星野源“未開の闇”に舵を切り生まれた新たなサウンド「作っていて楽しかった」 『LIGHTHOUSE』インタビュー(前編)
音楽家で俳優の星野源とお笑いコンビ・オードリー・若林正恭の2人が、“悩み”について語り合うトークバラエティ「LIGHTHOUSE」(Netflixで世界独占配信中)。2022年10月から23年5月まで、およそ1ヶ月に1度のペースで顔を合わせた“軌跡”が全6回にわたって紡がれている。トーク内容の赤裸々さもさることながら、各回を踏まえて星野が書き下ろした5つのエンディング曲「灯台」「解答者」「仲間はずれ」「Orange (feat. MC. waka)」「しかたなく踊る」、そしてメインテーマ曲「Mad Hope (feat. Louis Cole, Sam Gendel)」も大きな反響を呼んでいる。8日には新作EP「LIGHTHOUSE」として6曲がリリースされた。 今回の番組が、星野の創作に与えた影響は一体何なのか。今月2日のニッポン放送『オードリーのオールナイトニッポン(ANN)』(毎週土曜 深1:00)へのゲスト出演直前の星野に話を聞いた。【動画】若林が先輩に言われて今でも大事にしている言葉 『LIGHTHOUSE』一部公開■#1ED曲「灯台」で“宣言”した番組の方向性「悩み解決じゃない」 同番組は、数多くの人気バラエティー番組を制作し、星野と若林とも親交のある佐久間宣行氏が総合演出を担当。佐久間氏が「悩める人々の明かりを照らす灯台でありながら、自分たちの足元は暗そう」という意味を込めて「LIGHTHOUSE」というユニット名を考案した。番組では、2人が1ヶ月の間に考えた悩みや日常の出来事を短く記し「1行日記」をもとに、異なるロケーションでトークが展開されていく。#1 のタイトルは「暗黒時代」。ともに下積み時代の苦しい時間を過ごしてきた場所である東京・杉並区の阿佐ヶ谷、そして高円寺の喫茶店を舞台に、トークは熱を帯び、大いに盛り上がった。星野は、この回のエンディングで「灯台」という楽曲を披露している。 「各回で話したことをテーマに曲を作るので、曲も多いし元々は全部弾き語りにしようかと思っていたんですが、作り始めてすぐに飽きてしまい…。なので、最終的には弾き語りとバンドスタイル、打ち込みと曲ごとに変えて、各曲の印象がすべて異なるようにしました。一曲目の『灯台』は、自分が20代前半に阿佐ヶ谷に木造アパートに住んでいた頃、お金も仕事もなくて地獄だった頃がテーマだったので、その時の自分の感覚や実際の想いを中心に、実は同じ時期に阿佐ヶ谷で漫才の練習をしていた若林さんのその頃の思いと、トーク収録の時にVTRで観た街頭インタビューで寄せられていた若者たちの悩みを混ぜて作っていきました」 同曲の最後の一節「灯台 誰も救おうと思うな ただ光ってろ」には、この番組に向き合う上での自身の“宣言”が含まれている。「僕らはLIGHTHOUSEという“灯台”って意味のユニット名を付けられたんですけど、こういうコンセプトの番組って『悩み解決』がゴールになりがちだけど、僕はそう思っていなくて。基本的には解決しない悩みを二人で話す、というところに面白さがあると思ったので、歌の中で僕のこの番組への姿勢を一発で表したくて、この歌詞を書きました」。■若林の心を射抜いた、星野の一言 そこから生まれた#3 ED曲「仲間はずれ」 トークだけに留まらず、それを踏まえた“エンディング曲”も放送されることで「今までにないような番組」に仕上がった。昨年12月25日に収録された#3「Christmasプレゼント」では、若林の1行日記「今の若林が何をすればいいか教えてくれ」をきっかけに、星野が「僕がちょっと思ったことは、若林さん、一言で言うと飽きたんじゃないかな」と切り出し、若林が「星野さん、言いますねー。いやーうれしいなぁ。飽きたっていう言葉を。オレ今涙出そうなんですけど、誰にも言えなかったんですよ」との胸の内を吐露し、番組の“第1章”が完結するような内容だった。これを受けて、星野が作った楽曲が「仲間はずれ」だ。 これまでの星野の楽曲とは一味違った激しめのサウンド、「常識は老いていく」「未開の闇に舵を切る」といった歌詞に、誰も行ったことがない場所に「灯」をともすという表現者としての覚悟がにじみ出ている。「自分が昔から思っていること、繰り返してやっていること、志しているものを歌詞にしました。それがあの回の答えだと思ったので。同じ場所に留まるのではなく、誰もいない不安要素満載の未開の場所に行くこと。仲間はずれになって感じる疎外感が個であることを強くするということ、そんな内容ですね」。その上で、こう続けた。 「サウンドはドラムから作っていったんですが、作り始めて5分くらいでイントロの激しいパターンが生まれて、すごく作っていて楽しかったことを覚えています。色んな人に『今までの源さんの音楽と印象が違う』って言われて嬉しかったですね。今までと違う音像にしようみたいな思いはなくて、自然にあの感じになったので。歌も歪ませた方が合うなと思って、普段はやらない形を採用しました」■「若林さんは完全にラッパーだと思う」コラボ楽曲「Orange」が示した才能 第2章の幕開けとなった#4は、少し時間が空いて2023年2月、観客を入れた「サプライズライブ」。3年ぶりの有観客ライブを行った星野が自身の思いを語る中、若林に“#1の収録後に想いが溢れて録音したラップがある”という事実が判明する。すぐさま「じゃあ俺それにトラック作りますよ」と返す星野。こうしたトークを経て生まれたのが、星野が作曲と歌を新たに書き下ろし、若林がラップを担当した「Orange」だ。若林のラップ詞を受け取った際、星野はどういった思いを抱いたのだろうか。 「最初から完成されてましたね。ただ、元々は #1 でテーマだった20代の頃を思い出すようなリリックだったんですが、実際に流れるのは #4 のラストなので、最終的には過去と現在を混ぜたようなリリックに変わっていました」 自身のラジオ番組『星野源ANN』に、若林がゲスト出演を果たした際に実現した『Pop Virus』feat.MC.waka、『ANN55周年』コラボジングルという2回のコラボを経て、今回の「Orange」へといたった。「若林さんのアーティストとしての魅力はどういったところにありますか?」と向けてみると、星野は「多分、本人はちょっと恥ずかしがるとは思うんですけど…」と前置きした上で、次のように話していった。 「やっぱり完全にラッパーだと思うんですよ。ラップをしているときは。自分にしかないリリックの作り方を会得している感じがするんですよね。笑いの要素がありながらも、ちゃんと『詩』の部分がある。若林さんにしかできないバランスだと思います」 あす9日配信の後編では、星野が創作活動を行なっていく上で大切にしている「くだらない」、楽曲作り、プロデューサーとしての“アイデアの源”に迫る。●Netflixシリーズ「LIGHTHOUSE」Netflixで全6話 独占配信中●EP『LIGHTHOUSE』5つのエンディング曲「灯台」「解答者」「仲間はずれ」「Orange (feat. MC. waka)」「しかたなく踊る」、メインテーマ曲「Mad Hope」ショートVer.を収録したものが、主要ダウンロードサービスで配信リリース中
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