Wake Up,Girls! 新章 総括 「7人の少女戦いから、7人のセンスへ」ローカルアイドルWUGの新たな物語
劇場版『 Wake Up, Girls! 七人のアイドル 』、そこからTVアニメと前後編で1本の映画やスピンオフ作品を経て、2017年の秋アニメとして放送された新作アニメ『Wake Up,Girls! 新章』。仙台のローカルアイドルである『Wake Up,Girls!』の成長と過酷なアイドルとしてのサクセスストーリーを描いた、”WUG 新章”という作品についての感想や考察を何本もつらつらと書かせて頂いてきた。そして一言、この作品を総括して言葉とすると”もったいない!!” まぁとにかくもったいないなぁと思える作品なのだ…。そんな『WUG 新章』とは一体どんな作品だったのか…..。全話放送を終えた今、改めて振り返ってみたいと思う。西尾維新風に言うなればこれは”100%私情で書かれた記事”です。Contents1 あらすじ2 7人の少女戦いから、7人のセンスへ3 内部的なゴタゴタ?4 キャラクターについて5 楽曲について6 総括■あらすじ画像引用元:©Green Leaves / Wake Up,Girls!3製作委員会前置きとして、まずはストーリーのおさらい。仙台の弱小芸能プロダクション『グリーンリーヴズ エンターテインメント』に所属するアイドルグループ「Wake Up,Girls!」。 数多の挫折や困難を乗り越え、「アイドルの祭典」と呼ばれる全国からアイドルたちがあつまる大会で優勝する。 ここまでが劇場版までのお話。新章ではそれから2年が経過し、一躍トップアイドルに仲間入りするかと思われたWUGですが、まあ現実は厳しく「アイドル不況時代」と呼ばれる昨今で地道なアイドル活動を続けていた…。■7人の少女戦いから、7人のセンスへこれまでの「WUG」という作品が”7 Girls War”7人のWUGとしての戦いならば、新章は”7 Senses”7人、個人個人の成長にシフトしていきました。アイドルの祭典で優勝したものの、まだまだ知名度が上がらずここからWUGがさらなる成長を遂げるには、7人それぞれが違う方向で個性を出していこうというのが今回のテーマ。ドラマの主演で活躍した真夢、元々モデルをしていた経験を活かした佳乃、これまでの食レポにさらに一ひねり加えた美波など、どんどんと自主的に成長していく描写がされていきました。作中では前作の劇場アニメから2年の歳月が経っているのですが、2年という月日は現実でも経過しており、リアルの「Wake Up,Girls!」もその間にいろいろと精力的な活動を続けてきました。それはユニットだけの活動だけでなくメンバーそれぞれが個々で声優として多方面で活動が増えてきていたり、セルフプロデュースのソロイベントを開催するなど、個々での活動が増えたことが今回の新章のテーマにも繋がったのではと思います。WUGの魅力の一つにはハイパーリンクというものがありますが、これまでは「アニメでユニットがどんどんと成長していく→それに呼応するようにリアルのWUGも成長する」といった形でのハイパーリンクの側面が強かったのですが、新章では逆に、リアルでの活動してきたことをアニメに取り入れる逆輸入でのハイパーリンクがかなり観られました。バスツアーの開催やライブ前の「灰になる準備は~」なんかはリアルでのWUGからの逆輸入で、ワグナーにとってはニヤリと思わせる演出が多かったですね。そして、もうひとつのテーマが”繋がり”。作中では、個々で行ってきた仕事は結果として人と人との繋がりを呼び、”Wake Up,Idols!”という企画が生まれ、アイドルの底力を見せていくという展開がうまれました。他のアイドルたちとの繋がりだけでなく、WUGのユニットとしての繋がりや、後輩であるRGRとの繋がりなどにもリンクしていくのは非常に面白いところでもあったと思います。2017年の”Wake Up,Gils!”の4thライブツアーでは「TUNAGO」という楽曲を披露しており、元々東北の災害支援の一環として制作に至ったWUGという作品ならではのテーマだったなのかなと感じます。この「個々の成長」と「繋がり」がストーリー上の大きなキーワードとして新章では描かれていきました。■内部的なゴタゴタ?でっ!!!冒頭で述べた「もったいない!」というのはなんぞやというお話…。今回のアニメは2016年末に開催された「Wake Up, Girls!Festa. 2016 SUPER LIVE」にてサプライズで発表されました。その時発表されたPVはこちらである。制作会社はおろか、メインスタッフ陣も一新されている。”新章”とはまさに言い得て妙なタイトルである。実は、2015年末に開催された「WUG Fes 2015」では、”I-1club”と”WUG”が吸収合併するという謎のPVを発表後特に続報もなく、2016年にはそれに関係あるのか!?と思われるような”WUG”メンバーと”I-1″メンバーで結成された「WI7ners(ウィナーズ)」が発表されますがそれも音沙汰なし…。からの、スタッフを一新してのいきなりの新章の発表!!と、数年前からかなりWUGの制作現場が内部的にゴタゴタがあった状態での新作アニメであったのではないかということが窺えます。アプリゲーム『Wake Up,Girls! 天使のパズル』は体験版がリリースされますが、昨年夏に特に発表もなくひっそりと開発が中止に……なんてこともありましたね。特に制作のミルパンセは、これまで短編アニメ制作でおなじみの制作会社だけあって「WUGは5分アニメなのか!?」などPVでの発表直後はだいぶ波紋を呼びました。実際のオンエアが始まると、やはり制作がゴタゴタしているのではないかという部分が随所に見られてしまい、そこが”もったいない!!”ポイントでした。■キャラクターについて画像引用元:©Green Leaves / Wake Up,Girls!3製作委員会新章では重要なキーパーソンとして新キャラクターがでてきます。まずは、歩、いつか、音芽の3人組「Run Girls, Run!」、そして、ヴァーチャルアイドルの「マキナX」「RGR」たちは、「WUG」に憧れてアイドルを志すようになりグリーンリーヴズの門をたたいた初めての後輩アイドルで、憧れのアイドルに対する「ファンとしての視点」と、そこからどんどんと成長していき「アイドルとしての視点」をどちらも持ち合わせたキャラクターたちです。“夢に憧れるだけのアイドルの卵のRGR”というまるでちょっと前のWUGのような存在である彼女たちと、”アイドルとしてどんどん躍動していくWUG”という対比を生み出したキャラクターですね。そして、もう一人がVドル「マキナX」。これは、完璧主義の白木が語っていた「人間である前にアイドル」を地でいく存在のヴァーチャルアイドルキャラ。ヴァーチャルなので、音を外すこともダンスで失敗することもトラブルもありません。 そんな、”完璧なアイドル”と”不完全な人間のアイドルたち”を対比させるためのキャラクターとして登場しました。最終回では、早坂が完璧なアイドルよりも不完全だけどファンに訴えかけるパフォーマンスを行った人間のアイドルたちこそが「ファンの求めた答えなんだ」という締め方で終わりましたが、自分はどちらにも違った魅力があるかなと思いましたがどうなんでしょうね。全体的にそうなのですが、物語がWUGにスポットを当てたり、サブキャラクターたちであるRGRやほかのアイドルたちにスポットを当てたりといろいろ風呂敷を広げすぎて逆にすべてが中途半端になってしまったのかなという感が否めない展開になってしまったのが”もったいない!!”ポイントでしたね…。もうちょっとRGRちゃんたちやVドルも掘り下げてくれたらもっと面白かったかなと思います。作中だと、「Vドルが大人気!リアルアイドルは下火……」という風な設定にはなっていましたが、WUGにはガンガンと全国放送のテレビの話が舞い込んで来たりと、そうしたことが全然伝わってこないのも”もったいない!!”ポイントでしたね…。■楽曲について画像引用元:©Green Leaves / Wake Up,Girls!3製作委員会新章ではアニメ初出のオリジナル楽曲がいくつかでてきました。やー楽曲はとにかくというか相変わらず素晴らしいと思います…。「WUG」の『7 Senses』、『Polaris』、「I-1club」の『君とプログレス』、『Jewelry Wonderland』そして「RGR」の『カケル×カケル』。まずは『Polaris』について!作中ではメンバー全員がそれぞれ作詞を行った楽曲なのですが実際にキャスト陣である声優さんたちが作詞をした楽曲になります。吉岡さんがインタビューで「WUGにしかできない作詞を目指しました」と語るように、今と未来、そして自分たちアイドルとファンを結ぶような、7人がファンのみんなの北極星になりたい、道標的存在でありたい、また「私たちにとってのファンのみんなもそんな存在なんだよという思いがつまった集大成的な楽曲です。それだけにアニメでちゃんと流してほしかったしあのライブシーンはきっちり描いてほしかったな…という思いました。「I-1club」の楽曲に関してはとにかく正統派なアイドル楽曲で、他のアイドルに比べてどこか大人びていて余裕さえ感じる楽曲だなという印象がありますね。作中ではセンターやキャプテンが変わったりと動きがあったI-1ですが、キャストさんたちはそれに合わせて歌い方を変えているという風にインタビューでいっていましたが、ぜひそんな聞き分けにも注目したいところでしょうか。そして「RGR」の『カケル×カケル』は、アイドルとして新人という意味の「かけだし」と走り出すという勢い込めた「駆け出し」そして3人の人数に合わせた「カケル ×(カケル)カケル」というタイトルと、まさにRGRちゃんたちにふさわしい楽曲で一番好きですね。とにかく楽曲だけはどれも間違いなく素晴らしいものが多かったと言えると思います!■総括画像引用元:©Green Leaves / Wake Up,Girls!3製作委員会作品としての総評はやはりクオリティーという面はどうしても気になりますが、その辺は円盤でどこまで改修されるかというところでしょうか。ストーリーははっきり言うとこれまでのWUGとは違うと断言できるでしょう。これまでのWUGは、まだまだバラバラの気持ちで、嫌々仕事をこなして、喧嘩して、そのたびに絆と成長が深まっていく…ローカルアイドルの現実とリアルさを泥臭く描いた作品でした。 新章では、そういった要素はほとんどなくアイドルアニメとしての側面が非常に強く、言ってしまえば他のアイドルアニメとの差別化が感じられない作品になってしまったなという印象でした。作中ではリアルのWUGからの要素をどんどんと取り入れており、どちらかというと今回のアニメを通じて、リアルで活躍しているWUGちゃんたちにファンを誘導する目的が強いんではないかなと感じました。作品自体は悪くはなかったと思いますが、稚拙な部分が目立った少し”もったいない”作品でしたね。ぜひアニメでWUGに興味をもったならイベントへ行ってみて下さい。アニメの続きはきっとそこでみれると思います。Wake Up,Girls! 新章 感想コラムのまとめ(あにぶ編集部/Uemt)
あにぶ