「私HSPなんで!」新入社員の宣言に「どう配慮を…」教育係が困惑 正解がない難しさも、体験もとに描いた漫画作者の思い

「私HSPなんで!」新入社員の宣言に「どう配慮を…」教育係が困惑 正解がない難しさも、体験もとに描いた漫画作者の思い

 「繊細すぎる、敏感すぎる人」を意味するHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)をテーマにした漫画『新人は自称HSP』(KADOKAWA刊)は、「私HSPなんで!」と宣言して仕事を人に丸投げ、ミスを指摘すると逆ギレする、まさにタイトル通りのトンデモ新入社員とのトラブルが描かれる。フィクションながらリアルなエピソードがつづられた内容は、著者のはむら芥さんの自身の体験談がもとになっている。「HSPに対してどう配慮すればよいのか分からない人は意外と身近にも多いのではないか」と語るはむら芥さんに話を聞いた。



【画像】雑談をやんわり注意すると「嫌われちゃいましたよ~!」新入社員への違和感



■「HSPは嘘でしょ!」とも言えない難しさ



――「HSP」をテーマにした作品を描くことになった経緯を教えてください。



【はむら芥さん】数年前SNSなどでHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)が広く知られ始めた頃に、新しく職場に入った方が「自分はHSPなので配慮して欲しい」とおっしゃったことがありました。当時私を含め職場のメンバーはHSPについての知識がなく、どのように配慮すればいいのか、どこまで主張を取り入れればいいかが分からず、とても対応に悩んだんです。それからしばらく経ったある日、友人にこの出来事を話すと「実は私もHSPかもしれなくて悩んでいた」と打ち明けられて…。自分がHSPであると自覚している人、そうかもしれないと悩んでいる人、また私達の様にHSPに対してどう配慮すればよいのか分からない人は意外と身近にも多いのではないかと感じ、このテーマを漫画にしてみることにしました。



――主人公・加藤さんは、強烈なキャラクターの新入社員・高瀬さんを指導する立場になり、日々振り回され困惑します。



【はむら芥さん】目に見えないものへの配慮は正解がハッキリある訳ではなく、本当に難しい課題だと考えています。今回、高瀬さんはサボりの口実として滅茶苦茶な配慮を周囲に求めていましたが、聞く側からは本当かウソかを知ることは出来ませんから。周囲が放っておけばいいと半ば匙を投げる中で、教育係として一人対応する加藤さんは本当に大変だったと思います。



――「HSP」と宣言された加藤さんは、自分なりに症状を調べたり対応に気遣ったりしていました。



【はむら芥さん】その中で、加藤さんは自身の調べたHSPに関する知識との食い違いを感じつつも、最後まで高瀬さんに対して「それは嘘でしょ」とは言いません。周りと同じように簡単な流し方も選べたはずなのに、そうはせず真摯に彼女に向き合い理解しようとします。この真っ直ぐで裏表のない姿勢が、相手の意見を尊重する加藤さんの最大の魅力だと思っています。



――“自称”HSPの高瀬さんですが、彼女もまた本作の中でゆっくりとではありますが、成長をしていきます。



【はむら芥さん】高瀬さんは非常に素直で可愛らしい子だと思って描いていました。本当のHSPの方が見れば「違う」と感じるかもしれませんが、彼女自身は確信を持って自分がHSPだと思っているのでしょう。すぐに怒る人が怖いから私はHSP!と心から思っているし、急ぐと慌ててミスをするからできない!と本心から言っているのだと思います。悪意はまったくないんです。ただ幼さゆえに視野が広くなく、勝手になってしまったというか…。読者の方の中には、昔の自分の振舞いと重ね合わせた人もいらっしゃるのではないでしょうか。だからこそ物語を書いていくうえで、彼女を完全な悪役として終わらせたくなかったという思いがあります。物語の中で高瀬さんに腹が立ったり許せないと感じたりした人ほど、ぜひ最後まで彼女の成長を見届けて下さったら嬉しいです。



――高瀬さんと同じタイミングで入社した影の薄い奥田さんですが、実は彼女も頑張り屋さんの重要人物でしたね。



【はむら芥さん】奥田さんは物語の中で目立つ高瀬さんの対比として描かれていますが、そのモデルは冒頭で触れたHSPを告白してくれた友人なんです。その友人は、出会った時から凄く丁寧で気配りを欠かさない人でした。例えばバタバタして普段より返信が遅くなったりすると、返しの一言目に「忙しい中返してくれてありがとう」と書き添えてくれるくらい、いつも細かいところまで気遣ってくれるんです。



――「HSP」の方は、自分がそうだと打ち明けることも難しそうです。



【はむら芥さん】言葉遣いや振舞い一つひとつに注意を払って本当のHSPの方々に共感して頂けるように描いたつもりです。奥田さんの成長を通して、少しでも読者の方が自信と勇気を持つきっかけになれたら幸いです。
カテゴリ