映画『12日の殺人』犯罪捜査ミステリーで問題提起「捜査官も容疑者もほぼ男性って変ですよね」

映画『12日の殺人』犯罪捜査ミステリーで問題提起「捜査官も容疑者もほぼ男性って変ですよね」

 2019年に開催された「第32回東京国際映画祭」で観客賞と最優秀女優賞を受賞した『悪なき殺人(原題:Only The Animals※映画祭当時は『動物だけが知っている』)のドミニク・モル監督の新作『12日の殺人』が3月15日より公開される。本作は未解決事件を追う刑事たちをリアルに描いただけでなく、現代社会に対するフェミニズム的な問題提起も同時に描き、「第75回カンヌ国際映画祭」ほかで前作以上の反響を呼び、多数の映画賞で受賞を果たした。



【画像】犯人はだれなのか?登場人物の相関図



 フランス南東の地方都市グルノーブルで、10月12日の夜、帰宅途中の21歳の女子大生クララは、友人たちとのパーティの帰り道、突如何者かにガソリンをかけられ火を放たれた。彼女は翌朝、無残な焼死体で発見される。



 被害者・クララは容姿端麗。まずはクララの男性関係から捜査していくことに。複数の男性容疑者があがる中、彼らはクララと肉体関係があったことがわかる。そしてクララと関係を持っていた男たちは、一様にして彼女が奔放な女性だったと語るのだった。



 クララの殺人事件を追う主人公ヨアン率いる捜査班は、男性7人という男所帯。さらに容疑をかけられる容疑者らも全員男性。生きたまま焼かれ残虐に殺されたクララに対し、捜査班たちは次第に彼女を淫らな女なのではないかと思い始める。しかし、事件は迷宮入りしてしまう。



 主人公は男性だが、物語の中核を担っていくのは女性たちだ。クララの親友のナニーは、間違いなく男性による犯行であると疑いもしない捜査陣に、「なぜクララが誰と寝たかを知ることがそんなに重要なのか」と泣きながら問い詰める。



 やがて、男性による犯行だと疑わないヨアンらの偏った先入観を排した捜査の再開を促す女性裁判官が現れる。新たに捜査チームに加わる事となった新人女性捜査官のナディアは、「罪を犯すのも捜査するのもほぼ男性って変ですよね。男の世界ね」とヨアンに投げかける。そんな彼女らの一言一言は、ヨアンたち男性捜査官たちが気づかなかった部分を洗い出し、行き詰まった捜査の核心を突いていく。一体、誰が犯人なのか、どんな結末が待ち受けているのか。



 ドミニク監督は、「男性による暴力事件を捜査するのはほとんどが男性です。もし殊勝にも映画やドラマで女性の捜査官が活躍している姿が描かれていたとしても現実は、今だに“男社会”なのです。彼ら男性捜査官が自分の娘やパートナー、女性の友人や姉妹が犠牲になった事件を捜査することになったら何を思うだろうか?容疑者を、そして被害者をどう見るだろうか?これらすべての要素が彼らにどのような感情を引き起こすだろうか?映画を観る人が現実の男社会に疑問を抱くきっかけになってほしいという思いを込めた」と語っている。

カテゴリ