天体戦士サンレッド はギャグ化した正義の味方のヒーロー
正義の味方が世界の平和を守るために世界征服を企む悪の組織と戦うヒーローものであるはずが……。舞台は神奈川県川崎市という限定された地域で繰り広げられるのだが、おかしなことに、ヒーローのレッドことサンレッドはおよそヒーローとは思えない日常生活を送っている。その一辺をご紹介したい。Contents1 天体戦士サンレッド の主人公「レッド」2 世界征服をたくらむ最弱の「悪の組織」3 不良なヒーロー業と真面目な世界征服業4 仲が良いレッドとヴァンプ将軍。そして正義と悪。■天体戦士サンレッド の主人公「レッド」街中を仮面姿で煙草を吸って仕事もせずぶらぶら暮らしているレッドはヒモ同然。同棲している内田カヨコからもらった小遣いで、ヒマつぶしにパチンコで使い果たし、帰りには牛丼を買ってしまう自堕落な生活を送っている。あげくの果てに、帰り道に怪人に襲われるもヒーローらしからぬ戦い方で敵を倒すと、翌日には同棲中の彼女と小遣いについて口論をするという始末。それが天体戦士サンレッド の主人公であるレッドなのだ。■世界征服をたくらむ最弱の「悪の組織」画像引用元:© JVC Entertainment Company, LTD.天体戦士サンレッドで登場する悪の組織フロシャイムのヴァンプ将軍は、部下や怪人ドルゴンを引き連れて、街中をプラプラしている正義の味方サンレッドの隙を突いて対決を挑む。しかし、アクションシーンの見せどころもなく一瞬でコテンパンに反撃された上に、児童公園で正座させられる。レッドから怒鳴り散らされ、説教を食らって、挙句の果てにに缶コーヒーを買いにパシらされる始末。レッドを襲った時に駄目にしてしまった牛丼弁当を、自腹で弁償して礼儀正しく退散する。それが悪の組織フロシャイムなのである。■不良なヒーロー業と真面目な世界征服業天体戦士サンレッド で描かれている正義の味方と悪の組織。この「正義」と「悪」の表現が非常に面白いアニメ作品だ。この正義を悪の角度を変えて見ると、毎日暇を持て余すレッドは彼女に小遣いをたかって溝の口商店街へ繰り出しては、パチンコで暇つぶしをしている。所持金が尽きるとヴァンプ将軍達に八つ当たりで暴力を振るい、缶コーヒーを買いに行かせては威張り散らして俺にかまうなと説教をする。しかし、実際にはヒモ体質のプータローの身、どのみち暇を持て余していることもあり、悪の組織フロシャイムの毎回の挑戦に付き合ってしまう。つまりは、ケンカしか取り柄がない傍若無人な青年なのである。その一方で、悪の組織フロシャイムのヴァンプ将軍と部下たちは正義のヒーロー「レッド」とは異なる。毎回、多くの怪人を連れてはサンレッドに戦いを挑むものの、それ以外はやけに所帯じみて妙に礼儀正しい。怪人もそれぞれ自立してアルバイトをしていたり、カヨコ宅の引越しの手伝いをしたりとやたらまじめで他者に優しい。悪の組織フロシャイムのアジトである一軒屋で共同生活している怪人や部下の戦闘員同士も仲が良く、小さないざこざを皆で知恵を出し合って乗り越えていこうという、相手を気遣う気持ちに長けている。特にヴァンプ将軍は家事と料理が得意で、しかも世話焼きの性格。時には自分の敵であるはずのレッドとカヨコのケンカの仲裁をする程にまで世話好きなのである。仲裁する姿は、まるで二人の姑かと思ってしまうほど甲斐甲斐しい。時折垣間見せるレッドとヴァンプ将軍たちの友情に、心温まるファンは多い。■仲が良いレッドとヴァンプ将軍。そして正義と悪。画像引用元:© JVC Entertainment Company, LTD.およそ構図は対立する正義の味方と悪の組織なのだが、それぞれのたち振る舞いや言動を見ていると、どちらが善でどちらが悪かわからなくなるように逆転してしまうところが、この天体戦士サンレッドの痛快で面白いところ。すでに放送終了から随分と時間が経過してしまっているが、このアニメ中で表現されている正義と悪の掛け合い漫才的な要素は現在でもまったく色あせていない。正義のヒーローも今のご時勢となってはただの余計者で、悪の組織も世界征服のために、なんとか正義のヒーローを倒そうとあの手この手で懐柔していくうちに、正義と悪の間で友情を育む牧歌的な馴れ合いの正義と悪が集まったひとつのグループ的表現が面白い。勧善懲悪の正と悪ではなく、コミカルに正義と悪の図式を皮肉ってしまったところが、天体戦士サンレッド をより興味深いギャグアニメに仕上げている。文章:kyouei-drachan熱血アニメ列伝その9 制作側のキャラへの愛に癒しを感じる?『 黄金勇者ゴルドラン 』(あにぶ編集部/あにぶ編集部)
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