どもに人気の職業「eスポーツ選手」は、親の約6割が反対。ゲームをやることで、視力の低下や食事時間、睡眠時間の不足など、健康面を心配することが多数。やはり“スポーツ”としての理解度の低さや健康によくないというイメージは根強く残っているのが伺える結果となった。■今年のeスポーツ市場規模は23億ドル以上? 先行き不透明な経済においては光明に 今年はeスポーツの主要競技種目である「格闘技ゲーム」ジャンルの動きが非常に活発となることが予想される。90年代に“格ゲーブーム”を巻き起こした『ストファイ』シリーズ7年ぶりの新作『ストリートファイター6』が6月に発売。その『ストファイ』シリーズのライバルとして、世界規模の大会も盛んに行っている『鉄拳』シリーズも最新作『鉄拳8』(24年発売予定)の情報が続々と発表。さらに、世界的にゲーム市場の覇権を握ったといわれる『リーグ・オブ・レジェンド』シリーズからも、2VS2で対戦する『Project L』の発売も控えており、その期待感も高く、近年、鈍化傾向にあった“格闘ゲーム”ジャンルが再び脚光を浴びる気配が漂っている。 健康面による意見はもちろん、昨今ではプロゲーマーによるネット上での暴言による騒動など、その倫理観について批判が生じるケースもあり、肯定派・否定派が常に揺れ動いている状況といえるeスポーツ選手。だが、ゲームがここまで生活の一部となった現状、年々希薄になる“メイド・イン・ジャパン”。その最後の砦ともいうべきゲーム市場の重要性・優位性に蓋を閉めてしまうのは口惜しいと考えるユーザーも多いはず。2023年のeスポーツ市場規模は、23億ドル(約2500億円)を超えてくるとも予想されている。先行き不透明な経済においても、光明のひとつであることは間違いなく、“健全化”に努めるべく「次なる一手」が急務だろう。
ORICON NEWS