奈緒、演じることで人々の心は「救えると思う」自身が救われたエピソードも 『演じ屋 Re:act』インタビュー

奈緒、演じることで人々の心は「救えると思う」自身が救われたエピソードも 『演じ屋 Re:act』インタビュー

 WOWOWで24日から放送・配信開始となる連続ドラマW-30『演じ屋 Re:act』(毎週金曜 後11:00、全7話)。2021年に放送された『演じ屋』のシーズン2となる。主演を務める奈緒が演じるのは、依頼された役になりきる職業・演じ屋のアイカ。「演じることで人々の心は救えるのか!?」という本作の問いかけに、奈緒は「救えると思います。私自身、演じるほうでも観るほうでも救われた経験があるから」と答えた。



【画像】撮り下ろし、奈緒のそのほかの写真



 この作品は、『ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』のテレビドラマ版、映画版などを手がけた野口照夫が、2000年代初頭にインディーズ作品として制作した『演じ屋』を、約20年の時を経て、奈緒と磯村勇斗主演でドラマ化。



 シーズン1では、結婚式前日に痴漢のえん罪をかけられ、仕事も婚約者も失った柴崎トモキ(磯村)は、自殺しようとしたところで、演じ屋のアイカ(奈緒)と出会う。トモキが絶望の淵に立たされたところから再生していく姿と、アイカが復讐心にとらわれた生き方から成長を遂げていく姿を、飲酒運転や家庭内暴力といった社会問題とともに描いた。



――「演じることで人々の心は救えるのか!?」という本作の問いかけに、奈緒さんなりのアンサーはありますか?



【奈緒】救えると思います。私自身、演じるほうでも観るほうでも救われた経験があるからです。自分とかけ離れている役を演じることもありますが、その人物を理解しようと、自分の人生とすり合わせたり、自分の思いと重ね合わせたりしていく中で、いろいろ気づかされることがあります。些細なことでも自分の中で消化しきれてなかったものが、腑に落ちて心が軽くなる、そういう経験をたくさんしてきました。



 それに、演じる仕事に憧れたきっかけは、岩井俊二監督の『花とアリス』(2004年)でした。花(演:鈴木杏)やアリス(演:蒼井優)が本当にいるように思えて、仲間に出会ったような気持ちになって、すごく救われたんです。それからも、映画やドラマの中の人物が、自分の中に湧いてくる言葉にならない思いに名前を付けてくれたり、代わりに言ってくれたりすることに、何度も救われてきました。だから今、演じる仕事をしながら、100人の方が見てくださったとして、その中に1人でもかつての自分のように救われる人がいてくれたら、と思いながらいつも現場に立っているんです。



――2013年ドラマ『めんたいぴりり』で俳優デビュー。20歳で福岡から上京し、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』(18年)にヒロインの親友役に抜てきされてブレイク。NTV『あなたの番です』(19年)ではサイコパス役を怪演し話題を集めた。今年は1月期のKTV『春になったら』で木梨憲武とダブル主演を務め、映画『陰陽師0』(公開中)、『告白 コンフェッション』(5月31日公開)、『先生の白い嘘』(※主演/7月5日公開)、『傲慢と善良』(※主演/9月27日公開)といった出演映画の公開も目白押し。



 途切れることなく映画ドラマにと起用され続けている奈緒さんにとって、『演じ屋』は特別な作品のようですね。WOWOWのドラマシリーズの前に、19年公開の『演じ屋 reDESIGN』にも出演している。



【奈緒】野口監督と初めてお会いした時のことはすごく鮮明に覚えてます。当時の私はまだ右も左もわからない状態でしたが、とにかくお芝居をしたい、という心の声みたいなものをすくい上げてくださって、声をかけていただいたのが『演じ屋 reDESIGN』でした。インディペンデント映画らしい手作り感のある現場で学んだことは多かったです。



 映画のクランクアップの時、ここからそれぞれ羽ばたいて、成長した姿でいつかまた『演じ屋』をやろう、と約束して皆さんと別れたんです。だから、『演じ屋 reDESIGN』の衣装をずっと手放さずに持っていました。それが早くもかなったのが、前作の『演じ屋』でした。役が変わってしまったので、『演じ屋 reDESIGN』の衣装の出番はなかったのですが、一つの目標を達成できた気がして、すごく幸せでした。しかも、シーズン2まで実現して。



 演じ屋のメンバーはそれぞれ傷を負っていて、人の心の痛みがわかる人たちだから、すごく温かいんです。つくっている現場も『演じ屋 reDESIGN』の頃からずっと温かい。「演じ屋」シリーズが愛されるのはその温かさだと思いますし、そこは変わらずに、パワーアップしている自負もあります。



――依頼された役になりきる、という点では演じ屋の仕事も、俳優の仕事も共通するものがあると思うのですが、“依頼された役になりきる演じ屋を演じる”心境というのは?



【奈緒】“演じる”という点でも、人を救える力があるという点でも、演じ屋と俳優は近しいものがあると思いますが、俳優の仕事はあくまでもエンターテイメントなんですよね。用意していただいた衣装を着たり、ヘアメイクをしていただいたり、各部署のプロフェッショナルな皆さんの力をお借りして、安全な環境で演じます。



 それに対し、演じ屋は依頼人の人生に直接関わっていきますし、それゆえに危険な目にあうこともあるので、また違った"覚悟"を持ってやらなければいけない仕事なのではないか、と思うんです。しかもそれを全部自分たちでやっている。演じる上では、アイカとしては一世一代のお芝居をしているつもりでも、一歩引いて見た時にどう見えるのか、を意識しています。ほかの作品より客観性を持って演じる中で遊べる部分もあって、とても面白いです。



――『演じ屋 Re:act』では、アイカとトモキが常連客を相手に殺され役を演じていると、張り込み中の刑事が本当の事件と勘違いして駆け付ける。アイカたちが刑事ともめている間に、ホームレスが暴行を受ける事件が発生。捜査を妨害したことから、演じ屋一行はホームレス襲撃事件の捜査に協力することになる。
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